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北島祐二がこれまで以上に楽しそうにプレーしている。1月25日に行われた宮崎キャンプでの横浜FCとのトレーニングマッチ(45分×2本、30分×2本)。2本目の途中から出場した背番号25は確かな存在感を示した。
ポジションはトップ下。24歳のアタッカーは、局面ごとに上手く中間ポジションをとりながらビルドアップの出口となってチームの前進をサポートし、的確にボールを捌いて自らもゴール前へ。持ち前の技術の高さも活かしながら福岡に攻撃のリズムを作り出した。
「なかなかアビスパでああいう(自分の特長を出す)プレーを見せることができていなかったのですが、久しぶりにああいう感覚でやれました。相手の嫌がるところ、嫌がるポジションを探しながらポジションをとって、ボールを受けて前進していくというのはできた」
立ち位置が整理され、サイドアタックだけでなく、中央でのビルドアップ、崩しのバリエーションも増えているここまでの福岡の攻撃。その狙いを金明輝監督に尋ねると次のような答えが返ってきた。
「やはり基本的にサイドで(相手のプレスに)ハマってボールを奪われることが多いので、簡単にシンプルにサイドを使いたくないです。なので、中央での作りは練習でもたくさん取り組んでいます。ただ、中央で奪われると『どカウンター(を喰らいやすい)』というところで、表裏一体の戦術だと思うんですけど、テクニックのある選手、北島もそうですし、重見(柾斗)もそう、今日練習生で入っていた子もそうですけど、しっかりとできる選手たちがいるので、自分たちのギャンブルにならずにそういうプレーを選択してくれているということが大事です。ただそれをやりたいからやるのではなくて相手を見て適切なタイミングで外(サイド)に振って、外の選手たちが良い状態で仕掛けるのが非常に上手くできていた部分もあったので、そこは継続して、またよりブラッシュアップして、チームの武器にできたらなと思っています」
ここまでトップ下のみならず、ボランチでも起用され、新監督から才能の豊かさを評価される北島も今シーズンに懸ける想いが強い選手の一人だ。「10得点に絡むこと」を目標に期限付き移籍していた東京Vから戻ってきた昨シーズンはリーグ戦18試合の出場、0ゴールに終わり、悔しさが募る一年になった。今シーズン、これまで以上に攻守に球際の強さが求められる福岡のサッカーでより自分らしさを出していくために考えていることを教えてくれた。
「真ん中でボールをたくさん触る方が(自分の)特長が出る。今のサッカーならサイドの選手もボールを触れるので、(ポジションは)どこでも特長は出せるかなと思いますけど、より真ん中の方が選択肢は多いので相手を迷わせることができるのかなと思います。ゴール前にもっともっと入っていく、スピードを持って入っていくことがまだ足りない。あと走力の部分なのか、走るタイミングなのかというのは、もっと考えていかなければいけないのかなと思います。結果が全てで良いサッカーをしても負けてしまう、勝点が取れないというのはよくある話です。見ていて楽しいけれど勝てないでは意味がないですし、それで勝点を稼げずに降格したチームも今までに何チームも見てきました。なので、そこで満足するんじゃなくて、よりゴール前の結果にこだわっていかなければいけないと思います」
福岡のアカデミー、ユースで育った北島にとってもう一つ、今シーズンに懸ける想いが強くなった出来事がある。それは、ユースの前田一翔とサニブラウン ハナンのトップチームへの昇格だ。昨年の1月、彼に話を聞かせてもらった時、こんな言葉を残している。
「やっぱり育成の選手、ユース上がりの選手が活躍しないと。活躍するクラブが本当に強いクラブだと思いますし、そういう小さい頃から育った選手がいないとそのクラブの価値というのは上がらないと思います。アビスパの価値を高めていくためにも僕たちがもっともっと試合に出て活躍してこのアカデミー(やユース)の価値を上げていかないといけないと思います。そこはもっと試合に出てからじゃないと始まらないので、(出場機会を)掴みにいってできるだけアカデミー(やユース出身)の選手が多いような流れを作りたいと思います」
ユース出身の2人の後輩が新たに加わって、今の心境を聞いてみた。
「そういう選手がクラブの鍵になると思いますし、より大きなクラブになっていくためにはユース出身の選手が活躍しないといけないと思うので、そこは頑張って僕が引っ張っていけたらと思います」
今シーズンの目標はリーグ戦30試合以上の出場。金監督の下で成長を遂げ、ユース出身選手の先頭に立って活躍できるか北島にとって大切な1年になる。
Reported by 武丸善章