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今年の冬、柏レイソルのトップチームに昇格したルーキーは敢えて沖縄の地で挑戦する道を選んだ。
FC琉球の背番号47を背負うFWワッド モハメッドサディキは、昨年のU-18プレミアリーグEASTと日本クラブユース選手権(U-18)の両大会で得点王を獲得した実績を持つ。さらにU-18日本代表にも選出され、スペイン遠征に帯同した逸材だ。しかし、中学時代から6年間「レイソル愛」を育んできた彼は、柏でプロ1年目を過ごすのではなく武者修行を選択した。
「(ユース時代には)『トップ昇格して試合に出る』ことを目指していましたが、トップの練習に参加し、先輩たちの姿を目の当たりにしたとき、『試合に出られる機会はかなり限られる』と思いました。自分としては試合経験を積みたい気持ちが強く、琉球でプレーすることを決めました」。
トップチームでの厳しい現実を直視し、自ら育成型期限付き移籍の道を選んだ彼の決断には、並々ならぬ覚悟が込められている。
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初めて足を踏み入れた沖縄の地について、彼は「最初こそ緊張しましたが、チームメイトが積極的に声をかけてサポートしてくれているので、練習も生活もリラックスして取り組めています」と語る。チームメイトから『モハ』と呼ばれ、すぐに琉球の環境に溶け込んだ様子だ。また、琉球の攻撃的なサッカースタイルも彼が移籍を決断した理由の一つだった。
「高さだけではないプレーを見せたい」と語る187cmの長身FWは、ヘディングだけでなく、個人技やスピードを生かしたドリブル突破、シュートまでの流れるようなプレー、そしてボールコントロールといった多彩な形で得点に絡むプレーを目指している。また、守備面でも長い手足や優れたバネを武器に「前線からプレスをかけ、ボールに触れることができる強み」を発揮し、相手にプレッシャーを与えることだろう。
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そして彼の最大の魅力は「負けず嫌い」の気質だ。1月13日に行われたFC琉球U-18との練習試合では、加入後初の実戦で早速1ゴールを記録。しかし、モハは「3点は取れたはずなのに、2点外してしまった」と反省し、同試合で2ゴールを決めた高木大輔に届かなかったことを悔しがった。練習試合や紅白戦でも誰よりも点を取ることにこだわる姿勢こそ、彼の持ち味である。
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平川忠亮監督から求められる運動量や球際の強さを発揮しながらも、「最後の決定力が課題」と自己分析するモハ。その課題を克服し、琉球に多くの得点をもたらすことが彼の至上命題だ。沖縄の地で過ごすプロ1年目は、彼のサッカー人生において特別な意味を持つだろう。その覚悟と潜在能力がどこまで花開くのか、注目していきたい。
Reported by 仲本兼進