あのゴールパフォーマンスには、さまざまな想いが込められていた。
1-1と引き分けた前節・ギラヴァンツ北九州戦。終盤の81分に先制を許すも、試合終了間際の90+5分に田中康介が同点弾を決める。土壇場でチームを救い、アウェイで勝点1を持ち帰った。
「全員の気持ちが乗ったゴールだった」。前節からスタメンを9人変更し、いわゆる“控え組”が主体となって臨んだ一戦。勝てば自力での残留が決まる状況で、14試合ぶりに先発の田中の胸にも期するものがあった。
得点後は鬱憤を晴らすかのように、何度もガッツポーズを繰り返す。その後に遠くを見ながら掲げたのは、ハートポーズとイニシャルの「S」を示すポーズ。体調不良によって離脱しているシュナイダー潤之介GKコーチに向けたものだった。
「ゴールを取ったらハートポーズをするのはシュナさんと選手達との約束でした」
11月19日、田中は自身のSNSでそう呟いた。(田中選手のXより)
同日、クラブはシュナイダーGKコーチの容態を発表。10月23日からチーム活動を休止し、精密検査を受けて前立腺がん(ステージ4)と診断されたという。今後の支援については、明確になった時点で発表される予定だ。
チームは自力での残留こそ逃したものの、翌日に他会場の結果を受けて残留が決定。他力とはいえ、闘病中のシュナイダーGKコーチに吉報を届けることができた。次節はホームで最終節を迎えるが、誰一人として消化試合などとは捉えていない。14試合ぶりの勝利をもって、“仲間”にエールを届けることが至上命題だ。
「僕達が勝つ事が1番の治療薬になると信じてガンと戦う大切な仲間の為に最終戦勝ちましょう。そしてみんなでパワーを送りましょう!」
Reported by 田中紘夢