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【取材ノート:福岡】現代型GK小畑裕馬が開幕戦で感じた悔しさと自信。その先に見つけたこれからの考え

2025年2月18日(火)


2025明治安田J1リーグ第1節の柏戦。試合前、先発メンバーにある小畑裕馬の名前を見たとき筆者の中では彼のプロサッカー選手人生が大きく変わる日になるかもしれないと思った。

小畑自身にとって初の開幕スタメンの座。否が応でも緊張が走るはずだが、立ち上がりから背番号24は落ち着き払っていた。

「僕自身いつでも準備していましたし、(金)明輝さんにこうやって使っていただいて僕は期待に応えてという意味でも強い気持ちで(ピッチの)中に入りました」

プレーと同様に口調も冷静な小畑に対して、試合前、「いつも通り、積極的にチャレンジしてこい」と声を掛けた金監督が「我々の攻撃にプラスワンを作ってくれる大事な存在という意味で、ゲームに臨んでもらいました。判断良く、キックの質もよく、効果的にチームの攻撃を活性化してくれた」と評価するように小学生までフィールドプレーヤーとしてプレーするほど、足元の技術に長けたGKは、積極的にビルドアップに関与。しなやかな足の振りから放たれる美しい軌道のフィードで攻撃の起点を作り、何度もベスト電器スタジアムを沸かせた。

「僕自身は、もともと自信をもって攻撃に関わるというのをやってきたので、手応え的にはまだまだですけど、今後につながる試合になったかと思います。まずは、最優先として前を覗くというのが一番ですし、それができない時にはキャンセルして、今回はウェリントンが(トップに)いたので、ウェリントンのところに配給するというのはストロングでもあります」

良さは攻撃面だけではない。「やっぱりキーパーって一番はゴールを守る、ネットを揺らさせないというのが仕事だと思いますし、その次に攻撃というのが(優先順位として)来ると思う」。GKとして最も大事な「失点をしない」役割を果たすべく、ポジショニングの良さと俊敏な動きを活かして最終ラインの背後のスペースのケアだけでなく、何度も素晴らしいシュートストップでピンチを防いだ。最たるものが43分、細谷真大の放ったシュートの場面。相手の右サイドからのクロスに対して細谷と上島拓巳が競り合い、ボールはペナルティエリア内にこぼれる。そこに小畑は素早く反応。的確に間合いを詰め、体を目いっぱい伸ばしてゴールを許さなかった。


「僕自身、キーパー界では大きいほうではないので、機動力を求められていると思う。そういう部分ではそういうふうに意識してやってきたので、それが今日(柏戦)出た。やっぱり僕自身、失点をしたくないという気持ちで強く(試合に)入ったので、あのまま止めてもっともっと流れを引き寄せられればよかった」

75分に失点を許して敗れただけに当然悔しさは強い。ただ一方で彼自身、J1の舞台で90分プレーする中で自信を掴める部分があったのもまた事実。試合に出ないと感じることができない自身の“現在地”を知ることができた福岡デビュー戦になったはずだ。

アカデミー時代から11年所属した仙台を離れる決断をしたのは昨年末。U-18、19、23の日本代表に選出された実績を持ちながらプロでの5年間でリーグ戦出場は33試合。試合に出られない時間を多く過ごした23歳の若きGKは、今シーズン新たな環境でチャレンジするべく強い覚悟をもって移籍してきた。この日のプレーで福岡に関わる人々の小畑に対する見方は大きく変わり、期待度はグッと上がった。昨シーズンまで激しい先発争いを繰り広げていた村上昌謙と永石拓海だけでなく、今シーズンこそ初出場を狙うプロ2年目の菅沼一晃との競争を勝ち抜いて手にしたスタメンの座。このチャンスを手放すつもりは毛頭ない。

「新しく加入して温かく迎えてくれました。ただ、僕はそこに気を遣ってということもしないですし、僕自身、プロの選手としてお互いにリスペクトしながらやっていたので、(柏戦は)勝てなかったですけど、試合(に出る権利)を勝ち取れたというのは自信にもなるので次は結果をしっかりと求めていきたいと思います。まず、この失点を0にすれば負けることはないですし、やっぱり福岡はそうやって勝ってきたチームだと思うので、そういうのを継続していかないといけないと思います。この1失点で負けたというのをしっかりと深く受け止めて、今後、僕がこのチームに勝点をもたらせられるように練習していきたいと思います。素晴らしいキーパーがいる中でこういうふうに出場できたのは自信になりましたけど、結果を求められる世界でこうして負けてしまったのはまだまだだなと捉えているので今後も高いレベルでやっていきたいと思います」

小畑にとってプロサッカー選手人生の第2章が始まったと言っても過言ではない2025年2月15日。福岡の地で正守護神を目指して成長の歩みを加速させていく。

Reported by 武丸善章