
2025シーズンも10節を過ぎた。現在、第11節を終え東京ヴェルディは2勝5分4敗、勝点11で16位につけている。16年ぶりにJ1復帰を果たし、6位に終わった昨季の同時点成績は2勝7分2敗、勝点13の14位。勝点数や順位的には決して危惧するものではないと言える。
だが、一方で直面しているのが深刻な得点力不足である。11試合の総得点7はリーグワーストタイの数字。11試合中7試合が無得点という現状は決して目を背けることはできない。
ここ3試合も連続無得点が続いてしまっている。前節・川崎フロンターレ戦も、主導権を握る時間は少なくなかったものの、決定機を作り出せずスコアレスドローに終わった。試合後、城福浩監督は「中盤のところ、ミドルサードのところまでがサッカーではなくて、ファイナルサードのところが本当のサッカー。そこはもっと精度を上げていかなければいけない」と話し、ゴール前こそが極めるべきスキルであり、現チームが抱えている重要な課題であることを指摘した。
その得点力不足の解決策として、齋藤功佑は2つのポイントを挙げる。
「まず1つは、最後(ゴール前)のところのクオリティというのは確率論じゃないということ。立ち位置がどうとかだけの部分ではないと思うので、時には強引にプレーする必要もあると思います。
あとは、シンプルに技術。相手の嫌なところに立って、その上でパスを出す足、(受け手に)つける足、パススピード、ボールが浮いてないかなど、パスの質次第でシュートを打てる局面になるのか、相手に戻られてしまって打てなくなるのかが変わってくるので。その2つが大事かなと思います」
『ニア・ゾーンには必ず詰める』など、クロスへの入り方などはチームとして徹底した共通認識をもってやってきている。ただ、「そこから先のところはチームでやるのは難しい部分。“質”の部分に関しては、やはり最後は“個”の問題になってくるのかなと。そして、その質を上げるのは、城福さんが常に言っている『日頃の練習』しかない。全員がひとりひとり、もう一段階高いレベルに意識を上げて個のスキルアップに努めるしかないと思いますし、それを習慣づけることが何よりも大切。毎日毎日、パス1本1本に対して『何気ないパスがちょっと浮いたり、ちょっとズレたりするだけでシュートまでいけなくなる』という高い意識をもって練習からやれるかどうか。その日頃の習慣こそが、ゴール前や局面でアドリブとして出てくると思うので、僕自身も意識を高くもってやっていきたいなと思います」と、齋藤は個人個人のレベルアップの必要性を強調した。
一方で、守備面では手応えを感じている。
「守備に関しては、自分たちが大事にしている部分なので、そこの強度が上がっていることは間違いないですし、確実に良くなっていると思います。でも、だからこそ、勝てなかったり点が取れないと、守備の強度を上げることが良くないみたいな雰囲気になってしまうので、結果が絶対に必要」と背番号『8』。
城福ヴェルディは、ポジションにかかわらず90分間絶対にサボらないハードな守備が求められる。それは得点が最大ミッションのFWしかり。もっと言えば、FWには前線からの二度追い、三度追いという並々ならぬハードワークが課せられている。そのチームとしての最優先タスクをこなした上で、攻撃面でもゴールという大仕事を託されているのである。
「難しいことだと思いますし、FWの選手は本当にタフにやってくれているなと思います。ただ、ここで(その戦い方を)やめてしまうことが一番もったいなくて。このハードワークを続けていくことによって確実にベースが上がってくる。そして、この強度でやることが、少しずつ楽になってくるというか、そこからもう1つ、最終局面でパワーが使えるようにもなってくるという考え方もできるんですよね。
だからといって、チームとしてFWの選手に頼るばかりではダメ。前線の選手が前から追ってくれている分、休む時間というか、意図的にボールを持つ時間を少し作ったりして、ボランチのところでコントロールしたいなとは思っていますし、先ほども言った通り、FWの選手には足元に気を遣わせずに、ターンやシュートを打つことに意識を専念させてあげられるような質の高いパスを供給したい」。FWがゴール前で才能を100%発揮するための全力サポートを誓う。
得点力不足と守備の成長。齋藤は一喜一憂することなく、淡々とチームの現状すべてを落ち着いて、真摯に受け入れている。
「いい部分も悪い部分も、しっかりと自分たちと向き合うことができていると思います。その積み重ねが、今の“負けていない”状況が続いているところにも繋がっていると思う。チームとして大事にしている、“ハードワーク”や“戦う姿勢”の部分をこの先もひたすら怠らずに、攻撃の部分の課題から逃げずに着手して、1つ1つ積み上げていければ、着実に得点の形も増えると思いますし、勝利も増えてくると思っています」
積み上げてきていることへの自信を深めるには、勝利こそが何よりの証明書となる。勝利のために、仲間のために、応援してくれるすべてのファン・サポーターのために。“ヴェルディの心臓”は今節も愚直に熱く走り続けることを誓う。
Reported by 上岡真里江