
FC今治の快進撃を力強くリードするのがキャプテン、マルクス ヴィニシウスだ。クラブ初の明治安田J2リーグを戦う今季。開幕のブラウブリッツ秋田戦こそ0-1で惜敗したが、以降は7戦負けなしと乗っている。上位対決となった第8節V・ファーレン長崎戦には4-1と快勝し、「ヴィニ」の愛称で親しまれるブラジル人アタッカーはハットトリックを達成して、ホームのアシックス里山スタジアムに詰めかけたサポーターを熱狂させた。
今治に加入した2022シーズンから、4年連続のハットトリックは、まさしくエースの証だ。しかし、ブラジル時代はストライカーではなく、ウイングとしてサイドから仕掛けるチャンスメーカーだった。実際、2023シーズンはJ3でアシストランキングトップタイの10アシストをマークしている。
今治で大きく開花した得点力は、「我」を出すのではなく、チームのために常に全力で戦い、とことん走り続ける姿勢があるからこそ。屈強なフィジカルを生かしてボールを運び、利き足の左足だけでなく、高い打点のヘディングでもゴールを量産する。昨シーズンは19得点を挙げ、J3の得点王、リーグのMVPにも輝いた。
発揮し続けるリーダーシップもすばらしい。強い責任感と勝利への思いをプレーで体現できることから、今治の2シーズン目から副キャプテンを務め、今季、キャプテンに就任。ゲームキャプテンとして臨んだ昨年の明治安田J3第36節ガイナーレ鳥取戦は昇格の懸かる重要な一戦となったが、試合前、円陣の中心で仲間を熱く鼓舞した。
「今日、歴史を作る。このクラブで、このエンブレムとともに、最初から俺たちは戦ってきた。だから、ここにいる。90分の間には苦しい時間もある。でも、みんなで力を合わせて乗り越えよう。アウェイの地まで、サポーターもたくさん来てくれた。絶対にみんなで昇格しよう!」
そして、この重要な試合で今治3度目のハットトリックを達成。チームも5-0で勝利し、J2への扉が開かれることとなった。
上のレベルを目指し、決して努力を欠かさない。このまま進撃を続けて今治とともにJ1に昇格し、5シーズン連続、そして全3カテゴリーでのハットトリックを現実のものとするためにも、そのプレーはいっそう熱くなっていくはずだ。
今季の今治の強力な武器が、ウェズレイ タンキと組むブラジリアン2トップ。どちらかがゴールを決めると、マンガ『ドラゴンボール』のフュージョン・パフォーマンスが飛び出す。
チームにはJリーグYBCルヴァンカップ 1stラウンド 1回戦の徳島ヴォルティス戦で得点し、2-1で勝利へと導いた藤岡浩介、日野友貴も猛アピール中だ。今治に加入後、初ゴールとなった藤岡は、FC岐阜でプレーした昨季は19ゴールで、ヴィニと得点王を分け合っている。彼ら、日本人FWストライカーとの新フュージョンも楽しみだが……。
「フュージョンは、タンキとの特別なパフォーマンスなんだ(笑)。もちろん、ゴールを決めるのが誰であっても、勝利のために大きいことだし、心から喜ぶよ。パフォーマンスがなくても、団結力こそ今治の強さの秘密なんだ。一つになって、目標達成のために全力で戦って行くよ」
自身もチームも、まだまだ走り続ける。
Reported by 大中祐二