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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:彼もまたリーダーの一人として。椎橋慧也の頼もしき存在感

2024年8月8日(木)


「だから僕も言ったんすよ」。椎橋慧也は発言を恐れない。思いきりの良さはプレースタイルそのままで、果敢な縦パス狙いは彼の持ち味の中で最も魅力的な部分である。冒頭の言葉は悔しい逆転負けを喫した京都戦を振り返る中でのもので、試合の流れが一変した1失点目の発端となる部分について問うた時のことだった。

「あれはカウンターで、まして1人少ない状況で、誰かがカード覚悟でも止めないといけないところでした。あそこで1点食らうと2-0が2-1になって、相手に勢いが出る。そういうことは言っていたんですけど、ズルズルと行ってしまいました。やっぱり2-0で耐えないといけなかったし、上位のチームはああいう展開でも絶対に勝ちきると思うんです。そうですね…、僕らの弱さが出たかなって感じです」

歯に衣着せぬ、とまでは行かないが、先輩だろうが関係なしに、自分の意見をぶつける男だ。そこから次の議論が生まれ、お互いにプレーしやすい環境を生み出していく。今季序盤はなかなか自分のプレーを出せずにいたが、コンスタントに出番を得るようになってからは発言の機会も相応に増えた。チームの勝敗に対する責任感も強くなり、試合後に報道陣に囲まれることも多々。前半2-0から後半で2-3とひっくり返された試合においても、チームリーダーのひとりとしての言葉を惜しまなかった。



「退場者が出て相手に絶対的にフリーができている中で、クロスを弾くことだったり、カウンターをファウルでも止めたり、セットプレーでも弾くとか、ちょっとしたところでやっぱ相手の方が上回ってきた。ああいう状況になったら僕らはもっと締めて、ゴール前だけはやらせないっていう共通認識でやらないといけないと思うし、今日は絶対に勝ち切らないといけないゲームだったと思う。1人少ないけど、セカンドボールを拾い続けて、何とか耐えるっていう展開を長引かせるべきでした」

出来の良かった前半には相棒の稲垣祥とともに相手を押し込み高い位置をとり、得意の縦パスだけでなくサイドチェンジでも好機を演出。パトリックの2点目は稲垣が審判と激突して倒れたところをさりげなくカバーし、受け取ったボールを左の和泉竜司に展開し、そこから生まれたものだった。退場者が出た後の58分には森島司の直接FKが弾かれたところをダイレクトで蹴り込み、惜しい場面もつくっている。得点こそ決まっていないが実は椎橋は1試合に数回、惜しいシュートを放っており、「そろそろ決めたいっすね」と野心も十分。言動でも行動でも、着々とチームの中心を担うひとりとしての立場を確立しつつある。

「悔しいですけど、中3日でホームゲームがある。東京Vにはアウェイでやられているんで、借りを返せたらなと」

すぐさま切り替えたチームのハンドル役は、やられっぱなしでは済まさない。敗戦に下を向くことなく、よりアグレッシブなプレーと選択肢をもって、ホームで待つサポーターたちの歓声を引き出してみせる。


Reported by 今井雄一朗