監督と選手への取材が終わった明治安田J1リーグ第30節・町田戦後のミックスゾーンで試合前の一部の報道を受けて急遽囲み会見が行われた。その場で柳田伸明強化部長は、今シーズン限りでの長谷部茂利監督の退任を明言。0-3で敗れ、リーグ戦勝ちなしが9に伸びた試合後の発表だったことも重なり、帰路の足取りはいつも以上に重たいものになった。
ただ、この日嬉しい出来事があったことも忘れてはいけない。それはコンディション不良で約2カ月戦列を離れていたドウグラス グローリの復帰だ。
「スタジアムに到着してバスを降りた時から自分の名前をコールしてもらったり、ウォーミングアップから非常に大きな声援をもらって選手として非常に幸せなことです。本当に感動するぐらい嬉しいことなので、彼ら(サポーター)の期待に応えられるように頑張り続けなければいけないですし、改めて温かい声援に感謝したいと思います」
誰もがグローリの復帰を心待ちにしていた。試合前のウォーミングアップが始まった瞬間、ベスト電器スタジアムに流れたBGMは彼のチャントの原曲。それに合わせ、サポーターからグローリの名が大きくコールされる。福岡を支える人々の強い想いに背中を押され、強さと高さを兼ね備えた強靭なセンターバックは、“らしさ”を見せてくれた。相手のターゲットマンであるオ セフンを狙ったロングボールをことごとく跳ね返し、攻撃の起点を作らせない。地上戦でも対人能力の高さが光る。特にスタジアムが沸いたのは42分、カウンターを受けた場面だ。中島裕希からパスを受けた藤本一輝との1対1の勝負。広大に広がるスペースを活かすべくドリブルを仕掛け、ゴールに向かおうとする相手に背番号33は冷静に対応。身体の重心を崩すことなくボールを刈り取り、前進を阻んだ。
「自分の特長であるカバーリングであったり、相手の起点を潰すというところは何度か今日の試合でできた」
福岡の守りを支え続けて今シーズンで5年目。この試合はコンディションも考慮されて74分で途中交代となったが、“博多の重戦車”と称されるほど頼もしいブラジリアンを長谷部監督も高く評価する。
「非常に良かったですね。前半、彼だからこそ止めたという場面がいくつもあったので、期待通りの活躍をしてくれました。攻撃面ではセットプレーなどで点数も取れるような選手なので、そういうチャンスがもっとあれば、そういう貢献もしてくれたと思います。今日のところは復帰戦にしてはかなり良くプレーできていたのではないかと思います」
だが後半、警戒していた時間帯、形から3失点を許して福岡のストロングである堅守は打ち砕かれた。グローリは「(町田戦は)3得点ともスローイン起点からの失点だったので、そこは反省しなければいけない。こういう相手、彼らのストロングはただ上手いではなく、結果につながっているというところをどうにかして僕らは消さなければいけないですし、こういう流れが悪い時こそ一つ一つ集中を欠いたプレーをしてはいけない」と強調する。
「(グローリの復帰は)チームとしても大きいです。怪我人の選手が戻ってきているということはすごく良いことだと思いますし、みんなが力になる」(松岡大起)。残り8試合、目標のリーグ戦6位以上を達成し、笑顔で長谷部監督を送り出すためにも堅守の再構築は必須。DFラインを引き締めるグローリが重要な役割を担う一人になることは間違いない。
Reported by 武丸善章