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【取材ノート:東京Ⅴ】ボールを持つたびに感じさせる新井悠太のゴールへの期待感

2025年3月13日(木)
2024年に16年ぶりにJ1復帰を果たし、2シーズン目を戦っている東京ヴェルディ。1年目の昨季は、「残留争い」が大方の順位予想とされていたが、最終順位は6位に終わり、すっかり周囲からの期待値も一変した。それと同時に、対戦相手からの警戒度も格段に上がることは城福浩監督はじめ、選手たちも全員が新チーム始動日から想定していた。

そして実際、第5節を終了した現時点でもすでにその難しさを感じさせられることも多々あり、ここまで1勝1分3敗の16位と苦戦が続いている。とはいえ、昨季の同時点、第5節終了時の成績は0勝3分2敗の17位。単純に比較すれば、まったく悲観する必要はないともいえる。

とはいえ、楽観もできないのも事実だ。昨季は5試合で7得点を奪えていたが、今季はここまで3ゴールと得点力が乏しい。また、昨季の主力がほぼ残留しているだけに、チームとして積み上げと熟成を証明することは必須となる。そのためにも、自分たちで自分たちに求めるハードルを高めていくべきだろう。

そこで期待したいのが新井悠太だ。形式的には「ルーキー」だが、東洋大学3年次の2023年6月に2025シーズンからの加入を契約。直後に強化指定選手として東京Vの一員となり、J2リーグ8試合2得点、昨季もJ1で3試合出場と、すでに貴重な戦力として認知されてきた。

実質“3年目”を迎え、今季は開幕戦から5試合連続出場。第2節から4試合連続スタメン起用されており、主に左ウイングとして存在感を示している。相手の逆をつくフェイントと高速ドリブルが武器で、その圧倒的なゴールへの推進力に、ボールを持つたびに期待感が高まる。

「去年は、チーム(東京V)に帯同していてもなかなか試合に出られないという状況が続いて、自分の中で『どういうプレーが足りないのかな?』と深く考えて、消化していくというのを繰り返したシーズンでした。その中で、守備の強度など、チームの中でまず何を求められているのかということをきちんと考えられましたし、その上で、自分のストロングを出してアピールするにはどうすればいいのかということも整理してプレーしていました」

その努力が実り、ここまでレギュラー争いを勝ち抜いている。

「最初の1分から全力で出し切る」「ハイインテンシティの守備」など、試合に出るためのチームとしての絶対条件に取り組む中で、自分自身の中で驚いたことがあるという。

「ここまで守備で強度が出せると思っていなかったんです。去年、守備を課題として意識して取り組んでいたのですが、今年、本当に自分の中でも『強度が出てるな』と感じてて」

その要因を、新井は次のように話した。

「周りが見えるようになったのが1つのポイントかなと思います。もちろん、がむしゃらに前から(守備に)行っていますが、その中でも、うまく自分の中で強弱をつけたり、相手と駆け引きしながらというのを意識してできるようになったのが大きいと思います。

それと、(主に左サイドのウイングバックで出場している)ひじくん(翁長聖選手)の存在も大きいです。どうしても後ろは見えないものも多いのですが、その見えないところをひじくんが的確に指示を出してくれる。その声のおかげで、攻撃も含めて自分が迷わずに前に行けているというのもあります」

チームの1ピースとしてやらなければいけない役割と自分にしか出せない他の選手との“違い”。そのどちらも発揮できるバランスを、いま、確実に掴みつつある。「毎試合毎試合、安定して力を出せるように。そして、得点を量産できるように、日々成長していきたいと思います」

今後の飛躍に大いに期待したい。

Reported by 上岡真里江