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【取材ノート:千葉】トレーニングと試合で着実に攻守をレベルアップさせる髙橋壱晟

2025年4月10日(木)
「4文字でいきますよ。『たまたま』です」

ジェフユナイテッド千葉が2-1で勝った明治安田J2リーグ第8節の試合後、取材エリアで24分の先制ゴールについて聞かれた髙橋壱晟はまずこう答えた。

その試合の千葉は、今シーズンの途中に加入したカルリーニョス ジュニオが初スタメンとなり、石川大地と2トップを組んだ。カルリーニョス ジュニオは前線からのプレスの連動性にまだ課題を残していた。それもあり、水戸ホーリーホックの攻撃の特性も考慮した千葉は前半、あえて水戸にボールを持たせるため、前から厳しくプレスをかけずにブロックを築く守備で臨んだ。
水戸にボールを持たれて攻められる時間が長い中、千葉は23分にCKを得た。日高大が蹴ったCKのボールは水戸の津久井匠海にヘディングでクリアされたが、24分、こぼれ球を拾った髙橋が右足でダイレクトシュート。強烈ながらも狙いすましたかのようにゴールマウスの左上隅に決まった、素晴らしいミドルシュートだった。


記者から褒められても、目指すレベルが高い髙橋は、礼を言いながらも自己評価は厳しい。今回も謙遜し、冗談めかして『たまたま』と言ったが、ゴールは偶然の産物ではない。

「(ああいったシュートが決まったのは)初ですね。たまたまです。ビックリしました。気持ち良かったですね。僕、(水戸戦の)2日前に同じような形のシュート練習を15分くらいやっていたんです。そのシュート練習では1回もあんなに綺麗には決まっていなかったんだけど(苦笑)。でも、セットプレーはオーガナイズされていて、その時の立ち位置は決まっているので、あれはもうメチャメチャ狙いどおりでした」

試合やトレーニングではなかなか決まっていなかったとはいえ、これまでも髙橋がペナルティエリアの外からミドルシュートを打つ場面は珍しくなかった。地道にトレーニングを行なってきたことに加え、チャンスと見れば勇気を持ってミドルシュートを打ち、積極果敢にゴールを狙ってきた成果が水戸戦のゴールとなった。

そして、決勝点となった77分の田中和樹のゴールの起点となったのも髙橋だった。プレスバックした椿直起と石川大地の挟み込むような守備を受けた水戸の選手がボールロストすると、そのボールを拾った日高が横山暁之にパス。オーバーラップして横山のパスを受けた高橋にはいくつも選択肢があったと思われるが、髙橋はファーサイドに駆け上がってきた日高を狙ってピンポイントのクロスを上げた。日高のシュートは水戸のGKの西川幸之介にセーブされたが、足を止めずに詰めた田中がこぼれ球を蹴り込み、ゴールを奪った。

「僕のボールが良かったというよりは、大くんがボールを奪ってからあそこまで上がっていて、それで和樹もちゃんとゴール前で詰めていたので、みんなで取ったゴールという感じです。クロスはちょっと高かったので、僕的には『いいクロスボールだった』と言われても、そんなことはないです」

ロングレンジのパスの精度が高い髙橋はファーサイドへのクロスだけではなく、攻め上がって来た対面の相手からボールを奪うと、すかさず逆サイドへの大きなサイドチェンジのパスを出すことも珍しくない。サイド攻撃が最たる得点パターンの千葉にとって、髙橋のそういった視野の広さとキックの正確性を生かしたプレーは非常に効果的だ。

「僕の判断もありますけど、チームの戦術的に(そういった攻撃の形が)作られているから、僕だけではなくて、それができる選手はたくさんいるかなと思います」

逆に守備面を考えると、もともと攻撃的MFやボランチとしてプレーしており、小林慶行監督によって右サイドバックにコンバートされた髙橋には、当初はサイドという位置での守備に不安があったはずだ。

「でも、うちのチームにはすごいウイングタイプの選手がいっぱいいますからね。和樹もそうだし、バッキー(椿)もそうだし、去年だったらトシくん(高木俊幸)もいて、今シーズンは源ちゃん(吉田源太郎)が入ってきたので。練習の中でレベルの高いマッチアップができています。でも、相手を止める時、トシくんや源ちゃんとはギリギリファウルみたいなプレーで喧嘩になっています(笑)」

今や千葉の右サイドバックとして着実に守備もレベルアップさせている高橋は、ポジション的になかなか得点する機会がないものの、水戸戦の得点は今シーズン2点目。今シーズンの初ゴールは開幕戦で、ペナルティエリアに進入して決めたものだった。その時の髙橋の得点後の『ジェフ三唱』のパフォーマンスは、とても気合が入っていたように見えた。


「慣れていないので、どうせやるなら思いっきりやっちゃえと思ってやりました」

以前、そう話していた髙橋に水戸戦での『ジェフ三唱』について聞くと、こう答えた。

「まだ、自分でその映像を見ていないので分からないけど、開幕戦の時よりも良かったんじゃないかと思います」

今シーズン、髙橋の『ジェフ三唱』はあと何回見られるだろうか。守備での奮闘に加え、失点後には「集まって話しましょう」と積極的にチームメイトに声をかけることもある髙橋。攻撃を活性化させ、さらに自らゴールを狙っていく姿にも頼もしさが感じられる。

Reported by 赤沼圭子