23年ぶりのタイトル獲得(リーグ戦では初の年間王者)とJ2昇格という最高の結果を得た今季の清水エスパルス。その過程で、もうひとつ非常に大きな収穫があった。
それは、ファン層の拡大という側面だ。
“Jリーグバブル”と言われたリーグ創設当初の1993~95年は平均1万8千人超えが3年間続いたが(94、95年は1万9千人以上)、バブルが弾けてから97年に初めて1万人を割った(平均9,888人)。その後はチーム成績の向上と共に回復し、2001年に1万5千人台に。さらに03年には1万6千人を超えたが、チーム成績の低迷に伴って再び漸減していった。
だが、2005年にクラブのレジェンド=長谷川健太監督が就任し、2年目(06年)から毎年着実に集客が増えて、長谷川体制最後の2010年には歴代4位の平均18,001人を記録した。この年は岡崎慎司、小野伸二、ヨンセン、藤本淳吾、本田拓也、兵働昭弘らをはじめ錚々たる顔ぶれが名を連ね、伊東輝悦、市川大祐らのレジェンドも健在で、90年代の黄金期に続いてエスパルス人気が非常に盛り上がっていた。
今季はその時代にあと250人まで迫る入場者数を記録したのだから大きな価値がある。
また女性ファンからの「かわいいグッズが増えた」という声もあり、ホームゲームで大規模に出店しているオフィシャルショップの売上も着実に伸びているという。2020年に山室晋也社長が就任してから公式グッズの開発・販売体制の改革を図り、時代のニーズの合った商品を増やしてきた成果も表われている。
自分好みのコスチュームやグッズを身につけ、スタンドで仲間と一緒にチームと推しの選手を応援する。スタジアムグルメも楽しむ。数年前にプロ野球で話題になった“カーブ女子”のような楽しみ方をする若い層が増えているとすれば、スタジアムの魅力の向上という意味で非常に良い流れと言える。
そのうえでチームが勝って歓喜を味わい、勝ちロコで盛り上がることができれば、「また来たい!」という人が増えるのも当然のことだ。
清水には、高校サッカーで静岡勢が圧倒的な力を示していた時代からのコアなファンも多く、長年根強く応援し続けている人が多いことも大きな強みと言える。ただ、そうした層に頼るだけでなく、新たな顧客層を開拓することも重要なミッションだという点はクラブとしても十分に認識している。そのためにSNSやスマホアプリによる情報発信などさまざまな施策に取り組んでいる成果が少しずつ表われていることは、フロントスタッフの大きなモチベーションにもつながるだろう。
「今日も18,000人以上のサポーターファミリーに集まっていただき、1年間の総入場者数が33万人以上だと聞きました。これがエスパルスの持つ歴史と伝統、サポーターファミリーの偉大さだと思う。その方々に感謝申し上げるとともに、その方々の力があったからこそのJ2優勝、22年ぶりのタイトルだと思うし、静岡をあげて、更に言えばエスパルスを愛するすべて方々の力をあげて2024年シーズンを戦うことができたと思っています」
今季の最終節・熊本戦に勝利した後、秋葉忠宏監督はまず感謝の言葉を口にした。
ただ、J1の舞台で今季ほどのホームでの強さを維持するのは容易ではない。今季手にした「勝負強さ」を来季のJ1でどれだけ発揮できるか。結果とは別にどれだけサポーターの心を揺さぶる戦いができるか。「また来たい」と思えるスタジアムの雰囲気を作っていけるか。そのうえでJ1に残れるか。
今の良い流れを継続・進化させていくという意味では、来季のミッションは今季以上にハードルが高いものになるかもしれない。
Reported by 前島芳雄
それは、ファン層の拡大という側面だ。
長谷川健太監督時代に迫る人気が
今季の清水は、聖地アイスタで15勝2分1敗と無類の強さを発揮し、それが集客増にもつながって、ホームゲームの平均入場者数は17,750人に増加(前年比3千人以上プラス)。これは2011年以降ではJ1での数字も上回って最多となった。“Jリーグバブル”と言われたリーグ創設当初の1993~95年は平均1万8千人超えが3年間続いたが(94、95年は1万9千人以上)、バブルが弾けてから97年に初めて1万人を割った(平均9,888人)。その後はチーム成績の向上と共に回復し、2001年に1万5千人台に。さらに03年には1万6千人を超えたが、チーム成績の低迷に伴って再び漸減していった。
だが、2005年にクラブのレジェンド=長谷川健太監督が就任し、2年目(06年)から毎年着実に集客が増えて、長谷川体制最後の2010年には歴代4位の平均18,001人を記録した。この年は岡崎慎司、小野伸二、ヨンセン、藤本淳吾、本田拓也、兵働昭弘らをはじめ錚々たる顔ぶれが名を連ね、伊東輝悦、市川大祐らのレジェンドも健在で、90年代の黄金期に続いてエスパルス人気が非常に盛り上がっていた。
今季はその時代にあと250人まで迫る入場者数を記録したのだから大きな価値がある。
“エスパルス女子”も増えて
その要因のひとつに、新規の若いサポーターが増えていることが挙げられる。正確なデータはないが、周辺から「若い人が増えた」という声をよく聞き、筆者がスタンドやスタジアム周辺を見ても、同様の印象を受けている。また女性ファンからの「かわいいグッズが増えた」という声もあり、ホームゲームで大規模に出店しているオフィシャルショップの売上も着実に伸びているという。2020年に山室晋也社長が就任してから公式グッズの開発・販売体制の改革を図り、時代のニーズの合った商品を増やしてきた成果も表われている。
自分好みのコスチュームやグッズを身につけ、スタンドで仲間と一緒にチームと推しの選手を応援する。スタジアムグルメも楽しむ。数年前にプロ野球で話題になった“カーブ女子”のような楽しみ方をする若い層が増えているとすれば、スタジアムの魅力の向上という意味で非常に良い流れと言える。
そのうえでチームが勝って歓喜を味わい、勝ちロコで盛り上がることができれば、「また来たい!」という人が増えるのも当然のことだ。
清水には、高校サッカーで静岡勢が圧倒的な力を示していた時代からのコアなファンも多く、長年根強く応援し続けている人が多いことも大きな強みと言える。ただ、そうした層に頼るだけでなく、新たな顧客層を開拓することも重要なミッションだという点はクラブとしても十分に認識している。そのためにSNSやスマホアプリによる情報発信などさまざまな施策に取り組んでいる成果が少しずつ表われていることは、フロントスタッフの大きなモチベーションにもつながるだろう。
「今日も18,000人以上のサポーターファミリーに集まっていただき、1年間の総入場者数が33万人以上だと聞きました。これがエスパルスの持つ歴史と伝統、サポーターファミリーの偉大さだと思う。その方々に感謝申し上げるとともに、その方々の力があったからこそのJ2優勝、22年ぶりのタイトルだと思うし、静岡をあげて、更に言えばエスパルスを愛するすべて方々の力をあげて2024年シーズンを戦うことができたと思っています」
今季の最終節・熊本戦に勝利した後、秋葉忠宏監督はまず感謝の言葉を口にした。
ただ、J1の舞台で今季ほどのホームでの強さを維持するのは容易ではない。今季手にした「勝負強さ」を来季のJ1でどれだけ発揮できるか。結果とは別にどれだけサポーターの心を揺さぶる戦いができるか。「また来たい」と思えるスタジアムの雰囲気を作っていけるか。そのうえでJ1に残れるか。
今の良い流れを継続・進化させていくという意味では、来季のミッションは今季以上にハードルが高いものになるかもしれない。
Reported by 前島芳雄