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【取材ノート:今治】最終ラインの加藤徹也は攻めの姿勢を崩さない

2024年8月15日(木)


リーグ中断前の明治安田J3リーグ第23節・いわてグルージャ盛岡戦の12分、先制ゴールとなるヘディングシュートを右CKからズバリと決めた。


今季、奈良クラブから加入したDF加藤徹也にとって、FC今治のエンブレムを胸にネットを揺らした2ゴール目である。チームは目下4連勝中で、そんな流れの中での幸先の良い自らの得点。直後の表情は笑顔ではなく、引き締まっていて、仲間に気合を入れるかのようだった。

「試合の入りのところから、雰囲気があまり良くないと感じていたんです。中断前の大事な試合だったし、何としても勝点3を取ることが僕らには絶対に必要だったので。そういう意味でも、気持ちが入りました」

ピッチ内の空気に敏感だったのは、チームとしても個人としても、難しい時期を経験していたからだろう。

開幕から4連勝と好スタートを切ったチームの中で、シーズン序盤から左サイドバックとして存在感を放った。状況に応じてインサイドにポジションを取り、相手ゴール前にも出没する。攻撃を活性化させる偽サイドバック的なプレーは、「今までやったことがない。こちらに来て、今治のサッカーに合わせてチャレンジしている」という言葉がにわかに信じられないほど鮮烈で、印象的だった。

ところが、5月初めの古巣の奈良戦(第12節●1-2)あたりから迷いが生じ始める。チームも4連敗して苦しんだ時期だ。

「失点が増えるチームのことを、どうしても考えてしまって。そうなると、どうしてもリスクを取りづらくなり、シーズン初めに比べると思い切りの良さは減ったかもしれません。でも、それで失点も減ってきているし、チームのプラスになるなら問題ないです」

悪い流れから脱しようとチームが4バックから3バックに変わり、プレーするポジションがサイドバックからセンターバックの左になったこともプラスに働いている。センターバックは開幕前のキャンプでもチャレンジしたが、今の方ががぜん自信に満ちあふれたプレーぶりだ。

「キャンプのときは4バックの真ん中で、今は3バックの左ですが、周りの見え方、“景色”が本当に違います。3バックだとすぐ右隣りで真ん中のセンターバックにサポートしてもらえるし、左のワイドの選手やボランチも近い。4バックのときより近くの味方が増えるだけで、相手との駆け引きが変わってくるんです。

実際、近い距離感でボールを回すことで相手もプレスを掛けづらそうだし、自分に時間ができる分、(利き足の)左足でオープンにボールを持って背後を狙いつつ、ギャップに縦パスを入れることもできる。

それに、3バックだからといってずっと後ろに留まっている必要はなくて、タイミングがあれば思い切って攻め上がれます。今、3バックの右は(市原)亮太が務めることが多く、3枚の左右をサイドバックがやっているというのも自分たちの特徴だと思っています。攻撃参加の回数を増やしていければ」

両ワイドが下がって5バックにもなる3バックは守備力アップの策だが、自身もチームも、攻撃力を犠牲にするつもりはない。「2次攻撃、3次攻撃と厚みを持たせるために、後ろからどんどん押し上げていきたい」と、チームのさらなる進化を追求する。

自ら先制ゴールを挙げたいわて戦を2-1で物にして、チームは5連勝でリーグの中断に突入。順位もJ2自動昇格圏内の2位に就ける。もちろん、ここでひと息つくことなどあり得ない。

「リーグ再開後、FC大阪、アスルクラロ沼津、奈良と、大事な試合が続きます。中断開けに8割くらいの力加減ではなく、100パーセント、120パーセントのパワーで入っていけるように厳しい暑さの中、2週間半トレーニングしてきました。再開初戦のFC大阪戦をホームのアシックス里山スタジアムで戦えることも大きなプラス。サポーターのみなさんも一丸となって、全員で試合に向かっていきます」

試合の流れを読み、戦う姿勢は少しもブレない。タフにプレーする最終ラインから、今治の攻撃は鋭く繰り出される。

Reported by 大中祐二