2001年度の天皇杯優勝以来、23年ぶりにビッグタイトルを獲得した今季の清水エスパルス。リーグ戦で年間王者となったのは、クラブ史上初でもあり、J2とはいえクラブとしてもエポックな1年となった。
その背景には、勝点1、得点1の差で昇格を逃した昨年の悔しさがあり、その反省から今季の秋葉忠宏監督は「勝負強さ」の獲得に徹底的にこだわってきた。ピッチ内外で「凡事徹底」を追究し、たとえば練習中のスプリント走でもフライングしないで最後まで全力で走りきる、ピッチ外周のランニングではコーナーでショートカットしない、ロッカールームの掃除や片付けも自主的に行なうといったところまで選手全員に求めてきた。
「そういうところから我慢強さや隙のなさも身につく」=勝負強さにつながるというのが指揮官の信念だったが、それが実際ピッチ上に表われていたのか。今回は考察してみたい。
そして5節で2位に上がると、以降は3位に落ちたのが21~23の3節だけという安定した戦いを続けた。もっとも苦しかったのが、センターバック陣にケガが増えて5~6月にかけてアウェイ4連敗を喫した時期だが、ホームで勝てていたことで大崩れを防ぐことができた。また「距離感が少し間延びしていたところがあって、そこを修正して自分たちの戦い方に立ち返ることができた」(秋葉監督)と苦しい中でチームを成熟させていくこともできた。
以降は再び安定感が出てきたが、25節アウェイ仙台戦に1-2で敗れ、30節・長崎戦と33節・横浜FC戦はどちらも1-1で引き分け。とくに昇格・優勝争いのライバルとなった長崎と横浜FCには共に1分1敗と一度も勝てなかったことは、反町康治GMも課題として挙げた部分だ。
さらに、勝てば自動昇格が決まる可能性があった34節アウェイ水戸戦は、昨年のリベンジマッチでもあったが、前半で2点を先行されて勝ちきれなかった(2-2)。次のホーム山形戦では、75分に北川のゴールで先制しながら、80分と87分に失点して、今季初の逆転負け&ホーム初黒星。大事なところで勝ちきれないという昨年の課題が、上位陣との直接対決も含めて何度か見られたことは否めない。
また36節・栃木戦では、負ければJ3降格が濃厚になる栃木の気迫に苦しめられながらも、50分に住吉ジェラニレショーンがCKから先制点を決め、83分に北川が退場になったが、8分間のアディショナルタイムでも10人で身体を張って守りきって1-0。2節残して悲願のJ1昇格をつかみ取った。
続く37節・いわき戦でも蓮川壮大のプロ初ゴールで1-0の完封勝ち。横浜FCが引き分けたことによりJ2優勝が決まった。そして最終節の熊本戦も、フレッシュなメンバーが加わった中、原輝綺のゴールで1-0と有終の美も飾った。ラスト3試合は全てDF陣の得点で1-0の完封勝利。思うようにならない展開でも勝ちきれる底力を発揮した。
「粘り強さ、我慢強さで自分たちから崩れないというところは、日々のトレーニングで選手たちが本当に必死になって戦ってくれたからこその結果だと思います」と秋葉監督は最終節終了後に選手全員を称えた。
シーズンを通して振り返ると、勝負強さがまだ足りないと感じられた試合もあった。だが、それは生みの苦しみの一環でもあり、そこで崩れずに踏みとどまれたことはチームとしての成長を示している。逆に勝負強さが感じられた試合のほうが多く、昨年までと比べて選手とチームが変わってきたことはサポーターも実感しているだろう。
とくにホームゲームでは、昨年は12勝6分3敗だったのに対して今年は14勝3分1敗と、聖地アイスタで無類の強さを発揮。それがサポーターの増加にもつながり、平均入場者数は17,750人で2011年以降では最多。それによってより力強い後押しが得られるという相乗効果が生まれたことにも大きな価値がある。
やはりファン、サポーターは、愛するチームが勝つ試合を観たい。それを提供し続けることでスポンサーの支援やグッズの売り上げ等も含めてクラブの収益が向上し、チームの強化につながる。J1に上がってもその流れを継続していくために、今季の“勝負強さ”をより強化していく努力が欠かせないことは、秋葉監督以下、選手、スタッフが誰よりもわかっている。
Reported by 前島芳雄
その背景には、勝点1、得点1の差で昇格を逃した昨年の悔しさがあり、その反省から今季の秋葉忠宏監督は「勝負強さ」の獲得に徹底的にこだわってきた。ピッチ内外で「凡事徹底」を追究し、たとえば練習中のスプリント走でもフライングしないで最後まで全力で走りきる、ピッチ外周のランニングではコーナーでショートカットしない、ロッカールームの掃除や片付けも自主的に行なうといったところまで選手全員に求めてきた。
「そういうところから我慢強さや隙のなさも身につく」=勝負強さにつながるというのが指揮官の信念だったが、それが実際ピッチ上に表われていたのか。今回は考察してみたい。
