その日の高木俊幸の話の内容は思いがけないものだった。高木にとってジェフユナイテッド千葉に加入して3シーズン目の2024年は、明治安田J2リーグ開幕前のちばぎんカップでスタメン出場したものの、J2リーグではなかなかスタメンになれない日々が続いていた。しかし、第18節で今季初スタメンを飾り3試合連続でベンチ入りを果たしている中で迎えた、第21節の栃木戦に向けた6月20日のオンラインでの囲み取材で、高木は筆者以外の記者の質問に自分の調子の悪さの一因にメンタル面の影響をあげた。どのように影響したのか筆者が聞くと、こう答えた。
「さかのぼると去年からになってしまうかもしれないですけど、自分としても結果を追い求めたシーズンで結果がなかなか出せなかった。決められたようなシュートチャンスも決められなかったっていうところで、ネガティブな気持ちになっていってしまって、その悪循環でどんどん抜け出せなくなったというか。気持ちを新たに今年はそういう部分を一回リセットして入ったつもりではあったし、今年の入りはちばぎんカップにスタメンで出場して試合も勝って、いい部分も出せていたというのはあったんです。でも、トレーニングをやっていく中でコンディションのばらつきもまだまだ最初の頃はあって、気持ちと体がなかなかつながらなかったというところもありつつ、自分の中でうまくいかない状況に対して何かどんどんネガティブになってしまっていった部分があったかなと思います」
それでも、高木曰く「最低ライン」のプレーはできるようになり、トレーニングの出来を評価した小林慶行監督はスタメンで起用した。
「けっこう長いのかな。プロとしては16年目で、それなりにやってきているシーズンの中で、ここ数試合出るまでは本当にきついシーズンというか、自分の中でも本当にメンタル的にこたえたというか、きつい時期だった。でも、何とか周りの人に支えてもらいながら(苦笑)、腐らずにというか投げずに一生懸命、今、やっとこうやって少し試合に出られるようにまではなったので。自分も頑張ってここまでこられたという部分では評価できるし、そういう部分がまた一つ成長できたというか自信につながったなと思います」
その高木のプレーで目についたのは、第20節・徳島戦の33分に髙橋壱晟のサイドチェンジのパスをフリーで受け、少し遠目ながらも思い切りよく右足を振り抜いたシュートだった。ワンバウンドのシュートは徳島のGKにセーブされたが、千葉はCKを得た。
千葉加入1年目の高木は2シャドーの右サイドで出場し、果敢にシュートを打ってゴールを狙う姿が目立っていた。しかし、尹晶煥前監督から小林監督に代わった昨シーズンは、起用されるのがサイドハーフというポジションの違いがあるとはいえ、シュートを打てそうに見えた場面でもクロスを選択するのが目立った。「素人意見で申し訳ないが」と前置きして、筆者は昨季にプレーが変わったこと、そして第20節で見せた果敢なロングシュートについて、何が変わったのか尋ねた。ポジションの違いによる攻撃時の立ち位置、それによるシュートの打ちやすさという前提も踏まえて、高木は次のように打ち明けた。
「意識的なところで、やっぱりどうしてもシュートを打つことに対して、外すことが、何かものすごくナーバスになっていた部分はありました。それもあって自然にというか、クロスに逃げていたわけではないですけど、振り返ると何となくそういう傾向にあったのかなと思うところがあります。でも、自分の持ち味はもちろんカットインでシュートと思っているので、それをどうやって出していくかが課題というか。気持ち的にはシュートを打ちたい、点を取りたいというのはもちろんあって、(第20節)徳島戦で出したようなシュートもあるんですけど、あれもまだまだ距離的には少しゴールから遠いので、(決まる)確率はすごく高いわけではないから、ゴールの確率を上げるためにもっとペナルティエリアの近くやペナルティエリアの中に入ってどうやってフィニッシュに絡むかというところを、今の課題としています」
ベテランに近い年齢のプロ選手でも、シュートを外すことにナーバスになるものなのか。意外に思いながらも、正直な心境を語ってくれたことに筆者は感謝した。
第21節以降はまたスタメンから外れ、今シーズンを通して出場機会がなかなか巡ってこなかった高木。しかし、スタメン出場した第24節、天皇杯準々決勝では苦しい試合展開の中、タッチラインを割りそうなボールに追いついてマイボールにしたり、競り合いで体を張ったり、無回転気味のシュートを打ったりと、気持ちのこもったプレーを披露した。だが、11月3日、クラブから高木の契約満了が発表され、高木は千葉を去ることとなった。
高木の試合後のコメントには毎回、千葉が強くなっていくうえでポイントになるのではないかと思われるものがある。第24節の試合後にはこんなことを言っていた。
「自分たちのプレーの質が低かったから、そのぶん余計に走らなければいけなかった。熊本の選手のほうがやっぱり何となくサッカーを楽しめているのかな。そういう差というか、違いもあるかなと思う。熊本と対戦すると、厳しさももちろん大事だけど、相手の逆を取るとか、そういうアイデアの部分で楽しんでいるのかなとよく感じます」
