明治安田J1リーグも残り2節。優勝争いは首位のヴィッセル神戸、それを勝点3差で追う2位のサンフレッチェ広島、そして首位と勝点5差のFC町田ゼルビアの3チームにしぼられた。
この大事な時期に、神戸はキャプテン山口蛍が怪我から復帰した。前節(36節)の東京ヴェルディ戦では83分からピッチに入り、要所で相手の攻撃の芽を摘むなどブランクを感じさせない動きを見せた。プレー面だけではなく、チームの精神的支柱でもある山口の復帰は正念場が続くシーズン終盤において何よりの追い風になるだろう。J1連覇へのキーマンと言えそうだ。
山口は8月26日の練習中に負傷し、左膝外側半月板損傷および左大腿骨外顆軟骨損傷と診断され、手術に踏み切った。全治10~12週間。その長いリハビリを経て、11月7日の公開練習時には全体練習に合流。「予定よりも状態は良く、思っていたより早く戻ってこられた」と明るい表情を見せていた。
「もともと復帰を焦るつもりはなかったですし、そうじゃないと手術もやっていなかった。シーズンの最後にしっかり戻ってこられる確信があったので手術に踏み切った。34歳ですけど、まだまだJ1でできる自信もあるので、これから先のことを見据えたらベストなタイミングでの手術だったかなと思います」
これが昨シーズンの同じような時期なら怪我への対処も違っていたかもしれない。手術という大きな決断に至った背景にはチームの熟成度も関係があるようだ。
「昨年はほぼ固定メンバーだったと思うんですけど、今年は一時期の(横浜F・)マリノスみたいに試合によって選手を入れ替えても、取りこぼさないチームになってきていると思います。(リハビリ中は)結果も出ていたし、普通に強いなと思って見ていました」
ただ、このシーズン終盤の正念場で山口がピッチに居るのと居ないのとでは大きな違いがあるのも確かだろう。神戸にとってはここに来て“最強の補強”ができたようなものだ。意識していなくても連覇の重圧がかかる残り2節は、山口のキャプテンシーが最も求められる状況と言える。
「(連覇へ向けて)ここで焦ることはないですし、今やっていることを続けてやっていけばいいと思います。シーズンの最初の方は試行錯誤しながら数試合を戦ってあまり結果が出なかったこともあった。でも、今はその経験が実を結んでいると思うし、新しい選手が入って違う攻撃もできていると思う。あまり相手どうこうを考える必要は無いかなと思います。天皇杯決勝(11月23日/国立)で優勝することができれば勢いに乗っていけると思うし、目の前の試合に集中して戦うだけです」
神戸の最短優勝は12月1日。前日のアウェイ柏レイソルに勝利した上で、翌日に広島が引き分け以下ならJ1連覇となる。混戦を極めるタイトルレースにおいて代表ブレイク明けの第37節はいわゆる天王山だ。キャプテン帰還の神戸が連覇に“王手”をかけられるか注目したい。
Reported by 白井邦彦