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【取材ノート:清水】無失点の3連勝で首位復帰した清水。勝負の9月に向けて強めるこだわりとは

2024年8月29日(木)
6月にアウェイで連敗した後、22節で岡山を破ってからは6勝1敗と持ち直している清水。仙台にはアウェイで2失点して敗れたものの、直近は全て無失点で3連勝し、首位を堅持している。

1-0の辛勝でも大きな価値が

前節・鹿児島戦は、60%以上ボールを支配してシュート数も17本対6本と圧倒したが、数多くあった決定機を決めきれず、終盤まで0-0。芝の深さや質がアイスタとはかなり異なり、その影響でシュートが浮いてしまう場面も散見された。だが、それでも最後にPKを獲得し、アブドゥル アジズ ヤクブが3試合連続となるゴールを決めて何とか勝点3をつかんだ。快勝とは言えなかったが、この1勝には大きな価値があったと秋葉忠宏監督は言う。

「難しい試合になった中で、イライラして変なミスからカウンターを食らうというのがほぼなくて、冷静に自分たちから崩れることなく最後までゲームも自分たち自身もコントロールしながら、辛抱強くしたたかに戦えた。それが最後にご褒美(PK)につながったと思います。去年はこういう試合がドローで終わったり、ポロッと負けたりしたので、今年は初めから“勝負強さ”にこだわってきましたし、しっかりと勝ち切るところまで持っていけたのは重要だと思います」


その勝負強さの背景について、熱血指揮官は「前々日入りさせてくれたクラブのサポートや(J2ではいちばん遠い)鹿児島まで1300人もサポーターが来てくれたこととか、本当に感謝しています」とつけ加えることも忘れなかった。

戦術面でも、センターバックの蓮川壮大が約5カ月ぶりに先発復帰し、住吉ジェラニレショーンとの快速CBコンビが復活したのも大きい。2人ともスピードに自信があるため、DFラインを大胆に上げることでき、その分全体がコンパクトになって前線や中盤でのプレスがより有効になり、ボールを失ってもすぐに奪い返すことができていた。だが蓮川本人は、先発復帰初戦で完封できたことにも満足してはいない。

「インターセプトや予測のところは、カバーリングを含めて良さを出せたところはありますけど、リスク管理のところでは危ないシーンを招いていたので、修正しないといけないと思います。映像を見返しても、もっと準備の段階でピンチを招かないようにできたと思うし、そこは残り10試合でより大事になってくると思うので、後ろからもっとコミュニケーションをとれるように意識してやっていきたいです」(蓮川)

昨年の悔しさがあるからこそ

リスク管理の面で一瞬の隙も与えないことの大事さは、昨年J1昇格を逃した悔しさや反省も踏まえて、チーム全体で共有できている。

「清水が相手だと、引いてカウンターとか、ワンチャンスをずっと狙ってくる相手も多いと思うので、そのリスク管理、隙を与えないというのは、本当に大事だと思います。去年もそこでやられていて、いろいろ悔しい経験をしてる選手が多いので、そこを強く伝えてくれていますし、監督もつねに言っています。だから厳しいやり取りもありますけど、それも含めて今はすごく良い雰囲気でやれていると思います」(蓮川)

そうした声が選手から自発的に出ていることには、秋葉監督も「そういう向上心とか意欲みたいなものが非常に大事だと思うので、すごく良いこと」と歓迎する。

プレシーズンからビルドアップの質を追究してきたこともあって、最近はどの試合でもボール支配率で上回り、ハーフウェイラインを越えるところまでスムーズにボールを運べている。「暑ければ暑いほどボールを持てるチームが強い」と秋葉監督が言うように、ボールを動かして相手を守備で消耗させることができ、夏場の強さにもつながっている。

もちろん、そうした試合運びをするうえでも、ボールを失った後のリスク管理が重要になる。

9月には、昇格争いの2大ライバル、長崎、横浜FCとのホーム対戦があり(横浜FC戦は会場が国立競技場)、前半戦で完敗した4位・山口ともホームで戦う。今季ここまで無敗(12勝1分)のホームゲームで、その3戦に全勝すれば、自動昇格の可能性をかなり高めることができるだろう。

まさに勝負の9月。そこでも隙や緩みが少しも出ないように、チーム全体で自分たち自身を引き締め直している。

Reported by 前島芳雄