今後の高木の動向はまだ不明だが、彼がサッカーを楽しめることを願いたい。そして、今季はJ1昇格プレーオフ進出を逃した千葉には、サッカーを楽しみながら勝っていける、そういった強さを身に着けてほしい。
Reported by 赤沼圭子
「さかのぼると去年からになってしまうかもしれないですけど、自分としても結果を追い求めたシーズンで結果がなかなか出せなかった。決められたようなシュートチャンスも決められなかったっていうところで、ネガティブな気持ちになっていってしまって、その悪循環でどんどん抜け出せなくなったというか。気持ちを新たに今年はそういう部分を一回リセットして入ったつもりではあったし、今年の入りはちばぎんカップにスタメンで出場して試合も勝って、いい部分も出せていたというのはあったんです。でも、トレーニングをやっていく中でコンディションのばらつきもまだまだ最初の頃はあって、気持ちと体がなかなかつながらなかったというところもありつつ、自分の中でうまくいかない状況に対して何かどんどんネガティブになってしまっていった部分があったかなと思います」
それでも、高木曰く「最低ライン」のプレーはできるようになり、トレーニングの出来を評価した小林慶行監督はスタメンで起用した。
「けっこう長いのかな。プロとしては16年目で、それなりにやってきているシーズンの中で、ここ数試合出るまでは本当にきついシーズンというか、自分の中でも本当にメンタル的にこたえたというか、きつい時期だった。でも、何とか周りの人に支えてもらいながら(苦笑)、腐らずにというか投げずに一生懸命、今、やっとこうやって少し試合に出られるようにまではなったので。自分も頑張ってここまでこられたという部分では評価できるし、そういう部分がまた一つ成長できたというか自信につながったなと思います」
その高木のプレーで目についたのは、第20節・徳島戦の33分に髙橋壱晟のサイドチェンジのパスをフリーで受け、少し遠目ながらも思い切りよく右足を振り抜いたシュートだった。ワンバウンドのシュートは徳島のGKにセーブされたが、千葉はCKを得た。
千葉加入1年目の高木は2シャドーの右サイドで出場し、果敢にシュートを打ってゴールを狙う姿が目立っていた。しかし、尹晶煥前監督から小林監督に代わった昨シーズンは、起用されるのがサイドハーフというポジションの違いがあるとはいえ、シュートを打てそうに見えた場面でもクロスを選択するのが目立った。「素人意見で申し訳ないが」と前置きして、筆者は昨季にプレーが変わったこと、そして第20節で見せた果敢なロングシュートについて、何が変わったのか尋ねた。ポジションの違いによる攻撃時の立ち位置、それによるシュートの打ちやすさという前提も踏まえて、高木は次のように打ち明けた。
「意識的なところで、やっぱりどうしてもシュートを打つことに対して、外すことが、何かものすごくナーバスになっていた部分はありました。それもあって自然にというか、クロスに逃げていたわけではないですけど、振り返ると何となくそういう傾向にあったのかなと思うところがあります。でも、自分の持ち味はもちろんカットインでシュートと思っているので、それをどうやって出していくかが課題というか。気持ち的にはシュートを打ちたい、点を取りたいというのはもちろんあって、(第20節)徳島戦で出したようなシュートもあるんですけど、あれもまだまだ距離的には少しゴールから遠いので、(決まる)確率はすごく高いわけではないから、ゴールの確率を上げるためにもっとペナルティエリアの近くやペナルティエリアの中に入ってどうやってフィニッシュに絡むかというところを、今の課題としています」
ベテランに近い年齢のプロ選手でも、シュートを外すことにナーバスになるものなのか。意外に思いながらも、正直な心境を語ってくれたことに筆者は感謝した。
第21節以降はまたスタメンから外れ、今シーズンを通して出場機会がなかなか巡ってこなかった高木。しかし、スタメン出場した第24節、天皇杯準々決勝では苦しい試合展開の中、タッチラインを割りそうなボールに追いついてマイボールにしたり、競り合いで体を張ったり、無回転気味のシュートを打ったりと、気持ちのこもったプレーを披露した。だが、11月3日、クラブから高木の契約満了が発表され、高木は千葉を去ることとなった。
高木の試合後のコメントには毎回、千葉が強くなっていくうえでポイントになるのではないかと思われるものがある。第24節の試合後にはこんなことを言っていた。
「自分たちのプレーの質が低かったから、そのぶん余計に走らなければいけなかった。熊本の選手のほうがやっぱり何となくサッカーを楽しめているのかな。そういう差というか、違いもあるかなと思う。熊本と対戦すると、厳しさももちろん大事だけど、相手の逆を取るとか、そういうアイデアの部分で楽しんでいるのかなとよく感じます」
今後の高木の動向はまだ不明だが、彼がサッカーを楽しめることを願いたい。そして、今季はJ1昇格プレーオフ進出を逃した千葉には、サッカーを楽しみながら勝っていける、そういった強さを身に着けてほしい。
Reported by 赤沼圭子