明治安田J1リーグ連覇に成功したヴィッセル神戸から優秀選手賞が9人(GK前川黛也、DFマテウストゥーレル、DF山川哲史、DF酒井高徳、MF扇原貴宏、MF井手口陽介、FW宮代大聖、FW大迫勇也、FW武藤嘉紀)も選ばれた。うち、武藤、大迫、トゥーレルの3人はベストイレブンに選出され、13ゴール7アシストと活躍した武藤がMVPに輝いた。武藤のMVP受賞は今回が初。神戸としては昨シーズンの大迫に続き、2人目の快挙となった。
一方でシーズンを通して最もチームに貢献した選手に贈られるクラブMVPの「三木谷良一賞」は、アカデミー出身の山川哲史が初受賞となった。失礼ながら、この賞はJリーグMVPほどの華やかさはない。だが、クラブとしては大きな意味を持ち、受け取る選手たちも何かを感じ取る賞である。
賞の創設は2013年。2度目のJ2を戦ったシーズンに生まれた。最初の受賞者はアカデミー育ちの小川慶治朗である。翌年は森岡亮太(2014)、その後は岩波拓也(2015)、渡邉千真(2016)、田中英雄(2017)、三原雅俊(2018)、山口蛍(2019)、アンドレス イニエスタ(2020)、酒井高徳(2021)、汰木康也(2022)と続き、そしてJ1初優勝の2023年は大迫勇也と佐々木大樹のダブル受賞となった。
選考基準は「シーズンを通して最もチームに貢献した選手」だが、歴代受賞者を見ると“これからも神戸をよろしくね”といったニュアンスが感じ取れる。神戸のエースナンバー「13」を背負った小川しかり、10番の森岡、当時アカデミー最高傑作といわれた岩波も長く神戸でプレーしている。2人に関しては今シーズンに出戻っており、長く神戸に関わっている選手でもある。さらに山口と酒井も今年で6シーズン目。佐々木に至っては神戸U-18から数えれば在籍10年目である。これからもチームに貢献してほしい選手に贈られる賞という見方もできそうだ。
そう考えれば、山川哲史の受賞も納得がいく。まず神戸U-15、神戸U-18、筑波大学を経て神戸のトップチーム入りという経歴がある。そして今シーズンは不動のセンターバックとして37試合に先発出場し、リーグ連覇に大きく貢献している。キャプテン山口が長期離脱した間は「蛍さんが戻ってきた時に優勝を狙える位置にいられるように」という強い覚悟でリーダーシップを発揮していた。さらに連覇へ向けての正念場となった11月のジュビロ磐田戦と東京ヴェルディ戦では2試合連続ゴールで優勝を手繰り寄せている。そして何より、山口がシーズン最後のセレモニーで次期キャプテンに指名した男である。山口はスタジアムのファン・サポーターに向けてこう話した。
「テツ(山川哲史)には、神戸のレジェンドであるクニさん(北本久仁衛)のように、長くヴィッセル神戸を支えてほしいと思います。そして皆さんに、時には厳しく、暖かく見守っていただければと思います」
それを受けて山川はこんな感想を述べている。
「(キャプテン指名の話は)セレモニーの場で初めて聞きました。責任重大だなと思いました。神戸を引っ張るのは大変だと思いますが、蛍さんから託されたからには頑張ろうと思いました。(シーズン中に)チームがうまくいっていない時にどうするべきかを蛍さんに聞いたことがあります。今年はシーズンを通して勝てる試合が多かったのですが、うまくいかない時はキャプテンがどう振る舞うかが大事だと言われました。来シーズン、自分がどうなっているかわからないけど、自分がしっかりとチームを引っ張っていけるようになっていかないといけない、より成長しないといけないと思いました」
「三木谷良一賞」の受賞についてはこんな答えが返ってきた。
「みんなは(宮代)大聖が獲ると話していましたし、僕も大聖かトゥーレルかなと思っていた。それこそプレーじゃない面も評価していただいたのかなと思います。個人的には大満足できたシーズンではなかったですし、むしろ課題がたくさん出たシーズンだったので、(受賞して改めて)もっともっと成長していかないといけないなと強く思いました」
