8月17日の明治安田J3第24節 福島戦(◯1-0)。スコアレスで迎えた90+2分に決勝弾をあげた武沢一翔は、とても90分間走り続けていたとは思えないほどの猛ダッシュでベンチ前へと駆け、歓喜の輪の中心に立った。
「ゴールが入った瞬間から試合が終わるまで、頭が真っ白な状態で(笑)。慣れてないことをやるとそうなっちゃうんですね」と、今季初ゴールで大仕事をやり遂げた彼の気勢は頂点に達していた。
本来ボランチが定位置も、豊富な運動量を買われて今季は右サイドハーフでプレー機会を得た武沢。最後までアップダウンを欠かさず、攻守に数多く顔を出して関わることができる選手だ。ボランチでもボックストゥボックスの動きを示してきた彼は、「サイドハーフになってもやる動きはそんなに変わらない」と、常にボールに反応する信条を貫いている。
だからこそあの瞬間。「ボールが転がってきそうな予感がした」と、試合中ボールに触れる機会が多いゆえの彼の予感は的中した。右SB上原牧人が大きく左へ展開し、FW岩渕良太がダイレクトで落とす。PA中央に空いたスペースへ猛然と駆けたMF富所悠がつぶされながらも、展開により全体が左重心になっていたことで武沢の3人目の動きが活きた。力を振り絞り、勢いよくボックス内へと進入。フリーの状況で然るべきところへ転がってきたボールを目の前に「とにかく枠に収めよう」という思いで振り切ったシュートは、手前でわずかにワンバウンドしたことで縦回転がかかり、ループ気味にGKの頭上を超えてゴールの中へ。90分間走り続けた中でも呼吸を整えてアンテナを張ったプレーは、巻き返しを図るチームに大きな活力を与えた。
プロ3年目でキャリア通算2ゴール目となった武沢。「このゴールの手応えは間違いなくこれからに生きる。もっと点を奪いたいという気持ちが強くなった」と、目に見える数字がダイレクトでチームに好影響をもたらすことを再認識した彼は再び味わったゴールの余韻を心に響かせながら、鋭い切り替えから一矢となる姿でJ2昇格への道筋を照らす存在となってくれることだろう。
Reported by 仲本兼進