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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:今季の名古屋を表す隠れたキーワード。“3人目”が拓く勝利への活路

2025年2月6日(木)


良い意味での驚きを感じられたのが、沖縄でのキャンプ最終日に行われた浦和との練習試合だった。名古屋といえば速さ、強度の高さ、アグレッシブな姿勢。というのが昨季に確立した彼らの特色だったが、もちろんそこは継続しつつ、試合の勝率を上げるために取り組んできたものがある。それが、引いた相手に対する攻撃方法の確立と質の向上で、そのカギとなるのがいわゆる“3人目の動き”なのである。

ひとつ特徴的なプレーを挙げれば、浦和との練習試合で浅野雄也が決めたゴールがそれだった。サイドにボールを展開し、そこにタイミングを合わせるようにペナルティエリアへの侵入を試みたのはボランチの森島司だった。「攻撃のところで前に出ていけるところは自分のストロング」。ゴール前を固めることの多い浦和に対峙すると、名古屋は昨季は苦手と見られていたボール保持からの攻撃をある意味強いられるわけだが、そこはスタッフの分析含めて突破口は見出されており、選手の判断とともに良く表れたのがこのシーンだ。

サイドからのスルーパスを受けた森島はニアに走りこんだFWの姿を視野に収めつつ、逆サイドから走りこんでいた浅野にラストパスを通し、浅野はボールをプッシュするだけ。森島の動きが3人目なら、浅野の動きもある意味では3人目であり、相手の虚を突くように、湧き出てくるような崩しにかかわる人数が増えていくのは、こうした状況を突破するに効果的だと、キャンプ最終日に見せつけられたのは手応えとしても大きかっただろう。稲垣祥はその試合後、「ファイナルサードに入った時にどういうイメージで合わせていくか。もっと積み重なっていけばもっと良くなっていくと思うけど、ひとつずつ形はできている」と語り、“苦手克服”にも突破口を見つけたようだった。



この浦和戦の特に1本目は今までにないポジティブなポゼッションができた試合としても印象が強く、それもまた3人目の動きを交えたチームの挙動が高い効果をあげたと徳元悠平は振り返った。しかしこれは昨季も長谷川健太監督がチームに口酸っぱく要求していたことではあり、何かの変化がそこにはあったはず。徳元はそれを次のように語り、出し手だけでなく受け手としての動きを増やすべく、意識を高める決意を抱く。

「動き出した選手に対して、そこを使うっていうことを今までより見よう、ということ。ボールホルダーが蹴れるタイミングには動こうねっていうのは去年もありましたけど、その意識はより強くなりましたし、そこを使って崩してっていうのもできているからこそ、みんなが信用して、信頼してできている。自分もクロスが多くなりがちなんですけど、もっと入っていかないと、という話はされています。パスを出して止まるんじゃなくて、出して相手を吊り出して、そこのスペースを次の選手が使いやすいように心掛ける。そこはもっと増やしていって。(河面)アキくんや宮(大樹)の左足のキックは素晴らしいので、そこは自分も信じて動きたいと思います」



今季の名古屋は縦に速いだけでなく、連続性と連動性に優れた攻撃もまた大きな特徴にしようと目論んでいる。その中でカギになるのが“3人目の動き”であり、それは決して珍しくも新しくもない要素だが、普遍的に効果の高いプレーであることはすでに証明されていることだ。開幕を次週に控えたチームの主力たちが口にする手応えに多く含まれる、名古屋の新たな攻撃オプション。速攻も、カウンターも、ファストブレイクも、そしてポゼッションからの崩しもできるチームを目指すのもまた、今季のリーグタイトルを本気で狙っているがゆえ。プレシーズンの積み上げを強く感じることができる攻撃の新たなオプションには、開幕戦でも注目しておきたい。

Reported by 今井雄一朗