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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:モンスターレフティー、帰還。マテウス カストロ加入が意味する、名古屋の本気度

2025年1月23日(木)


これは“ラストピース”であると同時に、今季の名古屋の戦い方を決定づける補強だったと言えるだろう。沖縄での一次キャンプを打ち上げ、一度名古屋に戻って二次キャンプへの小休止に入っていたチームに、2023年夏にサウジアラビアへと移籍していたマテウス カストロが復帰した。「サウジやJリーグ、中国からのオファーもあったが、名古屋を優先して考えたかった」と古巣への愛情を口にした悪魔の左足を持つ男は、前回と同じ背番号10を再び身にまとい、本気でリーグ優勝へと突き進むチームへの全力のコミットを約束した。

前線には多くのスタッフを抱える名古屋だが、これは決して補強過多にはならないだろう。そもそもが今季の名古屋は複数ポジションをこなせる選手が多く、いくつかのポジションとフォーメーションを使い分けながら、相手によらず、そして誰が出ても同じ強さを保つことを目標としている。その上で23年にキャスパー ユンカーと良い連係を見せたマテウスには攻撃のクリエイターとしての期待もかけられているとみられ、永井謙佑との超高速トリデンテには新加入の浅野雄也や韋駄天・中山克広らの加勢を得てさらに威力を増す。

マテウスは昨年にアキレス腱断裂の重傷を負ったが治療後の経過は良好だと言い、「今はすごく良い感覚。10日前ぐらいまではチームと一緒に練習していたし。コンディションにも問題はまったくない」と自信を見せた。さらには負傷後のケアにも相当に気を遣っているといい、「リハビリも継続しているし、食生活もしっかり管理してなるべく自分の体重を増やさないようにしている」と、患部への負担を軽減する努力も欠かさない。確かに見た目としては前回所属時よりも絞ったようにも見え、しかし上半身の筋肉の密度のようなものは増しているようにも見えた。30歳となったが負傷からの回復含め「自分のスタイルは変えたくない」と言い、あの理不尽なまでのミドルシュートも今季は楽しみにできそうだ。



サウジアラビアにいる間に父親となったマテウスだが、日本復帰には「自分が大好きなこの文化の中で育てたい」という思いもあった。19歳でブラジルから大宮に移籍し、以来ずっと日本での暮らしを続けてきたマテウスにとって日本はもはや第2の母国。名古屋を出る際にも「必ず戻る」と言って、それが実現できたことにも喜びを語る。名古屋でのキャリアの中では横浜FMへの期限付き移籍の際にリーグ優勝を経験しており、21年のJリーグYBCルヴァンカップ優勝も経験。タイトル獲得の味を知る男の加入はその意味でも頼もしく、「まず自分の目標は試合がスタートする時の11人の中にはいたい(笑)」と冗談めかしつつ、「攻撃のポジションならどこでプレーしてもチームに貢献したいし、ファミリーの皆さんにしっかりと喜びを運んでいきたい」と勝利の伝道者となることを誓った。

遠く中東でも名古屋の試合はできるだけチェックしていた背番号10は、「個人的にはすごく強いチームだなと感じている」と昨季のチームを評価する。その主力が残り、補強にも成功した上でのマテウス加入はクラブの本気度を感じずにはいられない。「自分は必死で100%を出しきる思いだけど、チームメイトたちも絶対に100%を出しきる思いでいると思う」。勝つために必死な選手と、勝つために必死なクラブが揃った今、今季の名古屋は優勝候補に自ら名乗りをあげたといっても過言ではない。

Reported by 今井雄一朗