ただの1点ではなかった。
1-1と引き分けた前節のY.S.C.C.横浜戦。38分、右サイドから黒石貴哉がクロスを上げると、忽那喬司が胸トラップから鮮やかなボレーシュートを決める。立ち上がりから相手を押し込み続ける中で、待望の先制点が生まれた。
黒石から忽那。仲睦まじい2人によるゴールだったが、互いに“ミス”を取り返したことにも大きな価値がある。
第33節・FC琉球戦では、1-0とリードして迎えた最終盤、黒石がまさかのオウンゴールを献上する。続く第34節・アスルクラロ沼津戦でも、忽那のパスミスが相手にかっさらわれ、先制点を許してしまう。2戦連続で1-1のドロー。責任を感じた黒石と忽那は、それぞれ試合後に涙を浮かべていた。
「気にしなくていい」
「次があるから」
琉球戦後、泣き崩れる黒石を前にして、忽那はそう励ます。
逆に沼津戦後には、涙を拭う忽那に対し、黒石がこう声をかけた。
「お前、前に言ってくれたやろ」
「そういうことやから、気負う必要はない」
そして迎えたYS横浜戦。黒石のアシストから、忽那のゴールが生まれる。チームはその後に追いつかれ、3試合連続のドローに終わったが、2人にとっては悔しさをぶつける一発となった。
「前の試合ではみんなに助けられた。この試合は自分が必ずチームを助けるという気持ちがあったし、その気持ちが乗ったゴールだったと思う」とスコアラーの忽那。それに対して黒石は「クヨクヨするタイプではないと分かっていた。気持ちを切らさずにやってくれたと思う」と称える。
チームは3試合を残して17位。J3・JFL入れ替え戦出場枠の19位とは、勝ち点4差しか開いていない。残留争い脱却に向けて、次こそは勝利に繋がる連係を見せたいところだ。
Reported by 田中紘夢