
AC長野パルセイロは明治安田J3リーグ第9節で、FC琉球に1-1のドロー。58分に先手を奪われるも、86分に忽那喬司のゴールで追いつき、連敗を「2」でストップした。
同点弾のきっかけを作ったのは、81分から途中出場したボランチの吉田桂介だ。投入から5分後。右サイドに顔を出してパスを受け、左サイドの砂森和也に大きく展開する。高い位置でボールをもらった砂森が最終ラインの背後に流し込み、忽那喬司が抜け出してネットを揺らした。
「相手が自分たちの右サイドにはめに来ていて、左サイドが空いているのは分析で出ていたので、早めに届けることを意識した。自分のサイドチェンジがゴールに繋がったのは、素直に嬉しい」
前々節の鹿児島ユナイテッドFC戦でプロデビューし、それに続く途中出場。東京国際大学出身の大卒ルーキーだが、2試合とも新人らしからぬ落ち着きを見せた。
中学から大宮アルディージャのアカデミーで育ち、“大宮仕込み”のテクニックやパスセンスが持ち味。東京国際大学では守備の強度も高めるなど、ボランチとしての幅を広げてきた。
長野に練習参加した際も大きなインパクトを残した。相手を手玉に取るようなパスやドリブルには、髙木理己前監督も驚嘆。今季も藤本主税新監督のもと、一次キャンプまでは主力組に食い込んでいた。
それだけに、開幕から6試合出番がなかったのは、「出遅れた」と捉えるのが適切かもしれない。本人も「最初は固さもあったけど、だんだん慣れてきた。チームにフィットしている感覚はあるので、もっとゴールに直結するようなプレーを出せれば」と口にする。
指標とすべき存在もいる。柏レイソルで大ブレイク中の大型ボランチ・熊坂光希だ。
「クマくん(熊坂)は大学の1個上の先輩で、3年生のときに一緒にプレーさせてもらった。派手なプレーをするほうではないので、一部には評価されていたと思うけど、ここまで大きく取り上げられるのは本当にすごい。でも、自分からするとあまり驚きはなくて、やっと評価が追いついたかなと(笑)」
大学3年時の吉田は4-4-2の右サイドハーフで、熊坂とダブルボランチを組むことはなかったが、彼の能力を間近で体感してきた。
185cmの長身を生かしたボール奪取と、ダイナミックな攻撃参加。吉田とはややタイプが異なるが、「守備で刈る能力とか戦術理解度は本当に高い。立ち位置とか技術の部分も間違いないので、学べるものはたくさんある」。
今では日本代表入りも嘱望されるプロ2年目の熊坂だが、1年目は10試合の出場にとどまっていた。吉田も1年目でやや出遅れはしたものの、巻き返すチャンスはいくらでもある。偉大な先輩に追いつき、追い越すべく、ここから駆け上がるのみだ。
Reported by 田中紘夢