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【取材ノート:清水】苦境の8連戦を勝ち越しで乗り切ったエスパルス。乾貴士、吉田豊、北爪健吾、高橋祐治―チームを支えた30代カルテットの影響力とは

2025年4月25日(金)
J2では経験することのなかった26日間で8試合という過酷な連戦(3/26~4/20)を終えた清水エスパルス。DF陣に負傷者が続出するという苦しい台所事情もあった中で、リーグ戦では3勝1分2敗、ルヴァンカップでは1勝1敗とトータルで勝ち越して乗り切ったことは、J1復帰1年目のチームにとって非常に大きかった。

中でも最後の2試合は、ターンオーバーを行なった中で横浜FMに0-2から逆転勝ち、対戦時点で2位の福岡にホームで3-1の完勝と大きな自信となる連勝をつかみ、チームの底力を証明した。



「本当に悔しい思いをした試合もありましたが、そこから修正した姿、成長した姿を見せて最後に連勝できて、ターンオーバー気味に多くの選手が出た中で、緊張感のある公式戦で彼らがいろんなものを学んで、本当に成長していることも実感できました。8連戦の収穫はそれが一番大きかったですね」と秋葉忠宏監督も振り返る。

肉体的にも過酷でストレスもかかる状況が選手たちの成長を促し、短期間でも多くのものが得られた8連戦だった。

「おじさんズ」の奮闘にも支えられて

そんな中でもとくに光ったのが、30代の選手たちの奮闘ぶりだ。乾貴士36歳、吉田豊35歳、北爪健吾32歳、高橋祐治32歳。北爪の出場停止(横浜FM戦)を除いて4人全員がリーグ戦6試合全てに出場し、チームを支え続けた。横浜FM戦で後半から出場して大逆転に導いた乾の働きは圧巻だったし、守備陣にケガ人が続出した中でのDF3人の仕事量や質、安定感も本当にチームを助けていた。

「さすがの一言でしたね。やっぱり年齢は関係ないんだということを僕自身あらためて彼らから学ばせてもらいました。ピッチ外での休養とか睡眠のとり方、いろんな準備の面も含めて経験値があるし、J1の強度にも慣れている。そういう経験が少ない選手が離脱したというのもありましたし、耐久性というのも経験によって培われるんだなと。そういう存在は本当に大事な財産だと思ってますし、最高のお手本がいるわけですから、とくに若い選手たちには多くのことを学んでほしいなと思っています」と秋葉監督も彼らを称える。

練習でもケガをしないギリギリのところまで自分を追い込んでいくという絶妙なさじ加減で取り組み続けていることが、大事なところでの踏ん張りやケガの少なさにもつながっているのだろう。

サポーターや恩人の想いも受けて

もちろん彼ら自身も、良い形で8連戦を乗り切れたことに大きな手応えを感じている。

「おじさんズが頑張ってましたね(笑)。最年長の(乾)貴士くんと一つ下の(吉田)豊さんが、あんな最高のパフォーマンスをしてるので、それより下の僕らは負けてられないなと思いますし、あの2人の背中を見てもっと頑張らないといけないなと思ってます。(北爪)健吾くんも若手以上に走ってますしね」(高橋祐治)

また、過酷な日程を良い形で乗り切れたのは、自分たちの力だけではないことも強調した。

「8連戦の中でなかなか勝てない時期もありましたが、アウェイの横浜FC戦で本当に悔しい負け方をしたときも、ルヴァンのジュビロ戦で負けたときも、サポーターがブーイングじゃなくて頑張れよと温かい応援をしてくれたからこそ、そこからまた立ち上がって前向いて頑張れました。最後の福岡戦は、納谷(聖司)さんが亡くなってみんな本当に気持ちが入ってましたし、納谷さんの魂が乗り移ったような試合を見せられて良かったなと思います」(高橋)

静岡のサッカーとエスパルスを長く支えてきた故人の想いも背負った福岡戦では、本当にチームとスタジアムが一体となった「これぞエスパルス」と言える最高の劇場空間を満喫することができた。

「豊すごい」に象徴されるチームの誇り

高橋からも名前が挙がった吉田豊の貢献度やタフさ、頑強さにも目を見張るものがあった。その吉田自身は、福岡との試合後に8連戦をこう振り返った。

「ケガ人がいる中でもみんなが一つになって乗り越えて、ある程度の結果も出すことができて、本当にチーム一丸となって戦えたと思います。(個人としても)オレもまだまだできるのかなって自信にもなりましたし、奮い立たせてくれるものがありました。練習でも試合でもまだまだやんなきゃいけないなと自分であらためて感じられたのは良かったし、そういう姿を見せ続けて『やっぱすげえな』って思われる選手になりたいですね」(吉田)

ミックスゾーンで我々が吉田に話を聞いていたとき、秋葉監督が「豊すごい!」と誇らしげに連呼しながら後ろを通り過ぎていったが、本人はより高いところを目指している。

また88分に山原怜音と交代した際に、満面の笑みを浮かべながらライバルでもある山原のケガからの復帰を祝福した吉田の姿は本当に胸熱だった。

28歳のキャプテン北川航也も「本当頼りになる選手たちばかりで、そういう人たちと毎日一緒にクラブハウスにいて、一緒にトレーニングして、僕自身この年齢になってもいろんなものを学べるというのは、本当に良い環境に恵まれているなと思ってます」と語る。

今季が始動して4カ月弱という期間の中でも、チームとしてより成長し、より層が厚くなり、よりタフになっているという自信を得ることができた。ゴールデンウィークも連戦になるが、選手たちの「やってやろうぜ」という気持ちも、より自信に裏打ちされたものになっている。

Reported by 前島芳雄