福岡に関わる全ての人々がこの瞬間を待っていた。明治安田J1リーグ第33節・名古屋戦の88分、宮大樹のロングスローはクリアされたが、カウンターは許さない。スピードスターの永井謙佑に松岡大起がボールを触れさせず、田代雅也が跳ね返してウェリントンへ。上手く頭で反らすと、セットプレーで前残りしていたドウグラス グローリは体を張って必死につなぐ。フリーでパスを受けた途中出場の小田逸稀はみんなの想いを乗せ、右足を振り抜いた。
歓喜に沸くベスト電器スタジアム。福岡にとって8月24日の第28節・G大阪戦以来となるゴールは、リーグ戦12試合ぶりの勝利につながる決勝点となった。ヒーローはもちろん、J1屈指のGKランゲラックを打ち破るシュートを放った小田。ただ、勝利を手繰り寄せる上で二人の立役者がいたことも忘れてはいけない。
一人はGK永石拓海。立ち上がりから相手の質の高い攻撃を受け、チャンスを作られたが、背番号1は好セーブを連発した。自身の中での一番のセーブは27分、山岸祐也の浮き球のパスに反応したキャスパー ユンカーのシュートだと言う。「自分の頭の中に祐也くんからのパスのイメージがあったので、タイミングよく寄せられました」。それ以降も続いたピンチはクロスバーやゴールポストに助けられる場面もあったが、全員で粘り強く守り続け、クリーンシートを達成した。
「運も味方につけたというか、うちが勝つ試合ってそういうところ。強い相手に対して、『なんでうち勝てるの』と思うぐらい泥臭い試合になると思うんですよ。それが久しぶりに自分たちの中で出せたというか、本当にどっちに転がってもおかしくない試合を自分たちの試合にできたというのは本当にやっと勝てた要因」
永石自身、先発に復帰して前節までの2試合は無失点に抑えながらも勝利を挙げられず、悔しい思いをしてきた。その姿を目の当たりにしてきただけに、この日感じた素直な想いを彼に伝えた。「笑顔が見れて良かった」と。すると彼は「やっと」と笑いながら「いつもは無失点で嬉しいんだけど、ただそれでも両手放しで喜べない状況が続いていたので、やっと本当に手放しで喜べる最高の瞬間ですね」と嬉しそうに話してくれた。
そして、もう一人の立役者が立場は違えど、永石と同じくミックスゾーンで笑顔を見せてくれたFWのウェリントン。シャハブザヘディに代わって55分にピッチに入った。高くて、強いみんなが頼りにするターゲットマンは「いつもやっていることをやろうというイメージです。スタメンで出る時もベンチで(スタートして)出る時もそれぞれ役割があると思いますけど、それぞれでやらないといけないこと。前線でボールをキープする。そして、チームメイトたちを使う、上手くコンビネーションを作ること」と言うように冷静に自身のやるべきことを整理し、それに徹した。最前線から的確なプレスで相手に圧力をかけ、保持の局面になれば味方からのロングボールを受けて攻撃の起点を作る。「こともなげにいろんなことを好転させるような、攻守にわたってチームを引っ張るようなプレーをしてくれた」と長谷部茂利監督が賛辞を贈るように背番号17が福岡にぐっと流れを引き寄せ、ゴールに、そして勝利につなげたのは間違いない。
「自分がスタートで出ているときもベンチから出てくる選手はやはりパワーを持って出てきて、我々にパワーを与えてくれますし、逆の立場であればそれをしないといけないし、実際それができたと思いますし、それはチームメイトとの親近感。その表れだったと思います。(小田)逸稀が点を獲ったのはすごく嬉しいですね。トレーニングからしっかりやっている姿を見ていますし、やはりそれに値するゴールだと思うし、自分はチームメイトが点を獲ってくれて本当に嬉しい」
ウェリントンは仲間への想いをそう口にする。福岡はJ1の中で突出して個の能力が高いわけではない。だからこそ、目の前の試合の勝利を目指し、一致団結して泥臭く戦う。その為にいつも大切にしているのがチームの一体感。長谷部監督はこの試合に臨む選手たちの変化を感じていた。
「シーズンが始まった最初の頃の顔つきが少し戻ったかなと。それはスタートで出たいけどスタートじゃない時に、交代の選手が『出たらやってやる!』というような、また今日はヘッドコーチの方から『そういう気持ちでスタートの人は目一杯やってこい。いつ交代してもいいようにベンチの選手は準備しろ』という話があったんですけども、そういうところが少し戻ってきたかなっていう感じがありました。これまでは、スタートから外れたら良い顔をしていなかったり、交代で出た時にやってるぞという感じが少し薄れてたのかなというのがあったんですけれども、元々はそういうところがあるチーム、選手たちなので、今日のゲームは試合前からそういう空気があったし、コーチの方からそういうアドバイスがあって、そういう気持ちになれて、一つになれていたような気がします」
3カ月以上苦しい戦いが続いた中で手にした勝利。そして、久しぶりに博多の森で表現された長谷部アビスパに息づく“DNA”。そんな姿を目にして、熱量高く声援を送り続けたサポーターの中には涙を見せる人もいた。
