7月16日(水)に行なわれた天皇杯3回戦は、J1で過去3年連続トップ3以内という確かな実力を持つサンフレッチェ広島との戦い。前半は浅倉廉の鮮やかなゴールで先制し、激しい打ち合いを演じて2-2で折り返したが、後半は続けざまに3点を奪われて2-5。
広島はE-1選手権に最多6人の日本代表選手を送り出しており、そのうちこの試合で起用されたのは、後半から出場して一気に流れを変えた田中聡と中村草太の2人だけ。その意味でも地力の差を見せつけられた完敗だった。
だが、藤枝にはその選択をする意志や迷いは一切なく、あくまで自分たちらしい攻撃サッカーで真っ向勝負に挑んだ。その結果としての2-5で夢をつなぐことはできなかったが、自分たちの全てをぶつけたからこそ得られるものも多かった。
「どんな相手でも、我々がしっかりポジショニングをとる、止める・渡すを確実にやるということができれば、怖くはない、プレッシャーでビルドアップをミスして失点というのはないということを感じた試合だった」と須藤大輔監督は、前半のビルドアップについて大きな手応えを感じていた。
広島のミヒャエル スキッベ監督も「とくに前半に関しては、自分たちは相手のポジションチェンジとかボールを動かすところに非常に苦しめられました。自分たちが思い切ったプレスに行けないほど、誰が誰をつかむのか受身にならなければいけない状況、自分たちがボールを奪いに行けない状況を作られましたし、そこは非常に上手いチームだと思います」と、藤枝の特徴が広島を大いに苦しめていたことを認めた。
それは、J1でも通用する攻撃サッカーを目指している藤枝にとって大きな自信となった。
ただ後半は、広島が前からの守備の圧力を増してきた中で、自分たちの連戦の疲労も出て前半のようなビルドアップができず、完全に主導権を奪われてしまった。そこは須藤監督も選手たちも課題として痛感しており、今後にフィードバックしていくはずだ。
先制点を決めた浅倉は、「藤枝に来てJ1のチームとやるのが初めてで、すごく楽しみにしてたので、点を取れたことのは一つ大きな自信になると思います。相手の球際の強度や寄せに来るスピードが全然違った中で、しっかりボールを止められれば全然やれる、前を向けるという感覚もありました。その中でトラップとか細かいところにもっとこだわらなければいけないことも感じたので、そこはプラスに捉えてまたやっていきたいです」と、自分の持ち味がJ1でも通用することを確認できた。
武器とするドリブルで広島を大いに揺さぶった左ウイングバックのシマブク カズヨシは、「自分の特徴がかなり通じたかなという印象はありました。ただ向こうは、一つ一つのパスのクオリティの高さ、弱いパスと強いパスの使い分けや、そこでの駆け引きがすごくうまいなというのも感じました。あとは自分たちの一つのミスであそこまで持ってかれるし、ゴールにも繋がってしまうクオリティの高さ、やっぱりJ1すげえなと思いましたけど、良い刺激になりました」と振り返る。
守備に関しては、シマブクが言うように一瞬の隙を突かれてあっさりと失点してしまったことが大きな反省点となったが、そこも今後への良い教訓となっている。
センターバックの楠本卓海は、「相手のクオリティが高いことはわかってましたが、それでも上回られてしまうことがありました。とくに2失点目は、あそこしかないとわかっていたうえで(前田直輝に)股を抜かれてしまったので……。いつも通りできた部分もありましたが、今日の反省を生かしてリーグ戦で同じことが起こらないようにしていきたいです」と自戒を込めて語る。
須藤監督も「何でもないところから失点をしてしまうというのは、リーグの前半戦でも多々ありました。そこは、何でもない状況でも(ピンチが)こう来るかもしれないという前提でプレーしなければいけない。我々の武器はこうだから、相手はここを消しに来るよ、我々のウィークはここだからこう来るよという相手目線での備え方というのが必要になると思います。そこを今日の試合からしっかりと分析・精査していきたいと思っています」と今後のテーマを口にした。
非常に悔しい敗戦ではあったが、真っ向勝負を挑んだことに対する後悔は微塵もない。それよりも貴重な機会から得た収穫や課題をバネに成長を繰り返していくのが、まさに藤枝らしいところだ。今シーズンが終わった後に「広島戦から学んだことが大きかった」と言えるように細部まで緻密に改善していくことが、4日間のオフ明けからの大きなチャレンジとなる。
Reported by 前島芳雄
