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【取材ノート:神戸】“快勝”でACLEリーグステージを突破。4得点よりも際立った“守備”の手応え

2025年2月13日(木)
2月11日のAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)リーグステージMD7。ホームに上海海港(中国)を迎えたヴィッセル神戸は、11分に武藤嘉紀が先制点を挙げると、54分に鍬先祐弥、56分に汰木康也、81分に大迫勇也がゴールを重ねて4−0と快勝した。ホームでしっかりと勝点3を積み上げた神戸は、1試合を残してラウンド16進出を決めた。


1ゴール1アシストの活躍でマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた汰木は「とりあえずホッとしています」とリーグステージ突破に安堵の表情を浮かべた。
「常にタカさん(吉田孝行監督)にも言われていますけど、仕掛けてゴール前に入っていくプレーは最低限やらないといけない。それをピッチの上でしっかりできたのがゴールにつながったと思う。でも、質がもう少し足りない部分もあったし、2点目を決められるチャンスもあった。Jリーグだとそういうシーンを決め切らないと厳しい試合になることもあるので、もう1回映像を見返しますけど、気を引き締めて改善できたらなと思います」

すでに気持ちは2月15日のJ1リーグ開幕戦に向いているようだった。

4ゴールの圧倒的な攻撃力を見せた神戸だが、今週末の浦和レッズ戦に向けての収穫はむしろ守備面かもしれない。ACLEより前に行われた2月8日の「FUJIFILM SUPER CUP」ではサンフレッチェ広島に2失点。新シーズンに向けて不安を残していた。

だが、続くACLE MD7ではクリーンシートを達成した。上海海港のケヴィン マスカット監督は試合後の会見でこんなコメントを残している。
「先日の試合(FUJIFILM SUPER CUP)からヴィッセル神戸はほとんどの選手を入れ替えていて、それによってコンディションのいい選手が揃っていたと思います。特に後半にいくに連れてコンディションの差が出たと思います。このレベルの試合になるとコンディションの違いが大きな差になると思っています」

もちろん、ホームで戦えたこともあり神戸の選手たちのコンディションは良かっただろう。ただ、コンディション以前にFUJIFILM SUPER CUPと上海海港戦ではメンバーが異なる。上海海港戦ではFUJIFILM SUPER CUPからキャプテンの山川哲史と佐々木大樹を除く9人を先発から入れ替えている。昨シーズンを参考にするなら、大迫、武藤、酒井高徳らを擁したACLEのメンバーがレギュラー組だろう。ケヴィン マスカット監督は「コンディションの差」と言ったが、小池裕太や本山遥ら新加入選手に加えて冨永虹七や日髙光揮ら若手を先発起用したFUJIFILM SUPER CUPとは別のチームと考えた方が自然かもしれない。

特にこの2試合で違いが出たのは守備面だろう。もっと限定するなら守備から攻撃への展開力に大きな差があった。FUJIFILM SUPER CUPではビルドアップに定評がある岩波拓也を左CBに配置したものの、昨シーズンに左SBの初瀬亮が果たしたような正確なロングフィードによる組み立てがあまり機能しなかった。前線に大迫や武藤らターゲットマンがいなかったのも理由としては考えられるが、ロングフィードからセカンドボールを回収して攻撃に繋げる形がうまく作り出せず、結果的に広島にボールを奪われて多くのチャンスを作られている。

だが、昨シーズンの主力メンバーを編成したACLE上海海港戦では守備から攻撃への移行がスムーズに行われた。それを証明するようにFUJIFILM SUPER CUPでは広島に15本のシュートを浴びているが、上海海港にはシュートわずか3本しか許していない。守備は跳ね返すだけではなく、いかにうまく攻撃へ繋げるかが重要だと改めて感じさせられた。

今週末にはJ1リーグが開幕する。ACLE上海海港戦を見る限り、これといった不安要素はない。宮代大聖や井手口陽介といった昨シーズンの主力がケガから復帰すれば盤石の体制を築くこともできるだろう。リーグ3連覇へ、手応え充分でシーズンインを迎える。

Reported by 白井邦彦