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【取材ノート:琉球】守備の安定と攻撃の起点に。DF神谷凱士が着実に図る融合

2025年3月6日(木)


今年、ヴァンフォーレ甲府から加入したDF神谷凱士にとって、新たな環境への適応は決して容易なものではなかった。チーム戦術の理解、選手同士の連係、監督が求めるプレースタイル。すべてがゼロからのスタートだった。「少し悩みながらサッカーをしている」と本人が語るように、新チームで自身の役割を果たすことは簡単ではなかった。それでも、センターバックというチームの要を担う以上、スムーズな順応が求められていた。

特に苦労したのは「ビルドアップ」。甲府で過ごした2年間とは戦術も選手も大きく異なる環境の中で、「ビルドアップって言葉だけが前に出るけど、実行するのは簡単ではない」と、理論と実践のギャップを埋める作業は容易ではない。ただ神谷は、センターバックとしての責任感を持ち、チームに溶け込むための努力を重ねてきた。

開幕節のザスパ群馬戦、第2節のFC大阪戦では出場機会がなかったものの、第3節の福島ユナイテッドFC戦においてついに移籍後初先発を果たす。左センターバックに立ち、前半から安定したビルドアップを披露し修練を証明。またボールを持ちながら相手のプレスを巧みに剥がせば、セットプレーでは積極的にヘディングシュートを放ち、ネットを揺らす寸前の場面も作った。守備面でも冷静な対応で相手のカウンターを阻止するなど、今後の戦いに向けて大きなプラス材料となるプレーを見せた。


試合後、神谷は「勝ちたかった」と悔しさをにじませつつも、「チームとしてやりたいことはできている」と手応えを語る。チームメイトとの連係も深まり、「僕の特徴も分かってきてくれる」と成長を実感。開幕から2試合出場機会がなかった時期についても「モチベーションが下がることはなかったし、出番が来た時に備えて準備していた」と語る。そのプロフェッショナルな姿勢が、初先発へとつながったのだろう。

センターバックに必要な「高さ・球際・ヘディング」の強さを発揮する一方で、「左足を活かしたパス」で攻撃の起点を作れるのも神谷の大きな魅力。さらに、サイドバックやボランチもこなせる多才さを「自分の武器」と認識している。



「チームの昇格を目指しつつ、個人としても成長したい」と、神谷は結果を求め続ける。福島戦では惜しくもセットプレーからゴールを決めることはできなかったが、「次は決めてみせる」と前を向いた。
「1ヶ月前よりは悩むことが減った」と話すように、新たな環境に挑みながら、その姿勢と努力で着実にチームに適応している。

Reported by 仲本兼進