前々節で6戦無敗だった長崎に3得点して攻め勝った藤枝MYFC。前節鳥栖戦は、アウェイで自分たちの力を十分に発揮できず、6試合ぶりの無得点で開幕戦以来の黒星を喫した。それでも長崎戦までの5試合では11得点を挙げ、須藤大輔監督が今季宣言する「超・超・超攻撃的エンターテイメントサッカー」を少しずつ表現しつつある。
その要因としては、チームとして攻撃の形が良くなってきたことはもちろんだが、選手個々が調子を上げてきたことも大きい。長崎戦で待望の来日初ゴールを決めたディアマンカ センゴールや、センターバックながら2ゴール2アシストともっとも数字を出している久富良輔をはじめ、高いパフォーマンスを見せている選手が増えてきた。
中でも、昨年からの成長度という点で際立つのが、長崎戦の決勝点を決めた2年目の攻撃的MF・浅倉廉だ。
その試合中の身体を張った守備で脳しんとうを負い、少し負傷もあって、4節を欠場。5節、6節は途中出場となったが、流れを変えて多くのチャンスを演出した。そして7節長崎戦で先発復帰して、自身の得点以外でもセンゴールの1点目につながるパスを出すなど攻撃をリードし続けた。
今季の浅倉のプレーで際立つのは、ラストパスやシュートだけではない。相手を背負いながら後方からのパスを受けても倒れず、失わず、巧みにボールを動かしながら前を向くシーンが昨年より大幅に増えている。それに加えて1人2人はがしながら前に運ぶシーンも目立つ。そういう選手が前にいると、DF陣も思いきって縦パスを刺すことができるので、相手ゴールに迫るシーンを増やすという意味でも大きな役割を果たしている。
そんな浅倉に対して、須藤監督は次のような進化を感じている。
「2年目になってプロのスピードやパワーに慣れてきて、プレーに余裕が出てきてるなと感じます。それと肉体改造というか、身体の鍛え方を変えて、切れとか強さが去年とは全然違っています。身体が動くからこそ元々持ってるもの、他の選手にないタッチとか前を向く力、ボールを引き出す動きの戦術眼といった特徴をより出しやすくなって、幅が広がっているのかなと感じます」
浅倉本人も「前より思い通りに身体を動かせるようになってきて、自分の持つ技術を出しやすくなっていると思いますし、自分の思い描いてるイメージにより近いプレーができるようになってきたと思います」と言う。
「去年のアウェー長崎戦、久しぶりにスタメンで出た試合でケガしてしまって、そこから1ヶ月半ぐらいプレーできなかったんですが、その期間に身体のバランスを整えてくれる整体の先生に出会ったんですよ。筋肉よりも骨格にアプローチする“骨軸調整”というものに取り組んでいる先生で、そこに通い始めてからケガが良くなって、身体も動かしやすくなってきたんです」(浅倉)
そこから28節山形戦(8/24)で実戦復帰し、3試合目の30節栃木戦でプロ初アシストを記録。さらに32節清水戦で待望のプロ初ゴールを決めた。
「それでスタメンも増えて、調子が上がってきて、自分の身体が変わり始めたことが実感できて、先生の説明にも納得できたし、身体作りって本当に大事だなと感じるようになりました。そうやって身体が整ってきた中で、骨軸だけでなく筋肉にもアプローチするようになって、それまで何となくやっていた筋トレが、意味のある、しっかりと目的意識のある筋トレに変わったので、より効果が出ていると思います」(浅倉)
恩師の教えは、スポーツ界に広く普及しているわけではない独自理論だが、浅倉自身は大きな効果や変化を実感できている。何より今の彼の動きが、効果を明確に証明している。
「だから先生にはすごく感謝していますし、もっと自分が活躍して、もっと有名になって、日本代表に選ばれたりすることによって、骨軸調整の重要性を証明したいとも思っています」(浅倉)
そんな中でも5月の時点で「今はやるたびに課題が出てきていますし、今までやってこなかった自分が囮になる動きや背後への動きにもチャレンジしています。自分の足りないところにしっかりと目を向けて、日々取り組んでいきたいと思っています」と語り、自分に矢印を向けてプロとしての基盤を整える努力を続けてきた。
その過程でひとつの大きな出会いがあり、下地作りが一気に加速して、今季は自分の持ち味を存分に表現できるようになってきた。アウェイゲームで負傷するなど昨年は因縁深かった長崎との対戦で決勝点を決め、自信も深めている。
だからこそ彼自身、今がピークとは一切思っていない。
「今は、もっとこんなふうにできるというイメージの幅が膨らんで、もっと高いレベルにいける感覚が自分の中にあります」という言葉が強がりでも過信でもないことは、彼の顔から十分に伝わってきた。
鳥栖戦では今の実力をあまり発揮できなかったが、その悔しさもバネにして、これからどんな進化や結果を見せてくれるのか。楽しみや期待を膨らませるに値する選手であることは、筆者自身も確信している。
Reported by 前島芳雄
その要因としては、チームとして攻撃の形が良くなってきたことはもちろんだが、選手個々が調子を上げてきたことも大きい。長崎戦で待望の来日初ゴールを決めたディアマンカ センゴールや、センターバックながら2ゴール2アシストともっとも数字を出している久富良輔をはじめ、高いパフォーマンスを見せている選手が増えてきた。
