
スコアレスの激戦。明治安田J2リーグ第10節、FC今治対RB大宮アルディージャの一戦は、打ちも打ったり守るも守ったりの激しくタフなゲームとなった。
その中で、普段にも増してテンション高くピッチを駆けたのが、3バックの左センターバックを務めた下口稚葉だった。
立ち上がりは今治の攻勢を受け止めるのがタスク。長澤徹監督も「おそらくこのリーグではナンバーワンの2トップ」と認めるマルクス ヴィニシウスとウェズレイ タンキにいかに仕事をさせないかがポイントだった。
「ヴィニシウスは割と僕の方に流れるシーンが多かったので、彼をどれだけ消すかということに集中してプレーできたんじゃないかなと思います。彼にどういうボールが入るか、というのを今週自分たちでしっかり取り組んでやってきたので、そこはうまく全体で守れました」
攻撃でもアグレッシブさを見せる。21分、左サイドでボールを受け、中央の谷内田哲平に預けると、そのまま自らが一気に右サイドへ移動。その流れからペナルティエリアに進入し、谷内田の落としを受けてシュートを狙う。72分には、市原吏音のクロスにゴール前で飛び込んでいった。「あそこで決めきらないと意味がない」と反省しつつ、「リスクを取るタイミングが感覚的に合ってきていると思うし、そこをみんなで繋がっていくような、感じ方も合っていると思います」とグループとしての練度の向上を実感している様子だった。
何よりこの日の相手は古巣である。意識せずともテンションは勝手に上がる。後半右ウイングバックに回ってからは、相対する近藤高虎とあわやつかみ合いともなりそうな一触即発の雰囲気を出し続け、対ヴィニシウスでは「彼をエキサイトさせる、イライラさせるというのは、自分の中でテーマを持ってやっていた」と、かつてチームメートとして一緒に練習していたからこその対策を立てて臨んでいた。
「サッカー選手人生が終わりかけの、本当に瀬戸際のところで(今治へ)来ましたし、そこで2年間なんとかへばりついて、この土地で自分自身も家族も育ててもらったと思っているんで、すごく熱くなる思いがありました」

気持ちの入ったハードな90分の末の1ポイントは、見る者すべてに納得を与えるものだった。だが、もちろん当事者は違った。
「でも、僕らが目指してるのは優勝だし、昇格なんで、そこはぶれてはダメ。この1ポイントを次に繋げる、もうそれに尽きるかなと思います」
ひたむきに、上を見続け、次に向かう。
Reported by 土地将靖