今シーズン途中までは、ボランチの1人として攻守でチームを支える役回りが多かった。しかし7月、チームの基本フォーメーションが3-1-4-2になってからはポジションを1列上げ、インサイドハーフの一角として、より攻撃的にプレーする。
それが、アウェイで首位の大宮アルディージャと対戦した第33節は、それまでアンカーを務めていた山田貴文と入れ替わる形で中盤の底に入った。山田も複数のポジションを高いレベルでこなす。ユーティリティープレーヤーの2人だからこそ可能なマイナーチェンジだった。
服部年宏監督は「大宮の強度に対抗するため」とアンカー起用の理由を明かす。2位でJ2自動昇格に向かって突き進むチームが乗り越えるべき首位との大事な一戦。確かな技術をベースに走れて戦える新井は、中盤の要職を託された。
大宮戦を控えた週の紅白戦でアンカーに入った時間もあったが、本人は先発するとは思っていなかったという。それでも、迷いなく試合に入ることができた。
「全体でプレッシャーを掛けられるときは自分も行ったけれど、インサイドハーフのときよりポジションを空けないように意識した。アンカーだと攻撃のときにビルドアップに関われるし、守備も前向きに行ける。やりがい、楽しさがある」
プロ7年目、FC今治で2シーズン目を戦う25歳のMFは、ロジカルにプレーするだけでなく、人一倍、強い勝利へのこだわりを体現する。今シーズン、チームの副キャプテンの1人を任されるのも納得だ。
大宮戦は先制しながら、後半追いつかれ、引き分け。目の前でJ3優勝を決められた。
「勝ちたかったし、勝つチャンスもあったと思う。それだけに悔しいです。特に前半は優位に試合を進められたし、失点場面の他は大きなピンチもなかった。だからこそ、少しの差が大きな違いになるということを、改めて感じました。残り5試合、少しの隙も作らず戦っていきたい」
目の前の1試合に集中し、全力を尽くす。シーズンも佳境に差し掛かり、チームにみなぎる活力、ポジティブな緊張感を代弁する。
「この空気に飲まれるような選手は、うちにはいないです。受ける重圧以上に、J2に上がりたい気持ちが全員、強いから。ただ、重要なのはそれをどう結果につなげるか。自分たちがやってきたことを、ピッチでしっかり出していくだけです」
与えられたポジションがどこであっても、変わらない熱量で、勝利を目指してチームをけん引する。
Reported by 大中祐二