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【取材ノート:福岡】全てがハイクオリティ。福岡の好調の陰に前嶋洋太あり

2025年4月15日(火)


今シーズン2度目のリーグ戦3連勝で、直近7試合負けなし。暫定ながらクラブ史上初めてJ1の首位に立った福岡。そんな好調を維持するチームの中で前嶋洋太が大きな存在感を放っている。

1-1で迎えた明治安田J1リーグ第10節・横浜F・マリノス戦の81分、前嶋は迷うことなく前線に駆け上がった。

「チャンスだ」

自陣で相手のパスをカットしてからのカウンター。右サイドでポイントを作ったナッシム ベン カリファを前嶋はサポート。パスを受けると中を見た。選択したのはグラウンダーのクロス。見木友哉が左足で合わせ、ベスト電器スタジアムは歓喜に沸いた。


前嶋にとって2023年9月以来となるアシスト。試合後のミックスゾーンでは、同点ゴールを挙げた藤本一輝や逆転ゴールを挙げた見木が多くの報道陣に囲まれながら取材対応する中、チームを勝利に導いた殊勲者の一人はその合間を何事もなかったかのように通り過ぎようとしていた。慌てて筆者が声を掛けると、ほっとした表情を見せながらそのシーンを振り返ってくれた。

「最初はダイレクトで(クロスを)上げようと思ったんですけど、あまりにもフリーだったし、なんかやめたほうがいいかなとその時は思って。アシストになったので良かったですけど、選択肢として両方持っておかなければと思っています。コーチとかと話す中で『タイプ的にはガンガン走れるタイプじゃないけど、ああいうところで前に出ていけるようになったらプレーの幅も広がるんじゃないか』と話をされて練習から意識していたので、それが結果につながったなという感じです」

良いプレーをしても決して喜びに浸ることなく、冷静に自分のことを見つめ、次に活かそうとする。いつも変わらぬ謙虚な姿勢があるからこそ、この試合で自身がマークしていた選手に先制点を奪われたシーンの反省も忘れない。

「やっぱり淡泊だったなと。(相手の)クロスが入る時の体の向きだったりとか、準備のところは僕自身こだわってやってきたところだったので、そこのシーンではやっぱり(自分の力が)足りなかったなと。本当に一瞬の隙を突かれちゃったのでしっかり反省してこれからないようにしたいと思っています」

そうは言っても、ここまでリーグ戦8試合に出場し、右サイドを中心にSBやWBでプレーする背番号29は安定した守備だけでなく、紺野和也とのコンビで攻撃に厚みをもたせている。

「我々が強みとしてやっていく上でキーになるポジション」(金明輝監督)を担う一人である前嶋。ここまで3バックと4バックを併用し、試合中に可変させながら戦うことが多い中でどのようなことを意識しながらプレーしているのか尋ねた。

「あんまりシステムは考えすぎないようにしていて、横とか隣、縦関係の連携というところと相手の長所だったり、ウィークだったりをしっかり分析してもらっているので、そこをどういうふうにやっていくかということしか意識していません」

サイドで上下動を繰り返しながら、内に外に瞬時に適切なポジションをとり、様々な選択肢の中から最適なプレーを選択して正確に実行する。サポーターから「サッカー洋太」と呼ばれるほど、サッカーIQの高さに定評がある前嶋。福岡にやってきて今シーズンで4年目。左右両サイドを卒なくこなし、チームに安定感をもたらす背番号29は、新指揮官である金監督の下で更なる成長を遂げようとしている。

「求められることも(前監督とは)やっぱり変わっていますし、その中で自分の良さとできることとを摺り合わせながらやっていって、(プレーの)引き出しは増えていると思うので僕自身も試合をしながらすごく楽しいですし、日々の練習からすごい刺激的な毎日なので、これからも、もっともっと良い選手になれるように頑張らなきゃと思っています。やっぱり攻撃のところは求められることが多いです。明輝さんも全然僕のプレーには満足していないと思うので、もっと良くなると思ってくれていると思うし、そこはまた練習から頑張りたいです。やっぱり数字のところは取らなきゃいけないと思うし、攻撃のクロスのところ、僕のところから良いクロスが上がれば攻撃の幅も広がると思います。(それができれば)個人の価値も上がると思うし、こだわりたいです」

チームを陰で支えながら常に高いレベルを目指し、飽くなき向上心をもって戦い続ける前嶋。もっとスポットライトを浴びてもおかしくない存在だ。

Reported by 武丸善章