原稿作成時点では山川が来シーズンも神戸でプレーするという保証はない。キャプテンになるかも不明だ。それでも三木谷良一賞を受賞し、山口蛍からキャプテンを託されたのは事実であり、歴代受賞者と同じく神戸を“長く”引っ張る存在であってほしいという願いが込められているようにも感じる。なんとも興味深い、今年の三木谷良一賞だった。
Reported by 白井邦彦
一方でシーズンを通して最もチームに貢献した選手に贈られるクラブMVPの「三木谷良一賞」は、アカデミー出身の山川哲史が初受賞となった。失礼ながら、この賞はJリーグMVPほどの華やかさはない。だが、クラブとしては大きな意味を持ち、受け取る選手たちも何かを感じ取る賞である。
賞の創設は2013年。2度目のJ2を戦ったシーズンに生まれた。最初の受賞者はアカデミー育ちの小川慶治朗である。翌年は森岡亮太(2014)、その後は岩波拓也(2015)、渡邉千真(2016)、田中英雄(2017)、三原雅俊(2018)、山口蛍(2019)、アンドレス イニエスタ(2020)、酒井高徳(2021)、汰木康也(2022)と続き、そしてJ1初優勝の2023年は大迫勇也と佐々木大樹のダブル受賞となった。
選考基準は「シーズンを通して最もチームに貢献した選手」だが、歴代受賞者を見ると“これからも神戸をよろしくね”といったニュアンスが感じ取れる。神戸のエースナンバー「13」を背負った小川しかり、10番の森岡、当時アカデミー最高傑作といわれた岩波も長く神戸でプレーしている。2人に関しては今シーズンに出戻っており、長く神戸に関わっている選手でもある。さらに山口と酒井も今年で6シーズン目。佐々木に至っては神戸U-18から数えれば在籍10年目である。これからもチームに貢献してほしい選手に贈られる賞という見方もできそうだ。
そう考えれば、山川哲史の受賞も納得がいく。まず神戸U-15、神戸U-18、筑波大学を経て神戸のトップチーム入りという経歴がある。そして今シーズンは不動のセンターバックとして37試合に先発出場し、リーグ連覇に大きく貢献している。キャプテン山口が長期離脱した間は「蛍さんが戻ってきた時に優勝を狙える位置にいられるように」という強い覚悟でリーダーシップを発揮していた。さらに連覇へ向けての正念場となった11月のジュビロ磐田戦と東京ヴェルディ戦では2試合連続ゴールで優勝を手繰り寄せている。そして何より、山口がシーズン最後のセレモニーで次期キャプテンに指名した男である。山口はスタジアムのファン・サポーターに向けてこう話した。
「テツ(山川哲史)には、神戸のレジェンドであるクニさん(北本久仁衛)のように、長くヴィッセル神戸を支えてほしいと思います。そして皆さんに、時には厳しく、暖かく見守っていただければと思います」
それを受けて山川はこんな感想を述べている。
「(キャプテン指名の話は)セレモニーの場で初めて聞きました。責任重大だなと思いました。神戸を引っ張るのは大変だと思いますが、蛍さんから託されたからには頑張ろうと思いました。(シーズン中に)チームがうまくいっていない時にどうするべきかを蛍さんに聞いたことがあります。今年はシーズンを通して勝てる試合が多かったのですが、うまくいかない時はキャプテンがどう振る舞うかが大事だと言われました。来シーズン、自分がどうなっているかわからないけど、自分がしっかりとチームを引っ張っていけるようになっていかないといけない、より成長しないといけないと思いました」
「三木谷良一賞」の受賞についてはこんな答えが返ってきた。
「みんなは(宮代)大聖が獲ると話していましたし、僕も大聖かトゥーレルかなと思っていた。それこそプレーじゃない面も評価していただいたのかなと思います。個人的には大満足できたシーズンではなかったですし、むしろ課題がたくさん出たシーズンだったので、(受賞して改めて)もっともっと成長していかないといけないなと強く思いました」
原稿作成時点では山川が来シーズンも神戸でプレーするという保証はない。キャプテンになるかも不明だ。それでも三木谷良一賞を受賞し、山口蛍からキャプテンを託されたのは事実であり、歴代受賞者と同じく神戸を“長く”引っ張る存在であってほしいという願いが込められているようにも感じる。なんとも興味深い、今年の三木谷良一賞だった。
Reported by 白井邦彦