間違いなく、この日スタジアムが一番盛り上がった瞬間だった。
点の取り合いとなった明治安田J3リーグ第35節、大宮アルディージャ対ガイナーレ鳥取。最終スコア5-4という大乱戦、その大宮の5点目を大澤朋也が決めた場面だ。
ファビアン ゴンザレスの飛び出しに合わせるように、村上陽介が縦パスを送る。右サイドをえぐったところからのマイナスのパスにアルトゥール シルバが走り込んだが、わずかにタイミングが合わない。そこへ遅れて入り込んだ大澤が、ゴールへ正確に流し込んだ。
「目の前にボールが来てくれた。相手GKはボールの方に寄ってたんで、(ゴールは)空いてたんですよ。もうあとは流し込むだけだなって。浮かなくてよかったです」
この日一番の盛り上がりとなったのは、勝ち越しゴールだったからだけではない。当人はもちろん、サポーターも何より待ち望んだ大澤の今季初ゴールだったからだ。
「いろんな人からゴール決めろって言われてたんで、自分の中でもわかってましたし、ほっとしましたね。最近ちょっと寝不足だったんで、ようやく寝れます」
普段は目一杯の明るさで振る舞う大澤だが、見えないところでは悩ましさもあった。
「J3優勝は嬉しかったですけど、自分自身あまり結果を残せてなかった。自分のポジション的にはやはりゴールという結果が欲しかったので、ようやく優勝を喜べます」
それは、ストライカーとしての紛れもない本音だろう。
もっとも、ゴールは決めずとも周囲の評価は低くない。長澤徹監督も「味方に対してスペースをあげる、時間をあげる、そういうプレーを全然厭わずにやりますし、自分で時間を作ったり大きな仕事が数多くできるようになってきているので、(得点は)そのご褒美かな」と、そう言いながらさらなるステップアップに期待を寄せている様子だった。
そこは自身でも自覚している。
「1点だけで満足せずに、あと3試合続くので、もっとゴールやアシストで結果を残していきたいですし、チームが勝つために自分がなすべきことをしっかり考えながらプレーできたらいいなと思ってます」
みんな待ってたよ…取材が終わってそう声を掛けると、笑いながらこう返ってきた。
「いやいや、俺が一番待ってましたよ」
わかっている。また次を、ぜひ――。
Reported by 土地将靖