昇格争いを勝ち抜くために、チームが再び加速し始めた7月半ば。高卒ルーキーながら右のサイドバック、ウイングバックとして試合出場を重ね、能力の高さを発揮してきた梅木怜が腰椎分離症で負傷離脱するというニュースは、実にショッキングだった。
3-4-2-1の布陣での戦いに見通しが立ちつつある中、誰が右ウイングバックを務めるのか。抜てきされたのが、今シーズン、JFLの雄、Honda FCから加入した左利きのドリブラー、弓場堅真だ。
本来は攻撃的なポジションでウイングバックの経験はこれまでなかった。だが第21節ツエーゲン金沢戦(〇3-0)、第22節AC長野パルセイロ戦(〇2-0)と続けて先発すると、「とにかく自分の特徴を生かそう」という無我夢中のプレーでチームが連勝を今季2度目の4に伸ばすことに貢献している。
「自分の特徴であるハードワーク、運動量をうまく生かして、チームにフィットできているのかな、と感じます。それから虎くん(近藤高虎)もそうですが、小柄だけれどもロングボールにうまく対応できていると思います」
弓場は身長163センチ、左ウイングバックの近藤は165センチだが、球際でしっかり戦う2人は簡単には相手にチャンスを与えない。攻撃だけではなく、守備でも労を惜しまず走るところも両ウイングバックには共通する。
「空中戦に関しては、高さではなかなか勝負できません。だったら相手に体をぶつけて自由に飛ばせないとか、先にボールを触られてもファーストタッチを狙うとか。細かいところに目を向ければ、戦っていく術(すべ)はあります」
チームにとっても自身にとっても、新たな発見といえる右ウイングバックでのプレー。その起用の理由を、服部年宏監督は次のように説明する。
「とにかく運動量があって、仕掛けることもできれば、守備で粘り強く対応することもできる。チームにパワーを注入してくれます」
精度の高いキックを生かし、金沢戦は右CK、長野戦は左CKから得点に結びつけた。左足のキッカーとして、チームにとって貴重な存在になりつつある。
「ゴールになっているシーンは、ミーティングと練習でやってきたことが、そのまま形になっています。自信になります」
チャンスは右ウイングバックという思いがけない形でめぐってきた。長野戦でリーグ戦でのプレーは9試合目。さらに出場を重ねていく足がかりを築きつつある。
「試合に出られるなら、どのポジションでもやります。不慣れなことの不安ではなく、『やってやろう』という気持ちが強いです。先月の終わり、攻撃陣にはブラジル人のウェズレイ タンキが加わり、(加藤)潤也くんが上のカテゴリー(J2のレノファ山口から完全移籍)から来て、ますます競争がし烈になってきました。自分も、『もっとできるぞ』というところをアピールしていきます」
JFLからステップアップし、高いレベルでプレーしていることを実感する日々だ。試合を重ねれば、さらに高みを目指す思いも強くなる。限界突破のために走り続ける。
Reported by 大中祐二