「今日はまた目標に向けての新たな一歩だと思います。今日こうして勝ちにつなげることができたので残りの5試合、今日をきっかけに目標に向かっていければと思います」(ウェリントン)
取り戻した自信を胸に目標のリーグ戦6位以上を目指して福岡は再び加速する。
Reported by 武丸善章
歓喜に沸くベスト電器スタジアム。福岡にとって8月24日の第28節・G大阪戦以来となるゴールは、リーグ戦12試合ぶりの勝利につながる決勝点となった。ヒーローはもちろん、J1屈指のGKランゲラックを打ち破るシュートを放った小田。ただ、勝利を手繰り寄せる上で二人の立役者がいたことも忘れてはいけない。
一人はGK永石拓海。立ち上がりから相手の質の高い攻撃を受け、チャンスを作られたが、背番号1は好セーブを連発した。自身の中での一番のセーブは27分、山岸祐也の浮き球のパスに反応したキャスパー ユンカーのシュートだと言う。「自分の頭の中に祐也くんからのパスのイメージがあったので、タイミングよく寄せられました」。それ以降も続いたピンチはクロスバーやゴールポストに助けられる場面もあったが、全員で粘り強く守り続け、クリーンシートを達成した。
「運も味方につけたというか、うちが勝つ試合ってそういうところ。強い相手に対して、『なんでうち勝てるの』と思うぐらい泥臭い試合になると思うんですよ。それが久しぶりに自分たちの中で出せたというか、本当にどっちに転がってもおかしくない試合を自分たちの試合にできたというのは本当にやっと勝てた要因」
永石自身、先発に復帰して前節までの2試合は無失点に抑えながらも勝利を挙げられず、悔しい思いをしてきた。その姿を目の当たりにしてきただけに、この日感じた素直な想いを彼に伝えた。「笑顔が見れて良かった」と。すると彼は「やっと」と笑いながら「いつもは無失点で嬉しいんだけど、ただそれでも両手放しで喜べない状況が続いていたので、やっと本当に手放しで喜べる最高の瞬間ですね」と嬉しそうに話してくれた。
そして、もう一人の立役者が立場は違えど、永石と同じくミックスゾーンで笑顔を見せてくれたFWのウェリントン。シャハブザヘディに代わって55分にピッチに入った。高くて、強いみんなが頼りにするターゲットマンは「いつもやっていることをやろうというイメージです。スタメンで出る時もベンチで(スタートして)出る時もそれぞれ役割があると思いますけど、それぞれでやらないといけないこと。前線でボールをキープする。そして、チームメイトたちを使う、上手くコンビネーションを作ること」と言うように冷静に自身のやるべきことを整理し、それに徹した。最前線から的確なプレスで相手に圧力をかけ、保持の局面になれば味方からのロングボールを受けて攻撃の起点を作る。「こともなげにいろんなことを好転させるような、攻守にわたってチームを引っ張るようなプレーをしてくれた」と長谷部茂利監督が賛辞を贈るように背番号17が福岡にぐっと流れを引き寄せ、ゴールに、そして勝利につなげたのは間違いない。
「自分がスタートで出ているときもベンチから出てくる選手はやはりパワーを持って出てきて、我々にパワーを与えてくれますし、逆の立場であればそれをしないといけないし、実際それができたと思いますし、それはチームメイトとの親近感。その表れだったと思います。(小田)逸稀が点を獲ったのはすごく嬉しいですね。トレーニングからしっかりやっている姿を見ていますし、やはりそれに値するゴールだと思うし、自分はチームメイトが点を獲ってくれて本当に嬉しい」
ウェリントンは仲間への想いをそう口にする。福岡はJ1の中で突出して個の能力が高いわけではない。だからこそ、目の前の試合の勝利を目指し、一致団結して泥臭く戦う。その為にいつも大切にしているのがチームの一体感。長谷部監督はこの試合に臨む選手たちの変化を感じていた。
「シーズンが始まった最初の頃の顔つきが少し戻ったかなと。それはスタートで出たいけどスタートじゃない時に、交代の選手が『出たらやってやる!』というような、また今日はヘッドコーチの方から『そういう気持ちでスタートの人は目一杯やってこい。いつ交代してもいいようにベンチの選手は準備しろ』という話があったんですけども、そういうところが少し戻ってきたかなっていう感じがありました。これまでは、スタートから外れたら良い顔をしていなかったり、交代で出た時にやってるぞという感じが少し薄れてたのかなというのがあったんですけれども、元々はそういうところがあるチーム、選手たちなので、今日のゲームは試合前からそういう空気があったし、コーチの方からそういうアドバイスがあって、そういう気持ちになれて、一つになれていたような気がします」
3カ月以上苦しい戦いが続いた中で手にした勝利。そして、久しぶりに博多の森で表現された長谷部アビスパに息づく“DNA”。そんな姿を目にして、熱量高く声援を送り続けたサポーターの中には涙を見せる人もいた。
「今日はまた目標に向けての新たな一歩だと思います。今日こうして勝ちにつなげることができたので残りの5試合、今日をきっかけに目標に向かっていければと思います」(ウェリントン)
取り戻した自信を胸に目標のリーグ戦6位以上を目指して福岡は再び加速する。
Reported by 武丸善章