Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:神戸】「左ウイング」で起用の宮代大聖。「点は取れるよ」と指揮官が説得

2024年8月29日(木)
神戸は明治安田J1リーグ・第28節で鳥栖を2-0で下し、5位から3位に浮上した。残り10節で首位・町田との勝点差は「5」、2位・広島とは「3」。リーグ連覇への手応えを掴んだ中でシーズンは佳境を迎える。


“手応え”という点では宮代大聖の復帰が大きい。6月26日の町田戦後にケガで離脱していたが、8月17日のG大阪戦で復帰すると前節と合わせて2戦連発中と活躍している。G大阪戦は29分間、鳥栖戦は45分間という時間限定での出場だったが、それでもしっかりと結果の残した “点取り屋”。神戸にとっては心強い選手が帰ってきた印象だ。


興味深いのは宮代の起用法だ。ケガ前はトップかインサイドハーフでの起用が多かったが、G大阪戦では左ウイングのジェアン パトリッキと交代でピッチへ。前節は左ウイングで先発している。シーズン開幕前に宮代は「トップをやりたい」と吉田孝行監督に志願し、あえてエース大迫勇也との“競争”の道を選んだ。なぜ左ウイングを受け入れた(本人は受け入れたとは言っていないが)のだろうか。

鳥栖戦の後、吉田監督は興味深い発言を残している。
「今シーズン初めて(先発として?)ウイングで使ったんですけど、やはり彼自身はフォワードやインサイドハーフへのこだわりが強いです。ただ、ウイングでも点を取れるよと伝えて…。で、実際に点も取れましたし。自分としては新たなというか、頭の中にあったオプションの一つでもあります。でも、やはりセンターフォワードにこだわりを持っている選手ですので、彼とも話し合いながら起用法を考えてやっていきたい」

現在、宮代は武藤嘉紀と並びチームトップタイの9ゴールを挙げている。すでにプロでのキャリアハイ(8得点)を更新しているが、あと1点で自身初の二桁得点に到達する位置にいる。センターフォワードにこだわり大迫勇也や井出遥也らと激しいポジション争いをするか、左ウイングで試合に出てゴールを量産するか、自身としても悩むところかもしれない。

とはいえ、左ウイングと言ってもそれは名ばかりのようでもある。鳥栖戦の後、宮代はこんな話をしている。「インサイドはハルくん(井出遥也)だったので、練習中からいろいろと話して、ハルくんが左に流れたり、というのは試合の中でやっていこうと話していた」

神戸の左ウイングと言えば、佐々木大樹や汰木康也のようにサイドでボールをキープしてそこから仕掛ける印象がある。あるいはジェアン パトリッキのようにスピードを活かした突破で崩すプレーかもしれない。今シーズンで言えば、広瀬陸斗が左ウイングでゲームをコントロールするなど可能性を広げている。だが、宮代の左ウイングはそのどれにも当てはまらない。守備での規律は左ウイングのそれだが、攻撃に転じた場面ではむしろインサイドハーフの動きかもしれない。

吉田監督は「オプションの一つ」と表現したが、実際には宮代を獲得した時点で考えていたファーストチョイスだった可能性もある。いずれにせよ、井出の存在が大きいのは確かなようだ。

G大阪戦の後、宮代はこんなコメントを残している。質問は自身との交代が多かった井出と一緒にプレーし、井出は「楽しかった」と話していたが宮代はどうか?
「普段からハルくんとはコミュニケーションをとるので、一緒に出る機会があるなら『こういう感じだね』という話はしていました。短い時間でしたけど、やりやすかったですし、1個のオプションとして監督も考えているんじゃないかと思います」

以前、大迫が「どうやって大聖に点を取らせるかは意識している」と話していたが、今シーズンの神戸は宮代の活かし方が一つのテーマなのかもしれない。J1リーグが終盤に差し掛かる9月には、AFCチャンピオンズリーグエリートも始まる。今まで以上に宮代の起用法がクローズアップされる可能性はありそうだ。

Reported by 白井邦彦