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【取材ノート:神戸】酒井高徳がユーティリティな理由。ACLEに挑む姿勢にヒントあり

2024年10月23日(水)


「AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)」東地区はリーグステージ3節を終え、光州FC(韓国)が唯一の3連勝(勝点9)で首位に立っている。2位は開幕節でヴィッセル神戸と引き分けたタイ王者ブリーラム・ユナイテッド(勝点7)。神戸は今夜に開催される3節・蔚山HD戦に勝てば2位もしくは3位となる。リーグステージはホーム&アウェーで8試合を行い、12チーム中上位8クラブが次のノックアウトステージへと進出できる。

明治安田J1リーグで優勝争いを演じている神戸にとっては「早くリーグステージ突破を決めたい」(吉田孝行監督)というのが本音だが、一方で酒井高徳は「早く突破することに越したことは無いんですけど、個人的にACLEの戦いは好きなんで…」と国際舞台を思い切り楽しんでいるようだ。

酒井がACLEを好きだという理由は「Jリーグでは味わえない感覚でサッカーできることが楽しいですし、また違った緊張感もある」からだと話す。



「良くも悪くも予想を超えてくるというか、予想外のことをしてくる。そのタイミングでそんなことをしてくるんだぁとかね。イレギュラーなことが起こる中で自分のポジショニングとか、試合展開とか、自分のパフォーマンスを意識してプレーしなくてはいけない。それはなかなかJリーグにはない感覚だと思います。しっかりとしたポジショニングでしっかり守っていれば、(Jリーグでは)あまり誤差はないというか…。それを海外は覆してくる。セオリー通りに守ったら、あぁ違うことをやってくるんだぁとかね。そういう感じの緊張感を持ちながら“いや待てよ、こっちの可能性もあるぞ”とか常に頭が休まない状態で、それは高いレベルのサッカーの証拠だとも思います。チームの完成度がイコールでサッカーの強さとは違うと思っていて、レベルが高くなればなるほど頭の回転とプレーの速さが合わさってくるのがレベルの高いサッカーかなと思っています。それを自分はACLEで楽しんでいる部分はありますね」

昨シーズンを振り返ると、酒井は試合の流れの中で急遽センターバックとしてプレーしたり、山口蛍が負傷離脱した際はボランチでプレーしたりとサッカー選手としての幅の広さを見せてくれた。今シーズンも直近のFC東京戦(34節)では途中からボランチでプレーし、少しチグハグだった攻守の流れを良い方向に修正している。

なぜ酒井は複数のポジションを高い次元でこなせるか。その疑問に対する回答を、今回のACLEに向けた姿勢で少し理解できた気がする。彼にとってポジションとは、与えられた役割を単に遂行するために立つ場所ではなく、チームを円滑にするために立つ位置なのだろう。チームのルールは守った上で臨機応変に対応する酒井のプレーを見ていると、本当の意味で“ユーティリティ”とは何かを考えさせられる。

Reported by 白井邦彦