「来季は、環境面やクラブ規模、予算規模(の壁)をぶっ壊す」
11月26日(火)、公式戦が終わってからも続けていた練習をこの日で締めくくった後、須藤大輔監督は来季に向けてこうぶち上げた。
だからこそ、その後7試合勝ちなし(1分6敗)と大失速したことは非常に残念だった。またその過程では、やってはいけないミスからの失点、一瞬の隙から失点してしまうリスク管理の不足、失点後の精神的な落ち込みやゲームコントロールの不足、引いて守りを固めた相手の攻略……など、以前からチーム全体で取り組んできた課題が十分に解消されていないことも浮き彫りになった。
それらは選手の個の能力と関わる面も多い。たとえば、藤枝スタイルで勝ち切るために須藤監督がセンターバックに求める要求は非常にレベルが高い。ロングボールやクロスを跳ね返す強さと高さ、裏へのランニングに対応するスピードや予測力、相手のカウンターを止める1対1の強さとリスク管理能力……といった守備の高い要求をクリアしたうえで、攻撃ではボランチ並みのビルドアップ能力が求められる。それらを完璧にこなせるセンターバックはJ1でも希であり、言い方は悪いが年俸も相当高い。
それを須藤監督自身も痛感しているからこそ、「予算規模をぶっ壊す」という発言にもつながっている。
「もちろん1人1人の成長は今まで以上に促していくし、レベルアップできるようなメニューをこのオフ期間で構築していきたいと思います。その中で、1回失敗したからといってチャレンジをやめるんじゃなくて、2回3回4回5回6回とやり続けていく。ミスに対する減点方式で選手を評価するんじゃなくて、チャレンジし続ける選手を評価していく。逆にトライしない選手は減点していく。開幕が近づいたらバランスを整えていく必要がありますが、そういうやり方でいかないと(個の力)は伸びないと思います」
「もうひとつは、さすがに全部を完璧にはできないと思うので、その場合はできるようなやり方も取り入れていく。たとえば、センターバックがここにパスを入れられないなら、違うところから入れるように、周りが2つ目3つ目の出口を用意するといったことです」
理想を追求することは絶対にあきらめないが、その過程で現実に対応するためのセカンドプランも柔軟に取り入れていく。そこも須藤監督らしいところだ。
「J2ではここから上を目指すという選手が多い中で、僕の『もっとできるんじゃないか』という期待とのギャップが今季は出てきたと思うので、そこはもう一度バランスをとっていきたいです。ただ、そこで僕も選手も逃げちゃいけないと思うんですよ。できないからやめようじゃなくて、できないからできるようにする。そこにプラスして、できないんだったらできるようにする違う道筋の方策を考えていきます」
「今年は、我々らしい超攻撃的なところ、ギラギラ感とか野心というのが薄らいでいたと感じるんですよ。最後のなかなか勝てなかった時期には『J2ってこういうサッカーだよね』という感じが少し見えてしまったなと。やりたいこと、やれることが増えたのは良いことだけど、一番大きい引き出しよりも、脇のほうの小さい引き出しばかり出していたというか。でも、オレらは違うでしょと。やっぱり自分たちの一番大きい引き出しを使って、原点回帰した藤枝スタイルでビッグクラブとも真っ向勝負していくのが来年の目標です。もう一度大風呂敷を広げようかなと思っています」
自らを「ロマンチスト」と語る野心家は、現実を見ることも重要なJ2のタフな戦いを2年間経験したうえで、「J3時代からずっと言ってきた強がり」をあえて貫こうとしている。
「とにかく弱気にならないこと。できないからやっぱりやめようとか、ブレるんじゃなくて、逆に原点回帰にこだわるということを来年はやっていきたいです。そういうサッカーって夢があると思うんですよね」
今季は厳しい現実も突きつけられたが、“須藤節”はトーンダウンするどころか、ますます血気盛んになっている。来年も我々をワクワクさせ、楽しい夢を見させてくれることだろう。
Reported by 前島芳雄
11月26日(火)、公式戦が終わってからも続けていた練習をこの日で締めくくった後、須藤大輔監督は来季に向けてこうぶち上げた。
個の力の制約も見えた2024シーズン
