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【取材ノート:千葉】攻撃面が開花中の椿直起が守備のプレーで見せた『プライド』

2025年4月24日(木)
明治安田J2リーグの第7節でジュビロ磐田を相手に0-1と、今シーズンのリーグ戦で初の敗戦となったジェフユナイテッド千葉。だが、第8節は2-1、第9節は3-2と競り勝ち、連勝で第10節の大分トリニータ戦を迎えた。

大分は第9節終了時点で2勝しかあげていなかったが、敗戦はわずか1で千葉、FC今治と同じくJ2リーグ最少と、簡単には負けないチームだ。実際のところ、千葉も前半から押し気味に試合を進め、決定機を複数作ったものの、なかなか得点できなかった。

「大分が守備の堅いチームだというのは試合前から分かっていたし、『1点』が勝敗を分けるゲームだと思っていました。だから、なかなか点が取れないことに対してストレスは感じなかったですし、後ろの(守備の)選手がずっと失点をゼロで抑えてくれていたので、必ず来るチャンスというのをモノにしようという話をしていたんです。大分の守備は堅かったですけど、狙いどおりの試合展開はできたのかなと思います」

大分戦では左サイドハーフの椿の後ろに位置する左サイドバックに、開幕戦以来のスタメンとなる前貴之が入った。椿がサイドで得意なドリブルの仕掛けを見せる一方で、前はフリーでパスを受けると前半から果敢にミドルシュートを打った。開幕戦でも前と前後のコンビを組んだ椿に、改めて前との連係で意識していたことや狙っていたことを聞いた。

「コミュニケーションはいつもよりも多くとりました。もともと大分は(最終ラインを)5バックにしてきて、サイドの背後のスペースを消してきたので、僕の足下にポールが入る回数は少なかったですけど、いいコミュニケーションはとれたと思います。僕がやりやすいようにやらせてくれたので。(試合では)日高(大)選手と一緒にやることが多かったですけど、ただ、前選手は(日高選手とは)また違った良さがあると思うし、今日の試合も勝ったように、どちらの選手が出ても遜色のないパフォーマンスを出してくれます。だから、僕はどちらの選手もやりやすいなと思います」

今シーズン、椿は小林慶行監督が「一皮剥けた」と評するように、昨シーズン以上に攻撃で躍動。2得点をマークしただけでなく、第5節で1アシスト、第9節で2アシストなど、アシストも重ねている。それもあってか、対戦相手は主に右サイドハーフでプレーする田中和樹と同様に、椿に対するマークをより厳しくしてきている。そのぶん、千葉の左サイドバックに対するマークが甘くなっているように見え、大分戦での前はミドルシュートを打った本数が公式記録で3本となっていた。

「それは僕もメチャメチャ感じていて、僕がドリブルをする姿勢を見せると、僕のところに相手の選手が2人、3人と寄ってくるので、後ろのサイドバックのところはメチャメチャ空いているなという印象があります。そこから1点、2点と入ってくれれば、僕のところのマークも散ってくれるのかなと思うので、対策されている中でも新しい得点のバリエーションができればいいかなと思います。ただ、今日も数少ない中でも自分の良さを出せるような場面があったので、そこはもっと自分に矢印を向けて、もっと得点に絡めるプレーができれば良かったかなと思います」

千葉は大分が攻めこむ場面では球際で体を張った守備で対応。54分にエドゥアルドが豪快なミドルシュートで決めた虎の子の1点を守りきり、今シーズンのJ2リーグでは第2節以来で3試合目となる無失点勝利となった。


昨シーズンは、たとえば攻守が切り替わった時の自陣への戻りが遅れたり、相手選手へのマークがおろそかになったりするなど、守備での課題が見られた椿。だが、今シーズンは効果的なプレスバックが多く見られ、大分戦では65分、ドリブルで仕掛けて出したパスが大分の吉田真那斗に引っかかってボールロストすると、こぼれ球を拾った大分の天笠泰輝がボールを運ぶのにしつこくついて行ってボールを奪い返した。そういったプレーで見せた粘り強さやボールへの執着心は以前よりも強まったように感じられる。

「何ていうんだろう。あれはシンプルに『プライド』というか、自分がボールを奪われたから自分が奪い返すという、当たり前の心だったというか、無心でもう自分が取り返さないといけないなという気持ちでした。そういった意識もたぶん前よりも出てきていると思います。それにプラス、守備の強度が今年はついてきていると思うので、そこは自分の成長として感じています」

とはいえ、やはり攻撃的な選手としては毎試合、得点やアシストという数字の結果は欲しいはずだ。

「今日も一応、アシストはつきました(笑)。エドゥー(エドゥアルド)のゴラッソでしたけど、僕のアシストがついたので、今日はエドゥーに感謝したいです。自分の突破からのアシストやゴールはもっと増やしていきたいです」

チームは首位ではあるものの、「今日の試合もそうですけど、どっちが勝ってもおかしくないギリギリの試合で勝って、圧倒しているわけではないので危機感しかない」と話す椿。スタメン争いも激しく、いい意味での危機感を抱きながら、攻守のレベルアップに励む。

Reported by 赤沼圭子