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【取材ノート:福岡】福岡に希望の光を灯す前嶋洋太の約3カ月半ぶりのカムバック

2024年8月20日(火)


「おかえり。みんな待ってたよ」

明治安田J1リーグ第27節の新潟戦。試合開始前のメンバー紹介で前嶋洋太の名が呼ばれた瞬間、ベスト電器スタジアムは大きく、そして温かい拍手に包まれた。

5月3日の第11節・G大阪戦で負った右肩甲骨関節窩骨折、右外傷性肩関節脱臼の大ケガから約3カ月半ぶりの復帰。「本当にありがたかった」。前嶋は感謝の想いを胸に後半開始からピッチに立った。

「まずは守備のところでしっかり整理してボールを取ってからカウンターだったりとか、(良い)守備から攻撃というのが自分たちの良さの一つだと思うので、そこは出していきたいなというところとやっぱり攻撃になったら自分は攻撃的な選手だと思うので、そこは自分の良さを目いっぱい最大限に出せるようにとは思っていました」

前半から巧みにボールを動かし、幾度となくゴールに迫ってくる相手に対抗するべくサイドバックの前嶋は奮闘。48分のインターセプトが象徴するように予測の早さと的確なポジショニング、高い強度でのボール奪取を見せ、左右両サイドで遜色なくクレバーにプレーした。

「ボールもあまりいきませんでしたし、彼の持ち味みたいなのはそんなに出せなかったんだとは思いますが、アプローチの強度だったり、ファールになってしまった場面もありましたが、よくチャレンジしてくれたと思います。攻撃に関しては、本来の彼の持っているものはちょっと出せなかったと思うし、時間も半分とはいえ彼にとっては短かったと思うので、評価する、しないはないんですけれども、復帰戦にしては身体はよく動いていたと思うし、彼は彼で準備してくれていたなと。途中で亀川を入れたことによって右に持ってきましたが、それもまたボールがあまり来なかったし、時間も短く、もう少し時間を与えたかったんですけれども、今日のところは復帰戦ということで、半分でしたけれども、それなりにやってくれたなと思います」と長谷部茂利監督が言うように前嶋が本来持っている力からすれば物足りなさはあるが、45分の限られたプレータイムでも随所に彼らしさを感じ取れ、見る側にも安堵感を与えてくれた。


「気持ちはすごく成長しました」。今月上旬の練習後に怪我から復帰して初めて前嶋に話を聞かせてもらった時、そう笑みを浮かべながら話してくれた。彼にとってこの約3カ月半はこちらの想像を超えるぐらい苦しく、辛い時間だったはず。でも、周りの人に支えられながら前向きに過ごしたことで充実感に満ちた時間に変えたように思う。

「暑かったですし、一人で走らなければいけなかったので、そこは結構寂しかったです。走りは(チームの全体練習)前にやることが結構多かったです。朝暑かったので朝やろうということで。辛かったですけどトレーナーの人と楽しくできたので支えられたなという感じです。 サッカーのプレー以外のところでも、トレーナーの人と話して身体のこともいろいろやってこれたので、そこは少なからず成長しているかなと思います。(ピッチを)離れてサッカーを見ていて改めて気づくことがたくさんありましたし、この(リハビリ)期間中にユーロ(ヨーロッパ選手権)もあったのでサッカーを観る機会も多くて、新鮮な気持ちでサッカーを見れたということが、ひとつ自分にとっては大きかったなと思います」

ずっと見ていた選手はスペイン代表のダニエル カルバハル。「やっぱりボールのないところの動きというのは、攻撃のところも守備のところもすごく勉強になった」と言うように決して身長は高くないが、力強く、そして賢くプレーする同じサイドバックの選手から得たものは多かった。

リーグ戦6試合勝利から遠ざかっているチームは今、目標の6位以上へ正念場を迎えている。肉体的にも精神的にも一回りも二回りも大きくなった前嶋に掛かる期待は大きい。

「やっぱり崩れずにチームが一つになってやるということとやっぱり一人一人自分の良さ、ストロングポイントを出してチームに貢献することが大事だと思う。(福岡は)一体感がすごくあるチームだと思うので、絶対に乗り越えられる」

サイドでチームに安定感をもたらす背番号29は、福岡に希望の光を灯してくれる頼もしい存在だ。

Reported by 武丸善章