2024年シーズンの結果は、14勝4分20敗(勝点46)と負け越して、昨季より1つ低い13位。ただ、31節終了時点では6位に勝点2差まで迫り、J1昇格への最初のハードルであるプレーオフ進出にも現実味が出始めていた。サッカーの内容から見ても、それは十分に可能だという感触は間違いなくあった。だからこそ、その後7試合勝ちなし(1分6敗)と大失速したことは非常に残念だった。またその過程では、やってはいけないミスからの失点、一瞬の隙から失点してしまうリスク管理の不足、失点後の精神的な落ち込みやゲームコントロールの不足、引いて守りを固めた相手の攻略……など、以前からチーム全体で取り組んできた課題が十分に解消されていないことも浮き彫りになった。
それらは選手の個の能力と関わる面も多い。たとえば、藤枝スタイルで勝ち切るために須藤監督がセンターバックに求める要求は非常にレベルが高い。ロングボールやクロスを跳ね返す強さと高さ、裏へのランニングに対応するスピードや予測力、相手のカウンターを止める1対1の強さとリスク管理能力……といった守備の高い要求をクリアしたうえで、攻撃ではボランチ並みのビルドアップ能力が求められる。それらを完璧にこなせるセンターバックはJ1でも希であり、言い方は悪いが年俸も相当高い。
それを須藤監督自身も痛感しているからこそ、「予算規模をぶっ壊す」という発言にもつながっている。
正攻法と裏技を融合させながら
では、現実に壁をぶち壊すために、どのようなやり方を考えているのだろうか。「もちろん1人1人の成長は今まで以上に促していくし、レベルアップできるようなメニューをこのオフ期間で構築していきたいと思います。その中で、1回失敗したからといってチャレンジをやめるんじゃなくて、2回3回4回5回6回とやり続けていく。ミスに対する減点方式で選手を評価するんじゃなくて、チャレンジし続ける選手を評価していく。逆にトライしない選手は減点していく。開幕が近づいたらバランスを整えていく必要がありますが、そういうやり方でいかないと(個の力)は伸びないと思います」
「もうひとつは、さすがに全部を完璧にはできないと思うので、その場合はできるようなやり方も取り入れていく。たとえば、センターバックがここにパスを入れられないなら、違うところから入れるように、周りが2つ目3つ目の出口を用意するといったことです」
理想を追求することは絶対にあきらめないが、その過程で現実に対応するためのセカンドプランも柔軟に取り入れていく。そこも須藤監督らしいところだ。
「J2ではここから上を目指すという選手が多い中で、僕の『もっとできるんじゃないか』という期待とのギャップが今季は出てきたと思うので、そこはもう一度バランスをとっていきたいです。ただ、そこで僕も選手も逃げちゃいけないと思うんですよ。できないからやめようじゃなくて、できないからできるようにする。そこにプラスして、できないんだったらできるようにする違う道筋の方策を考えていきます」
「もう一度大風呂敷を広げようかなと」
そのうえで、来季のもうひとつのテーマにしているのが「原点回帰」だ。「今年は、我々らしい超攻撃的なところ、ギラギラ感とか野心というのが薄らいでいたと感じるんですよ。最後のなかなか勝てなかった時期には『J2ってこういうサッカーだよね』という感じが少し見えてしまったなと。やりたいこと、やれることが増えたのは良いことだけど、一番大きい引き出しよりも、脇のほうの小さい引き出しばかり出していたというか。でも、オレらは違うでしょと。やっぱり自分たちの一番大きい引き出しを使って、原点回帰した藤枝スタイルでビッグクラブとも真っ向勝負していくのが来年の目標です。もう一度大風呂敷を広げようかなと思っています」
自らを「ロマンチスト」と語る野心家は、現実を見ることも重要なJ2のタフな戦いを2年間経験したうえで、「J3時代からずっと言ってきた強がり」をあえて貫こうとしている。
「とにかく弱気にならないこと。できないからやっぱりやめようとか、ブレるんじゃなくて、逆に原点回帰にこだわるということを来年はやっていきたいです。そういうサッカーって夢があると思うんですよね」
今季は厳しい現実も突きつけられたが、“須藤節”はトーンダウンするどころか、ますます血気盛んになっている。来年も我々をワクワクさせ、楽しい夢を見させてくれることだろう。
Reported by 前島芳雄