明治安田J3リーグ第38節。大宮アルディージャはホームにカターレ富山を迎えた。シーズン最終戦であると同時に“大宮アルディージャ”としての最後の戦いでもある大きな節目の一戦は、同時に、ある若武者にとっての大切な第一歩となった。プロ2年目、阿部来誠がJリーグデビューを果たした。
昨年天皇杯でプロデビュー済み、今年も同様にカップ戦には出場しているが、リーグ戦はベンチ入りにとどまっていた。そして、今季3度目のベンチ入りとなったこの試合、79分についに声が掛かった。
「チャンスはあると思った。2点取るにも十分時間はあったと思うし、やってやろうという気持ちで入りました」
阿部の投入と同時に4-4-2にシステム変更、自身は左サイドハーフに入り、カットインからのクロス、そしてシュートを狙った。コーナーキックのキッカーも務め、アディショナルタイムにはミドルシュートを放つが、ミートしきれずにゴールを逸れていった。
チームは敗戦、個人としても得点やアシストはなく、結果を出せずに終わったデビュー戦だったかもしれない。だが、日々の奮闘、苦悩が導いたデビューであることに間違いはなく、そこにこそ意義がある。
「試合に絡めなくて悔しい気持ちはずっとあったんですけど、やっぱり練習をしっかりやらないと成長はないと思う。(長澤)徹さん(監督)に教えてもらったことだったり、いろいろ取り組んでやってきました」
ある日の練習試合、ゴール前へのクロスボールに頭から飛び込んでいく阿部を見た。前線からの守備にも労を厭わず、ガツガツと食いついていく。アカデミー時代は、その高い技術からきれいなプレーが目立った選手だったが、むしろ泥臭く戦う姿に成長を感じた。
「気持ちの部分は大きいかなと思います。どんな形でもチームを勝たせる、そういう気持ちがプレーに出たのかな」
その成長を、来年はより多く実戦の場で見たい。それはもちろん阿部自身の気持ちでもある。
「やっぱりリーグに絡みたいです。1試合でも多く絡んでチームを勝たせられるように、まずは練習から心掛けてやっていきたいです」
クラブが大きく変わる2025年、阿部にとっても変革の年となるか。注目したい。
Reported by 土地将靖