中でも、昨年からの成長度という点で際立つのが、長崎戦の決勝点を決めた2年目の攻撃的MF・浅倉廉だ。
切れや強さが増して、より技術が表現できるように
今季の浅倉は、開幕当初から非常に身体の切れが良く、チャンスにも数多く絡んでいた。ただ、シュートシーンでは余裕のなさや力みが見えて、開幕から2試合は結果を出せなかった。だが、集団食中毒という非常事態の中で迎えた明治安田J2第3節・秋田戦では、シュート時の冷静さという課題も克服して、利き足ではない左足で見事なコントロールシュートを沈め、チームと自身の今季初得点を決めてみせた。その試合中の身体を張った守備で脳しんとうを負い、少し負傷もあって、4節を欠場。5節、6節は途中出場となったが、流れを変えて多くのチャンスを演出した。そして7節長崎戦で先発復帰して、自身の得点以外でもセンゴールの1点目につながるパスを出すなど攻撃をリードし続けた。
今季の浅倉のプレーで際立つのは、ラストパスやシュートだけではない。相手を背負いながら後方からのパスを受けても倒れず、失わず、巧みにボールを動かしながら前を向くシーンが昨年より大幅に増えている。それに加えて1人2人はがしながら前に運ぶシーンも目立つ。そういう選手が前にいると、DF陣も思いきって縦パスを刺すことができるので、相手ゴールに迫るシーンを増やすという意味でも大きな役割を果たしている。
そんな浅倉に対して、須藤監督は次のような進化を感じている。
「2年目になってプロのスピードやパワーに慣れてきて、プレーに余裕が出てきてるなと感じます。それと肉体改造というか、身体の鍛え方を変えて、切れとか強さが去年とは全然違っています。身体が動くからこそ元々持ってるもの、他の選手にないタッチとか前を向く力、ボールを引き出す動きの戦術眼といった特徴をより出しやすくなって、幅が広がっているのかなと感じます」
浅倉本人も「前より思い通りに身体を動かせるようになってきて、自分の持つ技術を出しやすくなっていると思いますし、自分の思い描いてるイメージにより近いプレーができるようになってきたと思います」と言う。
動ける身体を作った“骨軸調整”
そうした彼の動きの良さ、その背景にある“肉体改造”という面では、ひとつの出会いが大きな転機となった。「去年のアウェー長崎戦、久しぶりにスタメンで出た試合でケガしてしまって、そこから1ヶ月半ぐらいプレーできなかったんですが、その期間に身体のバランスを整えてくれる整体の先生に出会ったんですよ。筋肉よりも骨格にアプローチする“骨軸調整”というものに取り組んでいる先生で、そこに通い始めてからケガが良くなって、身体も動かしやすくなってきたんです」(浅倉)
そこから28節山形戦(8/24)で実戦復帰し、3試合目の30節栃木戦でプロ初アシストを記録。さらに32節清水戦で待望のプロ初ゴールを決めた。
「それでスタメンも増えて、調子が上がってきて、自分の身体が変わり始めたことが実感できて、先生の説明にも納得できたし、身体作りって本当に大事だなと感じるようになりました。そうやって身体が整ってきた中で、骨軸だけでなく筋肉にもアプローチするようになって、それまで何となくやっていた筋トレが、意味のある、しっかりと目的意識のある筋トレに変わったので、より効果が出ていると思います」(浅倉)
恩師の教えは、スポーツ界に広く普及しているわけではない独自理論だが、浅倉自身は大きな効果や変化を実感できている。何より今の彼の動きが、効果を明確に証明している。
「だから先生にはすごく感謝していますし、もっと自分が活躍して、もっと有名になって、日本代表に選ばれたりすることによって、骨軸調整の重要性を証明したいとも思っています」(浅倉)
昨シーズンの試練があったからこそ
昨季は、開幕の長崎戦に先発し、前半でいきなり初ゴールかという決定機があったが、シュートがポストに弾かれ、そこから初ゴールまで7カ月かかってしまった。その間に出場時間が減った時期もあり、苦い思いも数多く味わった。そんな中でも5月の時点で「今はやるたびに課題が出てきていますし、今までやってこなかった自分が囮になる動きや背後への動きにもチャレンジしています。自分の足りないところにしっかりと目を向けて、日々取り組んでいきたいと思っています」と語り、自分に矢印を向けてプロとしての基盤を整える努力を続けてきた。
その過程でひとつの大きな出会いがあり、下地作りが一気に加速して、今季は自分の持ち味を存分に表現できるようになってきた。アウェイゲームで負傷するなど昨年は因縁深かった長崎との対戦で決勝点を決め、自信も深めている。
だからこそ彼自身、今がピークとは一切思っていない。
「今は、もっとこんなふうにできるというイメージの幅が膨らんで、もっと高いレベルにいける感覚が自分の中にあります」という言葉が強がりでも過信でもないことは、彼の顔から十分に伝わってきた。
鳥栖戦では今の実力をあまり発揮できなかったが、その悔しさもバネにして、これからどんな進化や結果を見せてくれるのか。楽しみや期待を膨らませるに値する選手であることは、筆者自身も確信している。
Reported by 前島芳雄