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【取材ノート:名古屋】失意の開幕4失点を起爆剤に、ホーム開幕戦こそ真の名古屋の見せ所

2025年2月19日(水)


ワースト方向への数字の更新は何とも重たい雰囲気にもなる。誰もが「最悪のスタート」と口にした昨年の開幕戦はホームで鹿島に0-3の完敗を喫したが、今年は川崎のホームで後半4失点での0-4と、またも悪夢のようなゲームに見舞われた。「キャンプと(開幕前の練習試合の)ジュビロ戦合わせてけっこう良い準備ができて、結果も出せていてよかったんだけど」と、ベテラン武田洋平も好感触だったプレシーズンとの落差は大きく、改めて公式戦で勝つことの難しさを名古屋はチーム全体で感じたに違いない。

0-0で折り返した前半から一転、川崎の先制点をきっかけに崩れていった名古屋の守備には、それまで積み重ねてきた準備や、そもそも昨季から引き継いできたはずの大きな要素がひとつ、欠けていた。強度である。ルヴァンカップを制したハードワークのフットボールはとりわけ守備にその特徴が大きく、ほぼほぼオールコートの範囲で自らのマークを担当するマンツーマンがその基本。もちろん受け渡すこともするが、それがオプションに思えるほどに責任の所在がはっきりした守り方をするのはキャンプでも確かめられてきたところだった。それが川崎戦では判断が後手を踏むことが多く、中途半端な守備が頻発。武田も「やっぱり寄せ切れていないのはもう明らかやったから、もっと後ろから連動して押し出していかないと。なんか好き放題やられちゃって守備の迫力が全くなくなっていた」と苦渋の表情を浮かべた。


その点については長谷川健太監督も会見の場で触れ、「もう少し寄せないと自由にやれるだけの技術を持っている選手が川崎にはいる。そこで少し怖がってなかなか寄せきれなかった」と、悪循環に陥っていたと吐露した。一方で川崎戦の問題点は「どちらかといったら攻撃がうまくいかなかった」ことにあるとも言い、「ディフェンスはディフェンスで、前線の選手への要求もあると思う」と厳しい試合になった守備陣を思いやった。これについては三國ケネディエブスも「もう少し前線に起点が欲しかった。苦しかった。後半はそれで守備の回数が特に多かったので」と厳しかった45分間を振り返り、その上で「自分がもっとヘディングのクリアを仲間につなげられるようにしたい。3回ぐらい、相手に渡ってしまったシーンがあったので、100%仲間につなげる意識でやらないと」と自省に努めている。誰かのせいではない、と武田は言ったが、強度の不足が招いた攻守のチグハグ感が、この惨敗の主たる要因だったのは間違いない。

難しい試合展開の中ではそれぞれ個々の部分での取り組みも随所に見られ、それが次戦へのポジティブな材料となっている部分もあるにはあった。例えば新加入ですでに不動の3バックを構成している原輝綺は、先制点を取られたこと、自分たちがそれを取れなかったことに反省点を持ちながらも、攻撃が好きな選手として改善点のほとんどをやはり攻めの局面に多く挙げた。たとえば、「上がっていくタイミングをずっと探してましたけど、前半の数回しかなかった。そこのタイミングはもう少し増やしていきたい。でも一人よがりで上がってもしょうがないから、それができる時に、ボールを受けられるタイミングで次は入っていく」と、あくまで組織の一部としての効果的な動きにフォーカスする。猛攻を受けるばかりになってしまった後半についても、その分析は冷静だ。



「最初に点を取られて、こちらも取りに行かないと、っていう気持ちが前に前にとなる。その意識も大事ですけど、それで単調な攻撃になることも多い中では、自分は一番後ろの選手なのでそこに自分が間に合わない時間帯が多かった。そこは点を取られても落ち着かせるというか、そこでしっかり攻撃を組み立てていく、狙いを持った攻撃を出していくっていうことを、選手全員がトライしていかないと厳しいかなと。難しい試合でも前半のようにしっかり耐えつつ1点を先に取れれば、また試合の流れも変わってくるし、選手の気持ちも変わってくる」

ただ、こう言いつつも原は果敢なパスの選択でチームにヒントを与え続けているようでもあったが、そこについては「それは僕個人でどうこうできるところでもないので、他の選手やスタッフがまた修正していくと思う」と控えめだった。ビルドアップも含めて攻撃面での不出来については、武田も「いや、それはもうポジティブに捉えて『ここをもっとこうしていこう』って試合が終わってからも話していた。そこは改善できるところだから、次につなげたい」とやはり前向き。1試合上手くいかなかったからといってもうダメだと断じるのはナンセンスで、逆に試合後すぐにそうした議論がチーム内で沸き起こったことに彼らの逞しさは感じた。

またしても多くの失点に絡み、おまけにキャンプで痛めた足をこの試合でも再び痛めるアクシデントに見舞われた三國は健気に前を向く。嫌な言い方になるが、この状況はすでに経験済みで、そこからどのようにメンタルをコントロールしていけばいいかも、彼は知っている。もちろん監督も、チームもだ。リーグ優勝を目指すと宣言してのこの開幕戦にはなかなかに逆風が吹いたわけだが、三國はDFリーダーとしての自覚もたっぷりにこう言った。それはやや開き直りにも近いものだが、決意の表れという方が正しい、強い言葉だった。



「そこでマイボールにしたら良い攻撃ができるっていう時に、相手にボールが渡ってしまったりが多かったんですけど、そこはシーズン初戦でちょっと固くなっていたのかもしれない。次はそこからしっかり修正して、まだ始まったばっかりですから。今年はほんとに優勝を狙えるチームだと思ってるんです。優勝するチームって言っても必ず1試合は負けると思うんで、それを今日が最後っていう気持ちを持ちながら、また来週いいトレーニングして臨んでいきたいです」

良好なプレシーズンで生まれた隙を思い知らされるような、甘さをはたき落されるような大敗は、良い薬として受け止めればいい。原は4失点を糧に、「今日も再三、僕だけじゃなく他の選手も身体を張って守るシーンは多かったけど、ほんと最後の1個で水の泡になってしまう。最後の最後まで身体を張る、そこを締めるところでもうひとつテコ入れを、個人的にもして次に臨みたい」と覚悟を決めていた。前年度王者とのホーム開幕戦は相当に難易度の高い戦いとなりそうだが、少なくとも前週のようなふがいない姿を見せることはないはず。次こそ、リーグ優勝を狙うために仕上げられてきた、2025年の名古屋の本領発揮である。

Reported by 今井雄一朗