広島はE-1選手権に最多6人の日本代表選手を送り出しており、そのうちこの試合で起用されたのは、後半から出場して一気に流れを変えた田中聡と中村草太の2人だけ。その意味でも地力の差を見せつけられた完敗だった。
広島のプレスを翻弄させたビルドアップ
もちろん藤枝としては、広島を破って初めてベスト16に進むことを本気で目指していた。その場合、下のカテゴリーのチームは、守りから入って我慢強い戦いを続けながらカウンターやセットプレーで何とか点を取って勝つというプランを選択することが多く、それが下剋上の成功パターンとなっている。だが、藤枝にはその選択をする意志や迷いは一切なく、あくまで自分たちらしい攻撃サッカーで真っ向勝負に挑んだ。その結果としての2-5で夢をつなぐことはできなかったが、自分たちの全てをぶつけたからこそ得られるものも多かった。
「どんな相手でも、我々がしっかりポジショニングをとる、止める・渡すを確実にやるということができれば、怖くはない、プレッシャーでビルドアップをミスして失点というのはないということを感じた試合だった」と須藤大輔監督は、前半のビルドアップについて大きな手応えを感じていた。
広島のミヒャエル スキッベ監督も「とくに前半に関しては、自分たちは相手のポジションチェンジとかボールを動かすところに非常に苦しめられました。自分たちが思い切ったプレスに行けないほど、誰が誰をつかむのか受身にならなければいけない状況、自分たちがボールを奪いに行けない状況を作られましたし、そこは非常に上手いチームだと思います」と、藤枝の特徴が広島を大いに苦しめていたことを認めた。
それは、J1でも通用する攻撃サッカーを目指している藤枝にとって大きな自信となった。
ただ後半は、広島が前からの守備の圧力を増してきた中で、自分たちの連戦の疲労も出て前半のようなビルドアップができず、完全に主導権を奪われてしまった。そこは須藤監督も選手たちも課題として痛感しており、今後にフィードバックしていくはずだ。
攻撃でも守備でも、相手の想定をより高い基準に
選手個々の手応えという面でも、得るものは確実にあった。先制点を決めた浅倉は、「藤枝に来てJ1のチームとやるのが初めてで、すごく楽しみにしてたので、点を取れたことのは一つ大きな自信になると思います。相手の球際の強度や寄せに来るスピードが全然違った中で、しっかりボールを止められれば全然やれる、前を向けるという感覚もありました。その中でトラップとか細かいところにもっとこだわらなければいけないことも感じたので、そこはプラスに捉えてまたやっていきたいです」と、自分の持ち味がJ1でも通用することを確認できた。
武器とするドリブルで広島を大いに揺さぶった左ウイングバックのシマブク カズヨシは、「自分の特徴がかなり通じたかなという印象はありました。ただ向こうは、一つ一つのパスのクオリティの高さ、弱いパスと強いパスの使い分けや、そこでの駆け引きがすごくうまいなというのも感じました。あとは自分たちの一つのミスであそこまで持ってかれるし、ゴールにも繋がってしまうクオリティの高さ、やっぱりJ1すげえなと思いましたけど、良い刺激になりました」と振り返る。
守備に関しては、シマブクが言うように一瞬の隙を突かれてあっさりと失点してしまったことが大きな反省点となったが、そこも今後への良い教訓となっている。
センターバックの楠本卓海は、「相手のクオリティが高いことはわかってましたが、それでも上回られてしまうことがありました。とくに2失点目は、あそこしかないとわかっていたうえで(前田直輝に)股を抜かれてしまったので……。いつも通りできた部分もありましたが、今日の反省を生かしてリーグ戦で同じことが起こらないようにしていきたいです」と自戒を込めて語る。
須藤監督も「何でもないところから失点をしてしまうというのは、リーグの前半戦でも多々ありました。そこは、何でもない状況でも(ピンチが)こう来るかもしれないという前提でプレーしなければいけない。我々の武器はこうだから、相手はここを消しに来るよ、我々のウィークはここだからこう来るよという相手目線での備え方というのが必要になると思います。そこを今日の試合からしっかりと分析・精査していきたいと思っています」と今後のテーマを口にした。
非常に悔しい敗戦ではあったが、真っ向勝負を挑んだことに対する後悔は微塵もない。それよりも貴重な機会から得た収穫や課題をバネに成長を繰り返していくのが、まさに藤枝らしいところだ。今シーズンが終わった後に「広島戦から学んだことが大きかった」と言えるように細部まで緻密に改善していくことが、4日間のオフ明けからの大きなチャレンジとなる。
Reported by 前島芳雄