自身にとっての今季初ゴールは、チームにとっても待望のゴールであった。
11月10日の明治安田J3第36節・大宮戦。1時間早く試合を終えた福島が金沢に勝利(◯1-2)したことで、琉球は引き分け以下に終わるとプレーオフ進出の望みが絶たれるという瀬戸際に立たされていた。当日の沖縄は気温30度まで達し、季節外れの真夏日のデーゲーム。まさに消耗戦となる中、キャプテンマークを巻いた平松昇は虎視眈々とゴールを見据えていた。
「もう後がないというのは理解していたし、大宮相手でもどんどん仕掛けていこうとみんなで声を合わせ、もちろん自分もチャンスを見つけて積極的にゴールを狙うつもりでプレーしました」
気温差20度の地から来た大宮は暑さのせいか出足が鈍く、序盤から受け身の態勢が続いた。その中で琉球は前半だけで13本のシュートを浴びせるも、大宮GK笠原昂史の好セーブに遭い、なかなかゴールをこじ開けきれない。
真夏の日差しを浴び続けたホームチームの足も徐々に鈍り始めた頃、62分。琉球は途中出場の高安孝幸を左WBに置き、同位置でプレーしていた平松がボランチへと移る。その瞬間、「高安がボールを収めたら絶対にクロスが来ると信じて、シュートへの意識をずっと保ちながらスペースへ入り込もうと狙っていました」と、平松は腹をくくる。そして、実際に高安が左サイドで右足を振り抜こうとした瞬間、迷いなく定位置を離れて最前線の大きなスペースへ向かった平松。高木大輔が落とし、足元へ届いたボールを「あとは流し込むだけでした」と、狙いを定めてゴール右隅に決めてみせた。
「ボランチにいるときはここまで上がらなくてもいいんじゃないかって思うこともあったけれど、ジョンソンさん(金鍾成監督)から『個人の判断でどんどん積極的に関わる大事さ』を教えられ、それが結果として自分のゴールにつながったと思います。ジョンソンさんにはいろいろ学ばせてもらって自分自身プレーの幅が広がったと実感しています」。
平松の今季初ゴールによりプレーオフ進出へ一縷の望みをつないだ琉球。しかし後半アディショナルタイムに追いつかれ1-1のドローで終演。この瞬間、2年ぶりの再昇格への道は絶たれた。
それでも「ジョンソンさんの下でどういうサッカーを見せたかったのか。昇格はなくなっても残り試合絶対に気を抜くことはない。僕等の集大成をサポーターへ見せる義務を果たしたいです」と、平松は気持ちを落とすことなく残り2試合を全力で戦う決意だ。
Reported by 仲本兼進