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【取材ノート:福岡】松岡大起が抱くボランチとしての強い責任感

2024年7月23日(火)


完敗と言っていい明治安田J1リーグ第24節の東京ヴェルディ戦。立ち上がりからボランチの松岡大起はもがき苦しんでいた。

「チームのやり方と自分たちのやり方があったとして、前から(プレスに)行くというのは常に声を掛けてはいたのですが、なかなか上手く掛けられなかったというのがあって、そこから奪えるところで奪えていなかったので、そういうところが歪みとして来た感じはありました」

3ラインをコンパクトにして連動したプレスからボールを奪う。本来の前向きな守備が機能しない。それは「良い守備からの良い攻撃」を掲げる福岡にとって試合を難しくさせることを意味していた。連鎖反応のように攻撃も思うようにはいかない。前半は前節の広島戦同様に足元でテンポ良くボールを動かして前進を図る地上戦でゴールへの糸口を見つけ出そうとしたが、決定機を作れず。相手にカウンターを浴び、ゴールを奪われると、後半はシャハブ ザヘディをターゲットにロングボールを多用したが、最後まで得点を奪えなかった。枠内シュートはわずかに2本(©JSTATS)。攻撃力向上を目指し、進化の過程を歩んでいる福岡にとって課題を突き付けられる一戦となった。

「サイドから行くのは自分たちの強みでもありますし、そこは意識してやりながらもクロスに対しての入り方だったり、人数の掛け方。そこはもっともっと多くしないといけないと思いますし、もっと背後へのパスだったり、そういったところをボランチ。自分たちから増やさないといけない」

言葉の端々から伝わってくる強い責任感。ここまでリーグ戦全試合に出場する松岡はチームを司るポジションの選手として熱さと共に冷静さもきちんと兼ね備えている。この試合、これまで多くボランチコンビを組んできた前寛之がハムストリングの違和感で61分に途中交代。アクシデントによってチームの心臓を失っても松岡は微動だにせず、奮闘を続けた。自分がチームを動かす。苦しい状況を打開しようとがむしゃらに戦う背番号88の背中は実に頼もしく、大きく見えた。

ここまで決して順風満帆だったわけではない。開幕戦は同い年のルーキー重見柾斗に先発の座を譲り、第4節まで途中出場が続いた。それでも気落ちすることなく、視線は常に上を向いていた。「今の自分の場所と状況でやるべきことをしっかりとやる、小さなことをコツコツと積み上げていかないといけない」。いつも松岡は澄んだ眼差しでそんなふうに実直な言葉を発してくれる。いつの間にか彼に話を聞くのが取材の楽しみの一つになった。

ストイックに自分自身のプレーを突き詰める松岡がボランチとして常に考えていることがある。それは、自分がどのようにボールを奪い、どのようにゴールにつなげるか。その為に日々、工夫と努力を重ねながら強度と質を高めている。ポジショニングや身体の使い方、ボールの扱い方、チームメイトとの連携。シーズン当初に比べて様々な要素に磨きが掛かっているが、彼は全く満足していない。全体練習のみならず、居残り練習でも周りと多くコミュニケーションをとりながら、能力向上に励む。ピッチを離れても余念はない。世界トップレベルの選手の映像を見て何か自分のプレーに活かせるものはないか探求している。

「もっともっと個人的にボールを奪うためだったり、切り替えの部分。全てのところの質をもっともっと練習の中で自分自身が上げていかないといけないと思っています。真ん中の選手なのでセカンドボールをはじめ、自分のところにボールが入って来ることが多いので、そこで自分がミスを減らせば攻撃の回数はおのずと増えますし、難しいボールであっても、それを攻撃に繋げるプレーをしたいと思っているので、そこは常に意識してやっているところですね。(今夏引退した)トニ クロース選手の一つひとつのパスの丁寧さやプレー強度はさすがトップレベルだと感じますし、マンチェスターシティのロドリ選手とか、レアルマドリードのカマヴィンガ選手とかは見ますよね、やはりボランチでプレーしていると。ああいうトップレベルでのプレーを見ていろんなものを感じるということはありますね」

チームは6月負けなしから一転、7月は勝ちなし。公式戦4連敗で中断期間に入った。松岡は今、やらなければいけないことを次のように話す。

「もっともっと結果というのを受け止めてやり続けないといけないと思っていますし、勝ててないのにも理由があると思うので、そこの勝ちに対してどうやって一人一人が持っていくかそこをもう1回再確認して練習だったりに自分は取り組まないといけないと思っています」

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。チームの成長、そして自身の成長の為、常に矢印を自分に向け、高みを目指す松岡がこれからどんな成長曲線を描いてくれるのか楽しみで仕方ない。


Reported by 武丸善章