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【取材ノート:今治】インパクトは十分、持井響太が今治デビューを果たす

2025年3月14日(金)


今季、FC今治にアスルクラロ沼津から完全移籍で加入したアタッカー、持井響太が今治デビューを果たしたのは明治安田J2第4節、愛媛FCとのダービー、伊予決戦のことだ。1-1で迎えた65分、インサイドハーフの一角を務めていた加藤潤也と交代でピッチに入った直後に勝ち越されたものの、攻守にエネルギッシュな動きでプレーし続けて、反撃の機運を高めていった。


「自分は1人でどうにかできる選手ではないです。でも、前からしっかりプレッシングを掛けるとか、戦うことで流れを持ってこれると思っていたので。最終的には、良い流れの攻撃が何度か続いてゴールにつながったし、逆転という結果にもつながったので、そこは良かったと思います」

愛媛のゴールに迫る勢いを確実に加速させたのが、74分のダイレクトシュートだ。背後へのロングボールに抜け出した右ウイングバックの梅木怜がマイナスに折り返すと、ワンテンポ遅れてゴール前に走り込んで右足を振り抜く。バチン! という大きなインパクトな音がスタンドの記者席まで届く。しかし、強烈なグラウンダーのシュートは、わずかにゴール右に外れた。

「自分の得意なゾーンだったし、分析でもあそこが空くというのがあったので入っていったんですけど、ジャストミートできなかった。次は決めたいと思います」

そこが得意なゾーンであることを、外ならぬ今治はよく知っている。昨年8月、昇格に向けて激しくしのぎを削っていた沼津時代の持井に、シュートをねじ込まれているからだ。

74分のシュートシーンで折り返した梅木は、直前に交代で入ったばかり。パワフルなブラジル人FWウェズレイ タンキがゴール前に走り、愛媛の最終ラインを引っ張った背後のスペースと、そこに駆け込んでくる持井をよく見つけたことによって生まれた決定機だった。何より、すでに信頼関係が生まれつつあるのが伝わってきた。

「最初、怜が僕のことを見ていないと思って少しスピードを落としたんですけど、すごく良いボールが来て、合わせるだけでしたね。ただ、力んでしまって……。

信頼を得られ始めているかは自分では分かりませんが、あそこに入ってくるとか、ポジションの取り方は少しずつ理解されていると思います。周りを生かし、自分も仲間に生かされるのが、僕の持ち味なので。だから、ああいうボールが来たのがうれしかったですよね」

新たにチームを率いる倉石圭二監督は、3-1-4-2で各選手がしっかりポジションを取りながら攻守にハードワークするサッカーで、クラブにとって初のJ2に挑んでいる。開幕前の準備段階では、アンカーの一つ前、インサイドハーフの一角で早くも存在感を発揮し、新チームで重要な役割を果たす予感も高まっていた。

ところが開幕直前に右足首を負傷し、4節の伊予決戦で、初出場となった。そのプレーにさらなるエネルギーを与えてくれたのが、ダービーという特別な試合のテンションだ。

「開幕から3試合、ずっと外から見るしかなくて、悔しい思いをしていました。どうしても、この試合に間に合わせたくてトレーナーにも伝えていたし、しっかり調整して臨みました」

攻撃に関わる鋭いプレーに目を奪われがちだが、試合の流れをしっかり読んで、守備でもチームのために走り続ける姿がすばらしい。今治が2-2に追いついて迎えた終盤、ロングボールでパワープレーを仕掛けてきた愛媛に対して、前で攻めに出ようとするのではなく、低めの位置を取り、トレスボランチのようなニュアンスでプレーした。

「山くん(山田貴文)が交代するタイミングでドイスボランチになると監督からは言われていたのですが、なかなか交代しなかったし、自分でもどのタイミングか分からないのはありました。ただ、あの状況で失点して勝ち越されることだけは許されない。なので、少し下がってゴール前をコンパクトにして、セカンドボールを拾うことを意識しました。特に指示があったわけではなく、そこは自分の感覚でやりました」

結局、アンカーの山田が交代したのは、今治が3-2と勝ち越した直後の88分。持井がピッチに入ってから、20分以上が経過していた。

今治のデビュー戦で、ゴールやアシストといった、直接的な形で逆転勝利に記録されたわけではない。だが、その献身と機転が、これからチームにとって欠かせないものであることを、35分間のプレーで十分に証明してみせた。次こそ、自身がゴールネットを揺らせる。

Reported by 大中祐二