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【取材ノート:琉球】「あと一歩」の意識改革。荒木遼太が求める攻守の精度

2025年3月27日(木)


「もう、勝てたことがすべて。本当に結果が出たことにホッとしています」。

中央大から琉球へ加入し今年で3年目を迎えた右SB荒木遼太は、第6節での初勝利となった栃木SC戦(◯2-1)を振り返り、そう語った。プロの世界ではプレーの内容以上に結果が求められる。どれだけ良い動きをしていても数字として残らなければ評価されない。その現実を痛感しながら荒木はプレーしている。


この試合で荒木は、攻守にわたって積極的なプレーを見せ、試合の流れを作る重要な役割を果たした。特に右サイドでの動きはチームの攻撃に大きく貢献し、手応えを得る一戦となった。その姿勢が実ったのは、後半の2点目の場面。「狙ったわけではなかった」という荒木のアーリークロスは、本来、最前線にいたFW佐藤未勇に当て、こぼれ球を含めた二次攻撃を狙う意図だった。しかし、蹴ったボールはうまくヒットせず、ニアへ向かうライナー性の軌道に。しかし、それが相手DFに当たって図らずもバイタルエリアへ転がると、いち早くシュートを放った岩本翔が決め、これが決勝点となった。

意図的であろうとなかろうと、まずクロスを上げたことに価値がある。直前で奪われていればそのシーンは生まれなかった。そして実際に決まったこのプレーは、チームにとって「初勝利」という大きな意味を持つ。「チャンスを作って点に絡みたい」という荒木の積極性がキッカケとなった。

「1年目と2年目では、やれることが増えてきた感覚があります。」

プロのスピード感に慣れることで精一杯だった1年目。試合の流れを把握しながらプレーできるようになった2年目。そして今季は、リーグ戦6試合とJリーグYBCルヴァンカップの福岡戦すべてで先発出場している。彼が今、特に意識しているのは、攻守におけるポジショニングと運動量の向上だ。

「去年までは『あとちょっと走ればゴール前に絡める』という場面で甘えてしまっていた。今年は、しっかり入り切る、戻り切ることを意識しています。」



この「あと一歩」の意識が、攻撃にも守備にも大きな違いを生む。試合を重ねるごとに、自身の役割をより深く理解しプレーの精度を高めている。

「荒木に関しては経験が少ない中でよくやってくれていますし、彼の伸びしろ、ポテンシャルは非常に大きいと思います。(ルヴァンカップの)アビスパ戦でも、彼の方が良かったと思っています」

琉球の平川忠亮監督のこの言葉は、荒木がチームにとって重要な存在になりつつあることを示している。同時に「若さを活かした良い競争をしてほしい」というメッセージも込められていた。ポジション争いは常に続く。生き残るためには、日々の積み重ねが必要だ。

「今、試合には出られていますが、まだ絶対的な存在にはなれていない。」

荒木は自らの現状を冷静に見つめている。今は試合に出場できているが、それが保証されているわけではない。

「違いを生み出せる選手になりたい。(上原)牧人くん(現・サガン鳥栖)や柳(貴博)くん(現・ファジアーノ岡山)のように、クロスのタイミングや仕掛けの質にこだわりたいです」と、荒木は琉球で右SBを担った両者の特長を磨きたいと語った。

試合に出ることがゴールではない。荒木自身「求められているのは『この選手がいれば大丈夫と思われるような絶対的な存在になる』ということ」と語る。そのために、彼は今も進化を続けている。栃木戦での手応えを次の試合につなげられるか。平川監督が期待する「ポテンシャルの高さ」を証明する戦いはこれからが本番だ。

Reported by 仲本兼進