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【取材ノート:福岡】今が正念場。「少しずつの差」をなくすために必要な進化

2024年9月4日(水)


福岡は勝てない日々が続いている。最後に勝ったのは6月30日の明治安田J1リーグ第21節FC東京戦。リーグ戦7試合勝ちがない状況で迎えた29節の神戸戦も0-2で敗れた。


昨シーズンの王者に対して何もできなかったわけではない。CB陣にケガ人が相次ぎ、この試合は宮大樹も累積警告で出場停止という台所事情が苦しい中で堂々と立ち向かった。ピンチは全員で体を張って守り、チャンスも見出した。

だが、「この競技において必要なことがいろいろありますが、そのいろいろができる。サッカーの局面で言うと、全部の場面で相手に少しずつ上回られた」と長谷部茂利監督が言うように明確にあった地力の差。チームと個、それぞれの課題が改めて浮き彫りになった。

象徴的なのは先制点を奪われた場面。45+1分、自陣深くからシャハブ ザヘディへと送られたロングボール。孤立しながらも懸命に体を張り、キープしようとした。だが、両CBに挟まれながら激しくアタックされ、ノーファールでボールを奪われた。敵陣でのプレーを続行できた神戸はリズミカルにボールを動かし、大迫勇也がフィニッシュ。7選手による7本のパスを使った綺麗な崩しを許した。

「あれを止めるのは難しいので、あそこに行く前に、あの形にならないようにしなくてはならない」(長谷部監督)

前半の飲水タイムを境に多く発生し始めた“悪循環“。立ち上がりは効果を発揮していた前からの圧力を回避され、自陣に押し込まれる。粘り強い守備で対抗し、何とかボールを奪っても預ける先はトップにいるザヘディしかいない。距離感が遠く、長くて高いボールを蹴らざるを得ない中で味方がサポートする前に切り替えの早い相手に囲まれ、ボールを失い、再び自陣での守備を余儀なくされる。「前線の選手が上手くファールをもらったりとかして自分たちが押し返す形を作らないといけないと思うんですけど、なかなか難しい」。攻撃のタクトを振るう紺野和也が話すように福岡が抱え続けるチームとしての課題である。

以前、長谷部監督が「ハーフウェイラインを自分たちが越えていくこと。そこがこれまでもこれからも課題」と口にしたように自陣からボールを前進させるためのルートを少しでも増やしていわゆる“逃げ道”を作り出すことがトップに入る選手の負担を減らすことになるし、それが自分たちのチャンスの回数を増やすことにも、あるいはピンチの回数を減らすことにもつながる。

そこには当然、個人の「質」も求められる。「基本的に(神戸と)大きく違うところはボールを扱う技術」と長谷部監督が言うように「止めて、蹴る」という技術的な部分の向上に加えて必要になるのは判断の質の向上。その局面において何が最適解なのか、相手をしっかりと見た上で早く、正確に選び、最大限に技術の高さを活かす。それが一人ではなく、複数人が高いレベルで組み合わさるからこそ、生み出される先述のようなシーン。ピッチで戦った福岡の選手たちの肌にも王者の凄みは強く刻まれている。

「戦い方、強さ、個人個人クオリティのある選手たちに合ったサッカー、それを実行する力というものは特に感じました」と前寛之は言い、「ファーストタッチをどこに置けば相手が嫌なのか、ボールが隠れるのか、あとは一人ひとりの距離感だったり、どこに立てば攻守にわたって効果的かとか、やっぱり経験の多い選手が多いので、そこはピッチの中で感じましたし、自分たちももっともっとそこは上げていかないといけないと思っていますし、上げていけると思っています」と松岡大起は言う。

これを糧に残り9試合でどれだけ選手個人、そしてチームとして力をつけられるか。課題を克服することは決して簡単なことではないが、目標の6位以上を目指す上で乗り越えなければいけない壁だ。苦しい時こそ、前を向いてチャレンジするしかない。

「ホームゲームはあと4つしかない。(6月から)勝ち試合を見せられていないですし、なんとかリバウンドメンタリティをもって取り組むところは取り組んで、自分たちに矢印を向けながら厳しくやっていく必要がある」(前)。福岡にとって今が踏ん張りどころだ。

Reported by 武丸善章