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【取材ノート:神戸】7連戦を無敗で切り抜けた理由。山川哲史が語る「危機感」とは…

2024年10月7日(月)
明治安田J1リーグ連覇を狙う2位・ヴィッセル神戸は33節の京都戦に勝利し、首位・広島を勝点1差で追っている。天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会(天皇杯)もベスト4に勝ち残っており、2冠が狙える状況だ。

AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)と天皇杯を並行して戦う神戸は、9月13日の30節C大阪戦から7連戦を強いられていた。最短で中2日という過密日程。それを無敗で切り抜けたことで2冠の可能性を導き出した。

連戦の山場は天皇杯準々決勝の鹿島戦だろう。30節・C大阪戦の後に中3日でACLEブリーラム戦をタイで戦い、帰国後はアウェイで31節・新潟戦に向かった。そして中2日で迎えたのが鹿島戦だ。


この鹿島戦はメンバー編成が注目を集めた。佳境を迎えるリーグ戦を優先するならターンオーバー、天皇杯優勝も狙うならリーグ戦の主力を投入するという大きく2つの選択肢があった。その中で、吉田孝行監督は直近の新潟戦から先発を総入れ替えする大胆なターンオーバーで挑んだ。しかも、鹿島に3-0で勝利。そして結果もさることながら、この一戦によってチーム内にあるケミストリーが発生する。それが「競争」だ。

森岡亮太の復帰後初ゴールがクローズアップされた鹿島戦だが、ほぼベスト布陣の鹿島を無失点で抑えた守備陣の活躍も光っていた。DFラインは右から日髙光揮、岩波拓也、菊池流帆、本多勇喜。本多と菊池は別として、岩波や日髙はリーグ戦にほとんど絡んでいない選手である。菊池にしてもリーグ戦での先発フル出場は3試合のみで、その他の試合も右サイドバックでの出場が多い。そんな選手たちが鹿島を完封した。

これに対して「危機感」を抱いたのが不動のセンターバック山川哲史だった。天皇杯後の32節・浦和戦の試合後に、山川はこんな話をしている。

「この前の天皇杯では、リーグ戦の出場機会が多くない選手もいた中で鹿島にああいう勝ち方をした。リーグ戦に出ている僕らも悪いプレーをすれば、すぐに外されるかもしれないという緊張感も高まりました。チームは勝ちが続いて良い雰囲気ですけど、個人的なところではみんな危機感があると思います。僕自身も天皇杯前の新潟戦があまり良いパフォーマンスではなかった中で、天皇杯の鹿島戦でみんなの良いプレーを見せられて、危機感を覚えました」


チーム内に競争が生まれる背景には、選手たちの向上心や反骨心、試合への渇望などさまざまな要素がある。だが、今の神戸にある背景は「危機感」が最も大きいファクターと言えそうだ。

吉田孝行監督はこの7連戦でのチームの成長についてこんなコメントを残している。
「ケガ人が戻ってきて選手層が厚くなったことでチーム内の競争が高まっている。メンバー18人を選ぶのも難しい状況です。本当に、一瞬でも良くないプレーをしたり、結果が出せなかったりすればすぐに(先発から)替えられるかもしれない。選手たちはそういう危機感をもってやってくれていると思います」

J1リーグは残り5試合となった。選手たちの中に危機感が宿っている限り、神戸は強い。

Reported by 白井邦彦