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【取材ノート:神戸】天皇杯・鹿島戦で得点した森岡亮太。「森岡です」スピーチに裏話あり

2024年9月26日(木)
9月25日に行われた天皇杯準々決勝で神戸は鹿島を3-0で下してベスト4進出を決めた。直近のリーグ戦から先発メンバーを総入れ替えで挑んだ一戦だったが、しっかりと結果を残した。


この試合で流れを呼び込む先制点を挙げたのが森岡亮太だった。かつて神戸の10番を背負った男はピッチで満面の笑みをこぼした。

京都の久御山高校を卒業後、森岡は2010年に神戸に加入した。当時、C大阪からのオファーもあったそうだが、過去の取材ノートを引っ張り出すと「自分の課題は守備。神戸でそれを身につけたい」という主旨のコメントを拾うことができた。常に上をめざす姿勢は昔から変わらないようだ。

プロ初ゴールは2011年の天皇杯2回戦。三洋電機洲本戦でハットトリックを達成している。今回の鹿島戦でのゴールは神戸復帰後の初ゴール。それを考えると、なんとなく感慨深いものがある。

J2での戦いとなった2013年シーズンに森岡は背番号「10」を託された。その期待とは裏腹に出場機会に恵まれず、周りからは冗談で「最もユニホームを汚さない10番」とからかわれた時期もある。だが、シーズン後半にはスタメンに定着し、J1昇格に大きく貢献してみせた。その後は神戸の不動の10番として存在感を放ち、2015年にポーランド1部のシロンスク・ヴロツワフへ完全移籍する。

それから約8年半をヨーロッパでプレーし、2024年夏に森岡は神戸に戻ってきた。

2024年8月17日のホームG大阪戦で、森岡はファン・サポーターに挨拶をするためにスタジアムに現れた。第一声は「森岡です!」。スタジアムには一気に拍手喝采が起こった。だが、この時、森岡の中では反応があるかどうか半信半疑だったという。

その2日後の公開練習の際、記者陣にこう打ち明けている。
「スタジアムに出る前に、広報から“いやぁ、反応わかんないっすね~”とかプレッシャーをかけられてたんすよ。チームを離れて8年半も経っているし、確かに知らん人もいるかもなぁと。急に不安になったというか。だから、最初に“森岡です”と言った時の反応でどうしようか考えていた。実際は反応があったので“帰ってきました”で行けたんですけど、反応なかったら“はじめまして”で行く予定でした(笑)」

天皇杯・鹿島戦のゴールで、彼を知らなかった人にも森岡亮太の名は刻まれただろう。長年の神戸サポにとっては、ようやく正式に「おかえり」が言える時が訪れた感覚かもしれない。

Reported by 白井邦彦