スタートダッシュに成功したが、勝ちきれない試合も
まず今季で大きかったのは、開幕の熊本戦で逆転勝ちし、続くホーム開幕戦では北川航也の2得点で愛媛に快勝と、最高のスタートを切れたこと。ここが7節まで未勝利だった昨年と大きく異なる部分だ。その立役者となったのが、初めてキャプテンに任命されたユース育ちの北川であり、食生活も変革させて身体のキレを増し、一際強いチーム愛で周囲を牽引したことが大きかった。そして5節で2位に上がると、以降は3位に落ちたのが21~23の3節だけという安定した戦いを続けた。もっとも苦しかったのが、センターバック陣にケガが増えて5~6月にかけてアウェイ4連敗を喫した時期だが、ホームで勝てていたことで大崩れを防ぐことができた。また「距離感が少し間延びしていたところがあって、そこを修正して自分たちの戦い方に立ち返ることができた」(秋葉監督)と苦しい中でチームを成熟させていくこともできた。
以降は再び安定感が出てきたが、25節アウェイ仙台戦に1-2で敗れ、30節・長崎戦と33節・横浜FC戦はどちらも1-1で引き分け。とくに昇格・優勝争いのライバルとなった長崎と横浜FCには共に1分1敗と一度も勝てなかったことは、反町康治GMも課題として挙げた部分だ。
さらに、勝てば自動昇格が決まる可能性があった34節アウェイ水戸戦は、昨年のリベンジマッチでもあったが、前半で2点を先行されて勝ちきれなかった(2-2)。次のホーム山形戦では、75分に北川のゴールで先制しながら、80分と87分に失点して、今季初の逆転負け&ホーム初黒星。大事なところで勝ちきれないという昨年の課題が、上位陣との直接対決も含めて何度か見られたことは否めない。
交代選手も活躍し、大詰めで勝負強さを発揮
ただ、水戸戦では0-2から北川と矢島のゴールで同点に追いつく粘りを見せ、29節・徳島戦(延期試合)と32節・藤枝戦は2試合連続で逆転勝ち。この時期は、矢島慎也、ドウグラス タンキ、西澤健太といった出番が限られた選手たちが大活躍を見せた。出場機会が少ない選手だちが練習で着実に力をつけ、チャンスを得たときに勝利の原動力となることは、勝負強さのあるチームに欠かせない要素と言える。また36節・栃木戦では、負ければJ3降格が濃厚になる栃木の気迫に苦しめられながらも、50分に住吉ジェラニレショーンがCKから先制点を決め、83分に北川が退場になったが、8分間のアディショナルタイムでも10人で身体を張って守りきって1-0。2節残して悲願のJ1昇格をつかみ取った。
続く37節・いわき戦でも蓮川壮大のプロ初ゴールで1-0の完封勝ち。横浜FCが引き分けたことによりJ2優勝が決まった。そして最終節の熊本戦も、フレッシュなメンバーが加わった中、原輝綺のゴールで1-0と有終の美も飾った。ラスト3試合は全てDF陣の得点で1-0の完封勝利。思うようにならない展開でも勝ちきれる底力を発揮した。
「粘り強さ、我慢強さで自分たちから崩れないというところは、日々のトレーニングで選手たちが本当に必死になって戦ってくれたからこその結果だと思います」と秋葉監督は最終節終了後に選手全員を称えた。
シーズンを通して振り返ると、勝負強さがまだ足りないと感じられた試合もあった。だが、それは生みの苦しみの一環でもあり、そこで崩れずに踏みとどまれたことはチームとしての成長を示している。逆に勝負強さが感じられた試合のほうが多く、昨年までと比べて選手とチームが変わってきたことはサポーターも実感しているだろう。
勝ちきる力がサポーターの増加にも
数字の面で振り返ると、昨年は42試合で78得点/34失点、得失点差+44だったのに対して、今年は38試合で68得点/38失点、得失点差+30。意外にも得失点とも数値が低下しているが、結果は昨年の20勝14分8敗(勝点74)に対して、今年は26勝4分8敗(勝点82)。引き分けを勝ちに持ち込む力、つまり“勝ちきる力”が増したことが優勝につながったと言える。とくにホームゲームでは、昨年は12勝6分3敗だったのに対して今年は14勝3分1敗と、聖地アイスタで無類の強さを発揮。それがサポーターの増加にもつながり、平均入場者数は17,750人で2011年以降では最多。それによってより力強い後押しが得られるという相乗効果が生まれたことにも大きな価値がある。
やはりファン、サポーターは、愛するチームが勝つ試合を観たい。それを提供し続けることでスポンサーの支援やグッズの売り上げ等も含めてクラブの収益が向上し、チームの強化につながる。J1に上がってもその流れを継続していくために、今季の“勝負強さ”をより強化していく努力が欠かせないことは、秋葉監督以下、選手、スタッフが誰よりもわかっている。
Reported by 前島芳雄