アジア初制覇をめざしたヴィッセル神戸の航海は“ラウンド16”で終わった。2試合トータル2−3で逆転負けを喫し、吉田孝行監督は「ショックが大きい」と言葉を絞り出した。不条理、悪夢、現実、後悔、責任、不運、無念…。あの言葉にはさまざまな思いが集約されているように感じられた。
AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)ラウンド16は、第1戦をホームのヴィッセル神戸が2−0で勝利し、圧倒的に有利な状況で運命の第2戦を迎えていた。
不安要素があるとすれば、光州FC(韓国)がホームで強いという点。ACLEリーグステージではホーム4試合を3勝1分けの無敗で切り抜けている。それを考えれば、神戸としては勝ち抜けが決まる第2戦をホームで迎えたかった。だが、山東泰山(中国)の大会撤退によって3位から5位転落での通過を強いられ、大会フォーマットにより第2戦をアウェイで戦うことになっていた。
とはいえ、第1戦で得た2点のアドバンテージは大きいと思われた。第2戦で神戸が先制点を挙げれば2試合で計3点リードという状況を作り出せるからだ。ホームでの第1戦の試合内容を見れば、十分に可能だと思われた。
だが、サッカーで言う“ダメ押し”の3点目は生まれず、逆に18分に神戸は失点してしまう。これで2試合トータル2−1。ホームの光州に勢いが増し、アウェイの神戸はそれに飲み込まれた。
1点リードで迎えた後半も光州FCのペースで試合が進む。56分には宮代大聖に代えて武藤嘉紀を投入し、69分には井手口陽介と新加入のエリキをピッチへ送り出す。戦局を左右するであろう“次の1点”を神戸は狙いにいった。
だが、82分に不運が待っていた。相手の挙げたクロスが岩波拓也の手に当たり、VAR判定を経てPKを献上してしまう。これを光州FCのスコアラーであるヤシル アサニに決められ、トータル2−2にされてしまった。なんとか1点を返したい神戸だったが、スコアは動かず延長戦へと突入する。
延長戦は一進一退の攻防が続き、どちらにゴールが生まれてもおかしくない展開が続いた。この2年間、最後には奇跡を起こす神戸を見てきたファン・サポーターは勝利を疑わなかっただろう。だが、サッカーの神様は神戸に試練を与える。後半の118分。光州FCの巧みなパスワークからヤシル アサニへとつながれ、豪快に振り抜かれた左足シュートは前川黛也の頭上を越えてゴールネットに突き刺さった。これでトータル2−3。残り時間は2分とアディショナルタイムのみ。最後まで奇跡を信じたが、このまま試合は終了し光州FCに大逆転でファイナルステージ進出を決められてしまった。
不条理な5位通過がなければ…、第1戦でもう1ゴールを奪えていたら…、百戦錬磨の酒井高徳がいれば…。試合終了と同時に、ファン・サポーターの胸にはさまざまな思いが溢れたに違いない。当然である。ただ、光州FCの戦いも見事ではあった。神戸のハイプレスを回避し、自分たちのポゼッションスタイルを貫きつつ、120分間を通して強度の高いプレーを続けた。
吉田孝行監督のオフィシャルコメントにはこんな言葉が残っている。
「何より戦術的なところで上手く自分たちのプレスを外すことを相手も分析して、そこから背後だったので、そこに対して自分たちが慣れるのに時間がかかりましたし、何より(アウェイの)この雰囲気は難しく、飲まれたかなと思います」
もちろん、神戸はなかなか選手が揃わない中でチームを作らないといけない難しさもあった。とはいえ、神戸のストロングを消して大逆転につなげた光州FCの戦いも称賛に値するだろう。神戸はこの「ショックが大きい」敗戦を次へ活かすしか無念を晴らす術はない。J1リーグ3連覇へ。前進あるのみだ。
Reported by 白井邦彦
AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)ラウンド16は、第1戦をホームのヴィッセル神戸が2−0で勝利し、圧倒的に有利な状況で運命の第2戦を迎えていた。
不安要素があるとすれば、光州FC(韓国)がホームで強いという点。ACLEリーグステージではホーム4試合を3勝1分けの無敗で切り抜けている。それを考えれば、神戸としては勝ち抜けが決まる第2戦をホームで迎えたかった。だが、山東泰山(中国)の大会撤退によって3位から5位転落での通過を強いられ、大会フォーマットにより第2戦をアウェイで戦うことになっていた。
とはいえ、第1戦で得た2点のアドバンテージは大きいと思われた。第2戦で神戸が先制点を挙げれば2試合で計3点リードという状況を作り出せるからだ。ホームでの第1戦の試合内容を見れば、十分に可能だと思われた。
だが、サッカーで言う“ダメ押し”の3点目は生まれず、逆に18分に神戸は失点してしまう。これで2試合トータル2−1。ホームの光州に勢いが増し、アウェイの神戸はそれに飲み込まれた。
1点リードで迎えた後半も光州FCのペースで試合が進む。56分には宮代大聖に代えて武藤嘉紀を投入し、69分には井手口陽介と新加入のエリキをピッチへ送り出す。戦局を左右するであろう“次の1点”を神戸は狙いにいった。
だが、82分に不運が待っていた。相手の挙げたクロスが岩波拓也の手に当たり、VAR判定を経てPKを献上してしまう。これを光州FCのスコアラーであるヤシル アサニに決められ、トータル2−2にされてしまった。なんとか1点を返したい神戸だったが、スコアは動かず延長戦へと突入する。
延長戦は一進一退の攻防が続き、どちらにゴールが生まれてもおかしくない展開が続いた。この2年間、最後には奇跡を起こす神戸を見てきたファン・サポーターは勝利を疑わなかっただろう。だが、サッカーの神様は神戸に試練を与える。後半の118分。光州FCの巧みなパスワークからヤシル アサニへとつながれ、豪快に振り抜かれた左足シュートは前川黛也の頭上を越えてゴールネットに突き刺さった。これでトータル2−3。残り時間は2分とアディショナルタイムのみ。最後まで奇跡を信じたが、このまま試合は終了し光州FCに大逆転でファイナルステージ進出を決められてしまった。
不条理な5位通過がなければ…、第1戦でもう1ゴールを奪えていたら…、百戦錬磨の酒井高徳がいれば…。試合終了と同時に、ファン・サポーターの胸にはさまざまな思いが溢れたに違いない。当然である。ただ、光州FCの戦いも見事ではあった。神戸のハイプレスを回避し、自分たちのポゼッションスタイルを貫きつつ、120分間を通して強度の高いプレーを続けた。
吉田孝行監督のオフィシャルコメントにはこんな言葉が残っている。
「何より戦術的なところで上手く自分たちのプレスを外すことを相手も分析して、そこから背後だったので、そこに対して自分たちが慣れるのに時間がかかりましたし、何より(アウェイの)この雰囲気は難しく、飲まれたかなと思います」
もちろん、神戸はなかなか選手が揃わない中でチームを作らないといけない難しさもあった。とはいえ、神戸のストロングを消して大逆転につなげた光州FCの戦いも称賛に値するだろう。神戸はこの「ショックが大きい」敗戦を次へ活かすしか無念を晴らす術はない。J1リーグ3連覇へ。前進あるのみだ。
Reported by 白井邦彦