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【取材ノート:福岡】「成長するのに年齢は関係ない」。チームの好調を支える村上昌謙の圧倒的な存在感

2025年4月8日(火)


「(岩崎)悠人に聞いてあげてください」

明治安田J1リーグ第9節・浦和戦後のミックスゾーン。村上昌謙は笑みを浮かべながらそう言葉を残し、いつもと同じように自分のことは取材しなくていいですよと言わんばかりに足早にその場を去ろうとしていた。それでも、彼はこちらが声を掛けると必ず足を止め、自分の思いを実直に話してくれる。常に姿勢は謙虚で、一番に称えるのは仲間のこと。だからこそ、この日も真っ先に決勝点を挙げた岩崎の名を口にした。

確かにこの試合のヒーローは岩崎である。ただ、GKの村上が多くのピンチを防ぎ、勝利に大きく貢献したことも紛れもない事実。試合後、彼の話を聞こうと多くのメディアが集まったのも自然の流れだった。

「(浦和には)元々、能力の高い選手が前にいましたし、そういったところで背後のスペースのところ。今日(浦和戦)は濡れていたピッチが(試合中に)乾いたりと、そういったところの難しさもあったので、ディフェンスと声を掛けてどう守っていくのかをすごく意識しました」

前半から決定機を作られる中で、50分にビックプレーが生まれる。FKのクリアボールを拾われてのカウンター。松尾佑介にドリブルで運ばれ、クロスがチアゴ サンタナの足元に通る。それでも、村上はボールタッチが大きくなった瞬間を見逃さず、スッと間合いを詰めてブロック。冷静な判断で失点の危機を回避した。

「僕たちは(ボールを)取られても戻れる力のある選手がたくさんいるので、できるだけゴール前に引き込んでというのは考えながら。ただ、その中で相手のストロングの選手に良いボールが入っちゃったので、そういったところで自分が出た方が早いと判断したら出るべきだと思うし、あのタイミングで自分は出るべきだと思ったので出ました」

59分、安居海渡が放った右足のコントロールショット。60分、松尾佑介の強烈な左足のシュート。その後も訪れた被決定機を好セーブで救い、2試合連続クリーンシートを達成した。ここまで挙げた5勝全てが無失点によるもので守備の安定がチームの好調につながっている。


「みんなが(頑張って)走っているからだと思います。走るにしてもどう走るかだと思うし、チームとしてどう守るか。ゴールの場所は動かないですし、自分たちのゴールのある場所は決まっているので、そこに対してどうボールを中に入れないようにするのか。その為に自分たちがどこで(ボールを)回すかというのはすごく大切だと思うので、やっぱり失点をしなければこうやって点を取れる仲間がいるので、やっぱりそういったところの自分たちの中での意識もありますし、僕の前で10人が一生懸命走ってくれているおかげだと思います」

開幕から3試合連続スタメンだった小畑裕馬に代わって、4節の神戸戦で今シーズン初先発を果たすと、ここまでセーブ率(セーブ数÷(セーブ数+失点))に加え、ペナルティエリア内シュートセーブ率もJ1でトップを記録(データはいずれも©JSTATS)。その間、失点は7節・町田戦の2つのみ。「やられた」と思ったシーンでもゴールを許さず、チームに安心感と勇気を与える守護神は福岡のリーグ戦6試合負けなしに大きく貢献している。最大の特長と言っていい至近距離のシュートストップだけでなく、ペナルティエリア外からのシュートストップ、クロス対応、ハイボールの処理、最終ラインの背後のスペースのケア、そしてフィード。GK陣ではチーム最年長となる32歳の村上は、年齢を重ねるたびにプレーの幅を広げながら自身の強みに磨きを掛けている。

「成長するのに年齢は関係ないと思っています。年齢を重ねていろんなことを経験しての成長もありますし、新しく監督が代わって、(金)明輝さんになっていろんなことにチャレンジして自分自身のプレーの幅を広げるということも大切なことで、その中で自分自身の強みというのを忘れずにそういったところを練習から積み重ねています」

暫定ながら5位に浮上した福岡。開幕3連敗からV字回復を見せ、目標のリーグ戦6位以上が目指せる位置にやってきた。

「(リーグ戦6位以上は)目指す場所ではなくて自分たちで求めていく場所だと思うので、そういったところで一戦一戦をどう戦っていくかだと思うし、それは勝負の世界、勝つことも負けることも引き分けることもある中ですけど、常に100%でやって勝ちを目指していくのが自分たちのスタイルだと思うし、それを見てサポーターの皆さんが(スタジアムに)足を運んでくれるようにするのが僕たちの仕事だと思っています」

浦和戦で今シーズン初めてベスト電器スタジアムに1万人を超える観客が集まった。次節の横浜F・マリノス戦もホームゲーム。現状に驕ることなく、仲間と共に上だけを追い求めて戦っている村上の姿を一人でも多くの方にスタジアムで目にしてほしい。

Reported by 武丸善章