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【取材ノート:神戸】常勝チームへ向け価値ある天皇杯優勝。だが、栄光の“陰”も忘れてはいけない

2024年11月28日(木)
Jリーグ発足後としては初の関西対決となった「天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会(天皇杯)」の決勝戦。ガンバ大阪はエース宇佐美貴史を負傷で欠く中、倉田秋が左サイドで攻撃の起点を作りながら前半を優位に進めた。
一方のヴィッセル神戸はG大阪の攻撃に耐えながら、ボールを奪った後の速い攻めでチャンスを見出す展開。18分には右ウイングの武藤嘉紀がカットインで崩し、宮代大聖へ鋭いスルーパスを送るなど惜しい場面を演出した。

0-0で迎えた後半も流れは変わらず。G大阪がボールを繋ぎながら攻撃を展開する。55分にはカウンターからダワンが決定機を迎えるが、それは神戸の守護神・前川黛也が阻止した。
そんな中、神戸は59分に佐々木大樹をピッチへと送り込む。大迫勇也と合わせて前線に2つの軸が生まれ、流れは徐々に神戸へと傾倒していく。
そして64分。前川のロングフィードを受けた佐々木が潰れながらもボールをつなぎ、大迫がこぼれ球を拾ってすかさず武藤へ。ゴール前に送ったボールは一度ブロックされるが、そのこぼれ球に宮代が反応してゴールへ流し込んだ。今シーズンの神戸を象徴する、畳み掛けるような攻めからのゴールだった。その後は、酒井高徳、山川哲史、マテウス トゥーレル、初瀬亮(本多勇喜)ら最終ラインを中心にG大阪の猛攻をしのいだ神戸。2019年度大会に続く2度目の天皇杯優勝を成し遂げた。


試合後の会見で、吉田孝行監督は「この天皇杯というのはチームのほとんどの選手が出場していて、みんなで勝ちとった決勝戦だった。本当11人、18人だけじゃなくチーム全員で取れたタイトルだと思います」と選手たちを労った。
また、大会全試合の中から最も記憶に残る感動的なシーンを演出した選手に贈られる特別協賛賞「SCO GROUP Award」には、酒井が選ばれた。
試合後、彼は今回のタイトルの意味についてこう話した。
「決勝だけに目が行きがちですけど、今日メンバーに入れなかった選手や、入っていたけど今日の決勝戦は出番がなかった選手たちの頑張りがなければ、この決勝はなかったと思う。本当に、こうなんて言うんですかね、自分もそうですけど、チームとしてもやっぱりそういう人たちの思いをしっかり背負った決勝だっていうことを心に刻んでプレーしていました。その気持ちが出たような勝ち方だったと思います」

5年後や10年後に振り返った時、神戸が常勝チームになる上で“あの天皇杯のタイトルは大きかったな”と言える時が来るかもしれない。その時は酒井が話すように、この決勝だけを思い出すのではなく、決勝までの道のりも語ってほしい。GK新井章太や岩波拓也、飯野七聖、山内翔、森岡亮太といった功労者の軌跡もしっかりと語り継いでほしい。そうでなければ、このタイトルの意味は薄れるからである。

Reported by 白井邦彦